タイプ
その他
プロジェクト
日付
2010/12/16

地方議会は「地域経営者」としての責任認識を(中尾修研究員)

宮城全県で議会改革が推進!―首長、議員、行政職員参加の研修会


東京財団研究員
中尾 修



1. 首長、議員、行政職員向け研修会

11月19日、2市7町村の首長、議員、管理職を含む行政職員約250名が集まる研修会に参加し、「議会改革とこれからの地方自治 ―議会基本条例から考える」と題する講演を行った。議員向けの研修会で話す機会は多いが、首長、行政職員向けの研修は数少なく、こうした地域全体で議会改革に取り組む姿勢を高く評価したい。

今、宮城県では議会改革が大きなうねりとして進んでいる。特に、市町村合併に取り組んだ北部・中部では、議会基本条例の制定に向けた協議に入っている自治体が多い。改革派知事として名をはせた浅野史郎氏の首長と議会の対立の歴史もあって、早くから基礎自治体の改革に関心があった。

雑誌『日経グローカル』が4月に調査した県別市議会改革度ランキングでも、宮城県は4位に位置している。とはいっても、仙南地域は県内で少々出遅れているようだ。合併を経験せず、行政も議会も、さらには主権者である市民もその他の地域の実情、今後起こりうる変化を共有していないように思われた。

2. 議会不要論からの脱却のために

講演の冒頭、各地で鋭く対立する首長と議会の関係、その構図について名古屋市、阿久根市、大阪府の例を挙げ、地方議会が「今までは何もしてこなかった」「首長提案に対しYES or Noという意思表示だけをしてきた」「活動の実態が見えない(活動がない?)」ことにより、議会不要論はますます強くなっている、市民に信頼される機関に変らなければならないことを訴えた。

二元代表制と議院内閣制の違いを認識し、常にリコールなどの可能性がある地方議会にとって、議員は機関(議会全体)として議会の活動を日ごろから説明すべきである。議会には「議決責任」がある。議会は議決責任を深く認識し、議案などを議決(可決、否決、修正)した時には、市民に対し説明する責任を有しているという考えに立つべきなのだ。

地方分権改革が進めば、自治体の自己決定や自己責任がこれまで以上に問われることになる。それに伴い地方議会の責任は増す。これまでの議会運営では務まらない時代がすぐそこまで来ている。地方議会は、地域経営者の一翼としてその責任を負うということをしっかりと認識しなければならない。


3. 議会と住民の情報共有こそが第一歩

では、具体的にはどのような手法で進めるか。一つには10年後を見据え、行政・議会・住民が人口動態、財政状況などの情報を共有することである。そうした情報共有によって議員も的外れな質問をしなくなり、市民要望も変化してくる。

今後の議会の活動はこれまでの個人技ではなく、合議体としての特徴を生かし、全体(全議員)で議案審査に取り組む姿勢が必要である。表決においては、基本的には個別の考えに基づく行動になるが、住民に影響がある議案は全員で問題点を洗い出し、これを共有しておき、その上で判断する。党派や会派での結論を優先するこれまでの運営方法を抜本的に改める必要性がある。そして、議会基本条例の制定に当たっては、当初から市民参加を求めること、議会報告会(意見交換会)の重要性など、東京財団が提唱する必須3要件を兼ね備えていなければならない。

議会改革も自治体改革のいずれにしても市民参加がキーワードになる。議員は住民の代理者である。しかし、「全てを任されている」という認識から脱皮する時代に来ている。表決に当たって地域経営者として信託を受けた代表として、説明責任を果たす。そのための市民との恒常的な関わり合い、合議体としての議会の役割について、議員はもう一度自らを見つめ直さなければならない。

4. 議会改革における地方紙の役割

宮城県で自治体議会改革が進んでいる要因には、『河北新報』の存在がある。同紙は昨年より「考えよう地方議会」と題する特集を組み、今こそ議会が変わらなければ自治は進化しないと1年間以上にわたり、県内の各自治体の調査からそれぞれの取り組みを報道した。こうしたねばり強い報道によって触発され、あるいは恐れをなくし、全県的に改革の火がついている。地方自治のあり方については、地方紙の役割が大きいことが『河北新報』の取り組みからもあらわになったと言える。今後とも、多くの地方紙がそれぞれの地域の議会改革を注視してほしい。




<参考資料>

政策提言「市民参加と情報公開の仕組みをつくれ ―地方議会改革のための議会基本条例『東京財団モデル』」はこちら
 
政策提言「地方議会改革は誰のためか~市民の役割と議会の責任~」はこちら