タイプ
その他
プロジェクト
日付
2009/5/18

かたまりとしての議会‐議会事務局長が考える議会改革の必要性‐:中尾修研究員レポート

1.はじめに

2009年3月末現在、54の自治体において議会基本条例が制定され、議会改革の手法として定着してきた感がある。

しかし、改革の基本は、いかに情報を公開し、市民参加を担保するかにかかる。それは条例の素案の検討から始まり、実際の運用まで全てを通じてであることはいうまでもない。

「地方議会の改革プロジェクト」はまず始めに議会基本条例における市民参加について調査検討していくことになる。

全国で初めて議会基本条例を制定し、実践をサポートしてきた者として、このプロジェクトに参加させていただくことを光栄に思う。

そして、この研究が今後の地方議会が市民にとって一層信頼ある機関となりうる提言につなげていきたいと考えている。

2.市民に開かれた議会に

2000年4月に施行された地方分権一括法により、戦後の地方自治の大転換があった。それまでの機関委任事務の廃止により、議会は自治体の事務のほとんどすべてにおいて責任を持ち、議論し、地域経営という視点において運営を進めなければならない状況になった。議会改革・活性化が今、全国各地で議論されている。それではなぜ今、地方議会改革がさけばれているのか。私が3月末まで在籍した栗山町議会の改革を中心に今後の議会のあり方を考えることにしたい。

3.徹底した情報公開と市民参加が必要

端的に申し上げると、議会改革の基本は「徹底した情報の公開・市民参加」につきる。これまで議会という機関は、市民参加など考えてもこなかったし、情報を市民と共有しようという動きも皆無に近かったと思う。

本来の議会の役割をつきつめると、民意を汲み取り、行政に反映するということだ。積極的に議会の機能を発揮し、執行部と互角に渡り合うことが求められている。首長から提出される案に対し、ただ賛否の意志を示しているだけでは機関として市民からの信頼は得られず、それが地方議会不要論の大きな要因であることは否めない。

それでは、なぜ議会は市民との直接対話を避けてきたか。素直にいえば、いやだったに違いない。「不特定多数の市民と直接」と聞いただけで、無理と感じているのが議員の実態であり、それが本音と思われる。「忌憚の無い意見を頂戴したい」と言えば、議員に対する糾弾集会と化す恐れがあるからだ。実際、その可能性は高いと思う。

また、複雑で広範囲な行政の事務を十分熟知していないからである。特に財政の仕組みや行政計画の推移について、全体像を把握してこなかった。支持者が要望する予算の計上があるかどうかを点検している程度が自分たちの限界と思い込んでいたのではないか。自治体経営について、夕張市の破綻を契機に議会の責任もクローズアップされ、2007年の統一地方選挙においては、議会改革が初めて争点の一つになった。
 

4.機関(かたまり)として動き、首長と対峙

現在の経済状況のもと、今までのような手厚い行政政策の展開は不可能になり、選択の時代になっているのが、地方の現状である。そこで議会は多くの議案に対し、住民の参加(参考人、公聴人制度)を得て、見解を求めることが必要となる。住民参加は議員定数の削減が進む中で、議員の見落としや住民の意志との相違を回避するためには、とても有効である。同時にこれによって、議員間の議論が充実したものに変化していく。

そこで当町議会は案件ごとにすべての議員が問題点の洗い出し(住民に対する影響、町財政等)について一丸となり議論することが必要である。その中で市民参加を求め、首長提案の信憑性を確かめ、しかるべき修正を加えることもありうる。最終的な表決は議員個々の意志であることは言うまでもないが、機関(かたまり)として事案の分解に徹底して努めることが二元代表制(機関対立主義)の原点であることを再認識したい。

議会にとって重要なことは対話であるが、その不可欠な条件は、「公開機能」の充実である。論点、争点を明確に結論に至るプロセスとして公開していくことである。

従来は議員個人の姿勢のみに依処してきたが、討議の場を様々な形で設け、機関(かたまり)として動くことは、圧倒的に強い執行権に対し、立ち向かう有効な手段となりうる。言うまでもなく地方自治は二元代表制、機関対立主義である。議会は首長に対し、反対の姿勢をとる議員だけではなく、一つのかたまり(機関)として対峙することが求められるのは当然だ。

5.欠けていた市民との直接討議

栗山町議会基本条例は2006年5月に制定。全国初の条例で各方面から問い合わせやマスコミによる報道がなされ、広く周知され今日に至っている。制定に至る4年半、この条例の中に盛り込んだ内容の約8割は実施済みであったので、議員間の対立はなく、条例作成作業はスムーズに進んだ。

しかし、その前年の2005年3月から開始した議会報告会を条例に規定することに対しては合意形成までに時間を要した。議会(合議体)として一体となり、機関の意思と民意を巡り、住民と直接討議することは今までになかったからだ。ただ、参考人制度を頻繁に活用してきた実績が存在し、陳情や請願については当事者を委員会にお呼びして見解を常に聴いていたのも事実である。

現在もそのような直接対話の機会を担保している議会は少数である。これまで正当な選挙で選出され全権を負託されているという一方的な考えが議員の共通の認識として支配的だったからだと思われる。

6.民意を汲み取ることは議会の得意技

地方自治法では、住民の直接請求権を随所に設けていることを考えれば、選挙により選出されたとは言え、議員には常に有権者たる住民の民意を読み取ることが求められていると断言できる。議会と市民の距離をいかに近づけるか。議会への関心を高め、信頼関係を強め、本来求められている議会の仕事を達成することが課題であった。

そのためには民意を汲み取る回線が存在しなければならない。ところが、議会にはそのような手段はなかった。

栗山町議会は住民と直接対話する議会報告会を2005年3月から5年連続で実施している。栗山町議会が求める「徹底した情報公開と住民参加」の最重要な武器である。開始の翌年に制定した基本条例は、この議会報告会を永続的に実施するためのものであった。

7.おわりに

この研究を通じ、さまざまな視点から地方議会のあり方を見据えていくことになると思う。どのような展開になるか今から楽しみであると同時に、なかなかしぶとく動かない議会というものに対し有効な提言になるのか心配なことも事実だ。

<文責:中尾修研究員(前栗山町議会事務局長)>