タイプ
レポート
プロジェクト
日付
2012/8/24

地方自治法を使いこなせ

7月28、29日の両日、全国から約300名以上の市民と議員が法政大学市ヶ谷キャンパスに集い、「市民と議会の条例づくり交流会議2012」(主催:市民と議員の条例づくり交流会議、自治体議会改革フォーラム)が開催された。2日目の全体会議では、前総務大臣の片山善博 慶應義塾大学教授が地方議会の可能性と住民自治について基調報告を行い、続いて第30次地方制度調査会臨時委員を務める中尾修 東京財団研究員が登壇して、概要次のとおりコメントした。

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議会の事務局長を経験した者として、この法令条項は使える、ぜひ使っていただきたいという点にポイントを絞ってお話したい。

専門的知見の積極活用を

第28次地方制度調査会の答申(平成18年地方自治法改正)において、議会制度に関する重要な改正があった。そこには、自治体の責任領域の拡大に伴い、住民自治に根ざした改正が必要との認識により、可能な限り地域の実情に応じて決められるようにしていくことが重要だという基本姿勢が見られた。議会の自主性、自立性の拡大という観点から、その組織および運営についても、できるだけ議会に委ねる方向で見直すとの大変革であった。

その条項の中で、使い勝手がよい、使うべきだと思われるものの一つに、地方自治法第100条2の「専門的知見の活用」に関する規定がある。これまでは公聴会、参考人制度はあったものの、意見を聴取することができるにとどまっていた。それが一定の調査研究を踏まえた意見の報告を求めることができようになった。議会における議案の審査、事務の調査に専門的知見の活用ができるよう、法律で明確に位置づけられたことは大きい。しかし、実例を調べてみると、平成22~23年で市議会20件、町村議会5件といったように、知見の活用が極めて少ないことがわかった。

北海道の栗山町では、議会基本条例、総合計画、事業会計の審査などで、専門的知見が数多く使われた実績がある。専門的知見の活用は、議員あるいは議会の活動のみでなく、人員の限られた議会事務局の体制を補完する上でも有効な手段であり、ぜひこの点に留意して積極的な活用を図っていただきたい。どれくらい予算がかかるのかといった心配もあろうかと思うが、地元大学との連携などで協力者を得られれば、それほどコストはかからないはずだ。

第28次地方制度調査会答申では、常任委員会の議事案提出権を認める規定も盛り込まれた。しかるに、委員会の議案提出が少ないのはなぜか。議案の修正はするものの、議案を提出しない。これは委員会での力関係によって問題を起こしたくないという考えがあると思われるが、この考えを180度転換していただきたい。委員会は主として議案を審議し、提案も行わなければならない。

工夫凝らした報告会の開催へ

議会基本条例が初めて認知されたのは、第29次地方制度調査会の答申である。2006年5月に栗山町が全国で初めて議会基本条例を制定し、それから3年を経て地方自治法と矛盾しないことが確認された。

   ◎第29次地方制度調査会答申より抜粋
「近年、それぞれの議会において、議会の活動理念とともに、審議の活性化や住民参加等を規定した議会基本条例を制定するなど、従来の運用の見直しに向けた動きがみられるところであり、引き続きこのような自主的な取組が進められることが期待される」

2006年6月に事務局長の私宛に総務省より電話が入った。「それはどのような内容の条例を制定したのですか」という丁寧な問い合わせであったが、人口1万4,000人規模の自治体職員にとっては相当の緊張だった。法令の枠を超えると映ったのかもしれない。それから今日、260から280の自治体で議会基本条例が制定されている。

東京財団では、議会基本条例に対して独自のモデルを作成し、必修3要件を示している。その一つが、市民との議会報告会、意見交換会を必ず行うということ。さらに、陳情、請願の意見陳述、議員間の討議を行うといった点を明記した。この要件を満たす条例が全国で増えている。

しかし、条例は制定したものの、議会報告会の実施といった点で多くの自治体が苦戦している。どの年齢層をターゲットにするのか、そして、自治体が抱えるタイムリーな問題、特に人口減少に伴う地域の問題に特化した意見交換会が、通常の報告会のほかに必要だ。たとえば、子育て中のお母さんや就職活動中の若者、あるいは介護が必要なご家庭や難病を抱える人など、ターゲットを絞ればテーマはいくらでもある。

そのアイデアの一つとして、本日、中学3年生の公民の教科書のコピーをお配りした。多くのページを割いて、地方自治についてかなり詳しく書かれてある。そして、この教科書の発行元である東京書籍のウェブサイトにある指導計画作成資料の「学習目標」にはこうある。

・地方議会の制定する条例と、二元代表制の仕組みを中心に、地方公共団体の政治について理解する。
・直接請求権について、住民の権利の観点から考える。

義務教育の学習として、彼らが地方自治のあり方について学ぶのは9月末頃なので、一度、議員の皆さんと地方自治全般について話し合ってみるのはいかがだろうか。決算議会が終わった段階で、ぜひ中学3年生と地方自治、とりわけ地方議会について懇談会を持っていただきたい。果たしてどうなるか、非常に興味深い。