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レポート「地方自治体での議会改革の課題と展望」

July 1, 2010

堺市議会議員
池田 克史

1.本質的な問題

(1)時代認識
世の中は、進んでいる。名古屋市の河村市長と議会との関係は、改革の動きの一端である。

東京財団は、地方自治体における立法権限の改革が不可欠であるとの認識のもと、地方議会改革に取り組んできた。ルールや制度を作る権限である立法権限は、地方自治体では法律によって国を超えることができず、国が一律に物事を決めている。これまでの地方自治改革の多くは、法の執行権限、徴税、財政配分権限、受け皿となる自治体の改編を主に、国への権限や財源の要求や受け皿論が中心で、国と地方自治体の関係の本質は大きく変わらなかったが、「地方のことは地方で決める」地方自治の本旨を実現するため、国と地方の権力関係の構造的転換が必要である。

(2)自治のしくみ
国と地方では、政治システムが違う。主権者である国民であっても、特定の国会議員を辞めさせることができないが、地方議会・議員に対してはリコール・失職させる権利が制度上認められている。民主主義の仕組みそのものに違いがある。

(3)市民の評価
市民の地方議会に対する評価は低く、ある全国的な調査によると、およそ6割が満足していない。

また、地方議会・議員のイメージは、一体何をしているのかよく分からなく、冠婚葬祭のときしか姿を見せないなど、その多くは良い印象を持っていない。

2.処方箋

(1)議会基本条例
加速する地方分権の流れを受け、地方議会改革の具体的な取り組みとして、議会基本条例が注目を集め、2006年に全国初の議会基本条例が北海道栗山町で誕生し、現在は全国で100を超える地方議会で制定されている。

議会基本条例は、市民参加と情報公開をもとに、市民とのパイプを太くし、関係を深めることができる。

しかし、議会基本条例を制定したところで問題点もある。旧態依然の首長への要望型の自治制度を想定した議会基本条例も少なくなく、実際には使用しない権限を首長に見せつけ「レバレッジ」効果を期待し、首長・行政の“おこぼれ(個別議員の利害)”を受け取ることに満足する追認期間を維持する最悪のケースが見られる。

議会基本条例の必須条文はサンプルのとおりであるが、いずれによせ「市民参加」と「情報公開」を実施するルールが明確にされていなければならなく、市民と議会の関係が核となる必須用件は除外してはならない。

・議会報告会―何を審議してどう議決したのか
・陳情・請願者の意見陳述―市民の権利である
・議員間の自由討議

議会基本条例を分析すると、前記3つの必須要件全てを満たしているところは少ない。

(2)“チーム議会”
議会基本条例を制定に向け検討中のところは、地方自治体で170を超えている。この背景には、地方議会の存在自体の危機感があり、危機に対し“チーム議会(議員+議会事務局)”の共同作業に取り組める体制が成否の鍵となっている。なお、会津若松市は成功した例の一つである。

また、議長のリーダーシップは議会改革に不可欠である。しかし、約8割の地方自治体では1~2年で議長ポストを順送りする慣例がある。法的に解釈しても、1期4年で議長を選出することが望まれる。加えて、議会の召集権は首長ではなく、議長に付与することも検討すべきである。また、議会事務局職員を都道府県レベルで独自採用し、議会の事務局機能が十分に発揮する体制を整えるべきである。

(3)“議会内閣制”
地方議員は抵抗勢力としてではなく、首長と同様に住民自治運営の責務を担って欲しいという考えが、橋下大阪府知事など首長の心理としてある。政府で検討を行っているが、分権改革に耐えられる地方自治体の体力づくりが必要である。

3.議員活動調査

政令指定都市と小規模な地方自治体とのトレンドの違いはなかった。

議会基本条例を適切に運用すると議会活動が活発化する。

何をもって議員としての活動とするのか、できるだけ明確な定義が必要である。

(1)議員報酬・政務調査費・議員定数
議論のたたき台とするためにも、全議員の活動を公開すること。

議会で独自案を出し、市民参加で決めること。

(2)議会の役割・議員の仕事
そもそも市民は何を議員に求めているのか、それは陳情を業務とすることなのか、政策立案を業務とすることなのか、あるいはその両方を業務とすることなのか、議会でしっかり議論する必要がある。

4.制度改革を通じた意識改革

議員は、脱“個人事業主”として議会組織の一員で自治体経営者である意識を持つ。同時に、市民もお任せ自治から脱却し、適正な基準で議会・議員を評価する。加えて、市民は首長超人論を持たず、首長と議会との健全な緊張関係を双方に求めることが必要である。

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