タイプ
レポート
プロジェクト
日付
2012/9/24

堺市議会 議員研修会

去る8月22日、大阪・堺市議会にて議員研修会が開催され、講師に招かれた中尾修研究員は、「情報公開」と「市民参加」をキーワードに、議会基本条例について概要以下のとおり講演しました。

「全国に広がる地方議会改革 ―議会基本条例から考える―」


東京財団研究員
第30次地方制度調査会臨時委員
中尾 修


【健全な議会運営とは?】

首長は選挙で選ばれる。議員も選挙で選ばれる。この二つに働く意思には、最初から微妙なズレが生じている。このズレこそが二元代表制の制度設計の優れたところである。片方は独人制の首長、もう一方は合議体の議員として、チェック・アンド・バランスという、いずれかに大きな力を与えないようになっている。ところが、議会はこれまで自らの権限を行使してこなかった。それは遠慮からなのか、あるいは名誉から来るものなのか判断しかねる。

2011年1月30日付『北海道新聞』に掲載された前総務大臣で岩手県知事を務めた増田寛也さんと私の対論記事の一部をここで紹介したい。

◎増田寛也 野村総合研究所顧問
「二元代表制は首長と議会の意見が異なることが前提なので、両者が対立することは健全です。でも、話し合いを尽くすこと、住民生活を人質にとらないことがルールです。対立が解けない場合、住民は4年の任期が終わる時点でどちらの言い分が正しいか判断し、役者を交代させればいい」

◎中尾修 東京財団研究員
「議会は、首長の取り組みをチェックし制御することが仕事。二元代表制が健全に機能すれば、首長と議会の対立は起きるのです。両者の意見が対立した場合は、どうやって折り合いをつけるか話し合って解決策を探ることが民主主義の基本です」

議会は議案の修正権、提案権、さらには調査権など議会の権限をきっちりと行使しているのか。首長提案が100%納得のゆくものでない時、修正案を提出したり、またはきっちりと否決しているのか。議員提案を出しているのか。これはなにも議員定数とか議員報酬の削減に限った話ではない。残念ながら、議会はこれまでそういった健全な運営をしてこなかった。議会が制度としてどういった権限を持っているのかをあらためて確認していただきたい。そのためにも議会基本条例に正面から向き合っていただきたい。

堺市のような政令指定都市であっても、議会は議会報告会、意見交換会といった市民との双方向の回路を普段から作っておく必要がある。たとえば、市長が議員報酬の削減、定数の半減を提案してきたとする。それを議会が否決すれば、市民から「なぜだ」という声が必ず挙がる。そうした時に、市民に話を聞いてもらおうと思っても、常日頃から双方向の回路を持っていなければなかなか難しい。われわれは市民から任されているということだけでは済まされなくなる。対話を通じてボールを一旦市民に戻してキャッチボールする。そして、議案に対して是々非々で臨む。これが議会本来の姿であって、議会改革の基本である。

【地方分権の理念を前面に】

地方自治法に基づく会議規則には、時代の要請たる「情報公開」「市民参加」「評価」が盛り込まれてない。自らが情報公開し、市民参加に取り組み、そして行政側は行政評価、議会側は議会評価を受ける。それが議会基本条例のベースとなる。会議規則だけでは時代を乗り切れないと考えたほうがよい。地方分権の理念を前面に出した条例づくりを目指すべきだろう。

2011年5月30日付『神奈川新聞』の記事をご覧いただきたい。

◎権威を脱ぎ捨てて
「(議会基本条例は)今でこそ議会改革の『標準装備』だが、地方制度調査会の答申に明記され、国が正式に認めるまでに、実に3年を要している。地方自治法に位置づけがないことが、総務省には『法の枠を超える』と映った。『国と異なる法解釈があっていい』という地方分権の理念を貫いたが、アリが巨象と対峙する厳しさを味わった」

それが本当に市民にとって有効かつ使い勝手のよいものかどうかを念頭に議会基本条例づくりを行っていただきたい。東京財団では、(1)議会報告会、(2)請願・陳情者の意見陳述、(3)議員間の自由討議といった3つの必須要件を挙げている。これらは単に努力目標ではなく、「やる」という言い切りの言葉で明記していただきたい。「議会報告会を年一回実施する」という具体的なところまで踏み込んでいただきたい。

続いて、2011年3月16日の『信濃毎日新聞』に掲載された記事をご参照いただきたい。

◎議会基本条例 候補も問われる
「これまでの地方議員はどちらかといえば個人技に頼ってきた。地域や特定の組織の利害を代弁していればよかった時もあった。ドンのように影響力のある議員が執行部とやり合い、決断させる時代もあった。しかし、限られた予算の中で選択と集中を厳格にしなければ自治体が成り立たない。政策決定もよく論議しなければ住民は納得しない。議員一人一人のディベート(討議)の力を高める必要があり、そうした意味でこれからの議会は集団技の議会となる。それは首長与党、首長野党といった会派的な意味ではない。一人一人がどう考えるのかを語り、合意形成するという意味での集団技だ」

これまでは議会活動ではなく、議員活動だった。主権者、出身母体、支持団体の人たちの思いを執行側に伝え、それを制度化して実施する。こうした活動に特化してきたのが日本の地方議員である。

今後、議会は合議体として、市全体の経営者として責任を負う必要がある。スポーツで言うならば、個人競技のゴルフから団体競技のサッカーへとシフトしなければならない。議会は、なでしこジャパンのように議論というパスを回しながらゴールを導き出す。集団技こそが議会の本質である。決して議員活動を無くせと言っているのではない。それは議会という仕組みの中で当然のことながら残る。議会の真骨頂は、議論して結論を出すというところにある。こうした固まりとしての集団技に変えていくのが議会基本条例である。

今年6月の定例会時点で、約300の自治体が議会基本条例を制定した。現在、自治体は1,700だから、その数はおおよそ2割を占める。議会基本条例が議会のスタンダードとなった今、第2ステージに入った。市民を交えて、条例を練り上げていく必要がある。議員にとって使い勝手のよい条例ではなく、市民にとってわかりやすい条例でなければならない。市民が納得するかどうかという点に、もう少し敏感になっていただきたい。そのためにも議会の動きを市民に知ってもらわないといけない。条例を策定する段階から市民に関心を持っていただく手段を講じていただきたい。たとえば、市民委員と話し合って条例をつくっているという過程の段階をマスコミに報道してもらう。条例が出来上がったら議長が記者会見して広く知らせる。市民の間に広がる議会基本条例であってほしい。

そのためにも、議員が一堂に会して合議を得るというプロセスが重要だ。これまでのようにそれぞれが会派に持ち持ち帰って決めるやり方では、伝言ゲームのように最後は正しく伝わらないことが多い。情報の伝達ミスを無くすためにも、短時間で決着していく方法をお勧めする。そうしたプロセスを経て出来上がった議会基本条例というのは、議員の立ち位置をはっきりさせる。議会は何を目指し、何をするのかという改革の方向性が明確になる。

【中学生と議員の対話を】

本日、平成24年度発行の教科書『中学社会 公民的分野』(日本文教出版)のコピーをお配りした。この教科書に限らず、すべての公民の教科書で、地方自治に関する記述が大幅に増えた。「地方分権」がしっかり明記され、「住民参加」「住民の権限」という言葉の意味が詳細に解説されている。地方自治について義務教育できっちりと教えることになった。中学三年生はこれを9月末頃に授業で習う。

そこで是非、議会は中学三年生と地方自治についてディスカッションする機会を設けていただきたい。彼らは素直に地方自治について勉強する。議員のリコールや議会の解散を求める直接請求権についてもしっかり学ぶ。地方の政治に自分たちの意見を反映させる方法を知る。彼らとのディスカッションが有意義なものになることは間違いない。地方議会の今後のあり方を考える上で、非常に興味深いものとなるだろう。