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名古屋市議会基本条例パブリックヒアリング

March 18, 2010

概要

2010年3月6日、名古屋市公館で開催された名古屋市議会基本条例パブリックヒアリングにコーディネーターとして参加しました。議会改革の一環として、議会基本条例の制定を目指している名古屋市会では、議会基本条例制定研究会で行われた議論をもとに、座長(吉田隆一議長)が2010年2月16日に座長案を提示しました。その案を3つの分科会(1.総則、市民と議会 2.議会と市長、3.議会の運営、議員定数等)で検討を重ねてきました。今回のパブリックヒアリングの目的は、議会基本条例制定の参考とするため、直接市民から意見を伺うことです。

13時30分開始、13時受付開始でしたが、筆者が会場に到着した12時過ぎには参加希望の市民数名が小雨降る中、待っていました。また、テレビ局のカメラや報道記者が準備に追われていて、関心の高さがうかがえました。

伊神邦彦副議長の司会で開会し、議長あいさつの語、出席者として立命館大学法学部教授駒林良則氏に続いて紹介されました。ひとこと挨拶を求められましたので、東京財団における地方議会改革の問題意識、すなわちカリスマ性の高い、水戸黄門的な首長の登場を市民が待ちわび、その行政運営を無批判に賛同することが自治体運営にとって必ずしも健全ではなく、その点において議会の役割は重要であることを説明しました。さらに、議会基本条例「東京財団モデル」の基本的な考えかたである 1.市民と議会の関係強化、2. 意思決定機関を紹介しました。

その後、議会基本条例制定研究会での検討経過の説明を、こんばのぶお議員、横井利明議員、服部将也議員からそれぞれ会長を務める分科会ごとに行われました。ここで数分間の休憩をとり、参加市民からの意見・提案を行いました。

発言を希望する市民は、受付で配布された「発言シート」に基づいて分科会ごとに発言したい要旨を記入していただく方式を取りました。事務局が発言シート回収し、筆者が回収順に記入者の名前を呼び、発言していただきました。述べ数で第一分科会については、15件、第二分科会は5件、そして第三分科会は18件の意見・提案が寄せられました。会全体の時間を勘案すると、全員に発言を求めると一人約1分となり、その旨参加者に説明すると不満を表現するブーイングに近い反応がありました。しかし、できるだけ多くの市民の意見を聴く目的の本会の趣旨を説明し進行いたしました。

残念ながら、ひとり1分の時間制限は守られることはありませんでした。それよりも実際の市民から発言を始めると、多くの関心は議会基本条例の理念や条文、分科会での個別テーマの議論よりも、これまでの議会活動への不満が爆発した発言が少なくありませんでした。ただ、議員定数削減については、積極論だけでなく、その弊害を危惧する説得力ある消極論も複数の市民から示されました。また、議会報告会の回数や場所については、名古屋市全体の実情や市民の日常生活を反映するべく実施してほしいとの発言もありました。予定していた時間を40分ほど超過しましたが、発言を希望する市民全員が発言の機会を得て、提出した「発言シート」以上の内容に踏み込んだ意見・提案がありました。

市民の意見を聴くことが目的である本会では、市会議員は明確な事実誤認がない限りは個別の意見に対しコメントを差し控えました。最後に議長が総括コメントとして発言しました。

雑感

コーディネーターとして参加し、驚いたことは、発言中の市民に対しヤジやコメントをする市民が複数見られたことです。意見を異にする市民であっても(異見であればあるほど)発言を終えるまでは、静かにその主張の理解を試みる姿勢が必要と考えます。自らの意見の正しさを主張する権利は、他の意見を尊重する義務も同時に発生させます。厳しい財政事情の中、自治体を健全に運営するには、多様な意見に謙虚に耳を傾ける姿勢がなによりも求められます。

また、二元代表制の仕組みについて理解していない市民も少なくなく、配布されていた資料で初めて自治制度を知った市民もいました。議会だけでなく、行政も含め自治を担っている機関や関係者の不断の努力が今後求められます。名古屋市会は、これまでの活動の反省に立って、実効性の高い情報公開や市民参加の仕組みが求められます。また、市長には自治運営の全体像や将来像の中で、市長と議会、議会と市民の関係を提示し、住民自治が高まるように理論的な議論を展開しなければなりません。最後に、最も重要なことは、市民が成熟した議論を楽しむ環境を作り上げることです。

<文責:赤川貴大>

    • 元東京財団研究員・政策プロデューサー
    • 赤川 貴大
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