タイプ
その他
プロジェクト
日付
2009/10/9

29次地方制度調査会最終答申と政権交代からこれからの地方議会を考える:中尾修研究員

議会基本条例と地方自治法の関係

2006年5月18日栗山町議会が全国初の議会基本条例を制定し、3年半を経過しようとしている。この間、三重県議会をはじめとして2009年9月末で72自治体議会で同様の条例が誕生している。全国的な広がりを見せてきた。今後も100を超える自治体議会が制定に向け準備作業に入っていると聞いている。大きな流れとなり改革をもたらしている。

第29次の地方制度調査会の答申にも「近年それぞれの議会において、議会の活動理念と共に審議の活性化や住民参加を規定した議会基本条例を制定するなど、従来の運用の見直しに向けた動きが見られるところであり、引き続きこのような自立的取り組みが期待される」と記されている。

これまで地方自治法に明記されないものを、自治体議会が憲法による条例制定権を理解し、独自条例を制定したことは皆無であった。それを最高規範とし、地方自治法120条の会議規則の上位に位置づけ、体形的に整え、住民との約束としたものが議会基本条例である。

これまで全くの内向きであったルールを、市民参加を最前提に全てをオープンにすることにより、信頼ある議会を目指したものだ。

2006年5月の時点では、まだ国の関与は相当あり、照会も北海道庁を通じ数回あったことを思い返せば、今回の地方制度調査会の答申は隔世の惑があり、先行した者としては普遍的な制度となったことにこの上ない喜びを感じている。

改めて自治制度は末端から国を動かし勝ち取るものだと実感しているところだ。

議会基本条例の留意点

それでは答申の中でいくつか気になる点を記しておきたい。

(1)議決事件の追加
地方自治法96条2項により憲法に応じ条例で追加することができる。各地方公共団体においては、中長期な地域の課題を議会で議論するため、総会計画やその他の法定計画の議決事件として追加するなどの手法によって、一層議会の審議の活性化が図られることが期待される。

 
言うまでもなく、長期行政計画は自治体経営の根幹である。しかしこれまで議会は何ら影響力ある関与をしてこなかった。

特に総合計画(基本構想・基本計画)に極めて重要な事項と言える。

各地の議会基本条例の中には、議決事件の追加は見られるが、どのように議会が関わっていくかが今後の課題である。

議決事件に追加したからには、議会としての考えや審議の進め方等、十分な対応を考えていく必要があり、事前にその点の整理が不可欠だ。

簡単に議決事件を盛り込んで、賛成・反対だけでは意味がない。

素案から市民参加を求め、議会としての考えを合意形成する。その上で、執行側との協議、どの場面での登場が有効か、それぞれの自治体によって異なると思う。

議会がその力量を問われるが、今は長期行政計画に積極的に関与すべき時なのである。

(2)議会活動の透明性
制度的な面だけではなく、実質的な面から議会の権能を高めていくためには、議会が、住民の意思を十分に反映し、充実した審議を行うことが重要である。

そのためには、議員を選出した住民においても、議会における議論の内容や議員の活動の実態等について、積極的に関心を持つことが期待される。

議会活動については、本会議のみならず、委員会等の活動も含め、住民にわかりやすいような形で情報公開に努めるべきである。この点については、議案に対する議員の賛否等の議論の経過や議案の情報について、インターネット等も活用して公開していくことが求められる。


改めて記述すべきものなのかと思われるほど当然のことであるが、重要な項目、ここが担保されなければ議会は住民の信頼を得られない。

自治体の意思決定は、代表機関レベルに限定して考えると、決定に至る過程における両機関の相互作用(機関対立)と最終的な議会の議決(決済行為)という二つの要素から成り立っているが、決定と言う形式の行為よりも、決定にいたるプロセスの持つ実質の意義を重く考えるべきであって、意思決定に至る経過の議論、その中に市民参加、専門的所見の導入等、持てる情報を全て公開していく。

今回の答申で「当たり前のことが」出来ていないことが証明されたと言える。

(3)議会事務局
地方公共団体の自主的な政策立案の範囲が拡大するとともに、その処理する事務も複雑化・高度化してきていることから、議会の政策形成機能や監視機能を補佐する体制が一層重要となる。政策立案や法制的な検討、調査等に優れた能力を有する事務局職員の育成や、議会図書室における文献・資料の充実など議会の担う機能を補佐・支援するための体制の整備・強化が図られるべきである。

これも従前より言われていることであり、総花的な表現であると受けて止めている。
二現代表制を住民とともに信頼ある制度にしていくには、事務局職員の独立(独自採用)が不可欠である。

現行の制度では、議会事務局職員の執行部からの出向人事により配置されている。

議長に任免権はあるとはいえ、首長人事の一部であることはご承知のとおりである。それが証拠にいつも発令は執行部職員と同時で行われる。

議会事務局職員はどのような心構えが必要かなと、活動の定義はない。少なくとも議員は、機関対立主義である二元代表制の地方議会を理解し、是々非々で対当局と戦うという姿勢を貫く必要がある。個々の議員が首長と個別事案で取引しているような実態にあれば、いくら事務局のあり方を論議しても無駄である。

やはりここは制度を改め、議会事務局職員独自採用の道を拓く必要性を強調しておきたい。

現状認識に疑問あり

現在、議員研修の講師として全国各地に招かれ、今までの経験を中心に地方議会のあり方をお話しさせていただいている。

相当厳しい現状の活動を批判申し上げるが、反応がいま一つ鈍いと言わざるを得ない。

なぜ多くの議員は現状の議会改革のうねりを見て見ぬふりをするのであろうか。もう避けて通れない状況に追い込まれているはずなのに。

政権が変わり、国の制度も全てが洗い直されようとしている。地方とて同様に既存の行政が進めていたものが、市民が求めたものであるか、総点検しなければならない事は、改めて申し上げるまでもない。

先にも記述したが、議会は機関として長期行政計画に関与すべきだ。

町の将来に責任を持つこと。執行部は将来像をつかまえているが公表していないところが多いようである。

たとえば、人口の推移、高齢化率、出生率、それにより統廃合になる保育所、幼稚園、小中高校、公立病院の運営状況と様々な問題がある。

単年度予算のみを議会が実践しているようでは、全貌が見えない。議案の1件1件は、正しくとも長期にわたる計画の位置づけで見据える必要がある。そうでなければ地域経営が成り立たない。

政権交代と地方議会改革

地域主権をとなえた民主党を中心とする新政権が誕生した。

補助金等これまでの国の制度を根本から見直すかまえだ。

その担当大臣である仙谷由人行政刷新相は、2006年5月議会基本条例制定時から栗山町議会改革に強い関心を持っていただいている。

2006年10月には民主党四国4県地方議員研修(徳島市)に私を講師としてお呼びいただいている。

また行政刷新会議の事務局長には、東京財団の加藤秀樹会長が就任した。

これまでいろいろな改革のアドバイスを頂いた前鳥取県知事片山善博氏が委員に決定した。今後の変化を大いに期待し注視していきたい。

地域主権が制度として、人々に根付くにはもう少し時間が必要であろう。

しかし地方が自ら責任ある地域経営をするためには、議会改革は絶対要件であることを改めて申し上げたい。