タイプ
その他
プロジェクト
日付
2012/12/3

議会はどうあるべきか ― 進化にむけた改革課題を考える


二元代表制の一翼を担う議会には、合議制の機関として執行側の政策を十分な議論を交わしながらチェックし、最終決定するという大きな使命があります。そうした議会本来のあり方を見つめ直すべく、全国で議会や自治体はもちろん、学会、NPO等をはじめとするさまざまな団体・組織が議会改革に向けた取り組みを積極的に行っています。

去る10月13、14日には北海道・芽室町で「2012年北海道自治体学会フォーラム」、また同月27日には九州・福岡市で「市民と議員の条例づくり交流会議 in 九州」が開催されました。両イベントのパネル討論に登壇した中尾修研究員(第30次地方制度調査会臨時委員)は、議会基本条例を中心とする議会改革と今後の課題について、栗山町議会事務局長としての経験とこれまでの研究の成果を踏まえつつ、概要以下のとおりコメントしました。 (文責:編集部)


1、これまでの改革を評価する


― 議会改革は現在、どういった状況にあるのか。

2005年3月、栗山町議会が宮城県の本吉町議会(現気仙沼市)に次いで全国で2例目、北海道内で初めて議会報告会を行った。そして現在、報告会・意見交換会を実施した議会は全国で450に上る。また、栗山町議会が全国で初めて議会基本条例を制定した06年5月から6年半経った今日、約300の自治体が基本条例を制定している。こうした数字からも、議会では相当大きな変化が起こっていると言える。

05年頃までは、となり町がどのような議会運営を行っているのかなど、住民も含めて誰も興味もなければ関心もなかった。それが報告会を開催することで、他の議会がどのように運営しているかを、議員、事務局はもちろん住民までもが関心し比較するようになった。

当時は議会が機関として住民の前に登場し直接話し合うなど誰も思ってもいなかった。住民の代表としての議会というのは、議員がすべてを決定するという考えがほとんどだった。それが改革によって自治の主役は住民だということに議員も行政側も、そして住民自身も気づき、「自治」の進化がはじまった。


― 今後、議会が大きく変わるための要件は?

問題の一つは、行政側の職員が地方自治の本来の仕組みである二元代表制そのものをきっちりと理解しているのかということだ。議会と首長は、ともに住民の信託を受けて活動し、議会は多数人による合議制の機関、首長は独任制の機関として、それぞれの特性を活かし、住民の意思を的確に反映させるために競い合い、協力し合いながら最良の意思決定を導く。それを理解したうえで、行政として仕事のやり方をもう少し健全な方向で競い合う必要があるのではないか。

地方分権がいくらすすんだからと言っても、首長は予算の関係もあって、国の政策に大きく左右された提案をせざるを得ない。行政側は政策を自ら企画立案する。そうすると、議会は意思決定機関として、そうした提案を住民の視点に立って完成度が高いものかきっちりとチェックして足りなければ修正し、問題のあるものは毅然と否決する。これができるかどうかが、議会運営の活性化に向けた勝負の分かれ目となる。

さらなる問題として、日本人は議会の第一の使命である議論が苦手だ。欧米人のように議論を通して妥協点を探り、物事を決めるということがなかなかできない。これはわれわれ日本人が乗り越えなければならない試練であろう。


2、議会と住民との関係を考える


― 議会報告会や意見交換会をどのように工夫すれば、より多くの住民に関心を持ってもらえるのか。

全国で参加者が伸び悩むなど、議会報告会が難しいところに差し掛かっている。これを打破するには、テーマ、年代を絞って開催することだろう。たとえば、子育て中のお母さんと話し合う。就職活動中の人や介護で困っている人と意見交換する。そうした方法をお勧めしたい。何か問題が生じて大きく議案を変えたといったことなら別だが、いつも賛成多数で可決しているわけだから、それを説明したいから集まってくださいといっても無理だ。同じ芝居を2度見たら、3度目は行かないのと同じだ。

もう一つは、議会報告会後の処理である。ただ報告会をやりっぱなしではまずい。議案と同じく、本会議で「報告第○号、議会報告会に関する報告」として公式に上げていただきたい。それは議案と同じだから永久保存され、歴史に残る。議会は議会報告会を自分たちの最大の武器として、議場において執行側に説明することが重要だ。


― 議会への参加と行政への参加の違いを住民は理解しているのか。

いろいろな議会で報告会や意見交換会が行われているものの、住民は首長が行う行政懇談会と議会が実施する報告会の違いをきっちり区別できていないようだ。これは住民の意見のほとんどが要求、要望といった陳情型になっているからだ。栗山町の場合、議会報告会を3年間続け、ようやくこれは議会の問題、これは行政の問題といったように住民の中でしっかり棲み分けができるようになった。とにかく、まずは継続が大事だ。


― 議会改革が次のステージに向かう中で、その成果をどのように住民に還元すればよいのか。

議会改革というのは議会が民意をしっかりと拾う仕組みをつくることだから、やはり住民の意識改革を議会が担うということだろう。

栗山町では、住民による「くりやまの自治基本条例を考える会」が発足した。住民代表が自治基本条例の骨子をつくり、議会に会議を申し入れて議員に問いかける。議会基本条例をベースに活動していた議会が、今度はその条例を根拠に住民側から見解を求められる。こうした流れは自治をさらに深めるための手段となる。

議会改革を進めることで自治の力が高まる。全国の議会は規模が違えども、おそらくこれが共通して掲げなければならない目標であろう。議会改革によって議会と住民の結びつきが深まることで、自治とか民主主義といった本来の力が発揮されるのではないか。


3、さらなる改革をすすめるために


― 議会改革の中でも緊急を要する課題として挙げられている、議会事務局の改革をどのようにすすめればよいのか。また事務局はどうあるべきか。

東京財団では、事務局職員を独自に採用すべきだという提言を行っている。議長のリーダーシップと同様に事務局の機能が十分発揮されることで、議会本来の役割が組織的に遂行でき実効性が高まる。これはコストの面からもハードルがかなり高いことはわかっている。首都圏では、事務局長をはじめ一般職員は勤務地以外の自治体に住んでいるケースが多い。他の市区町村から毎日電車や車で通勤している。そういったところは、他の地域への職員派遣が可能ではないか。

事務局職員というのは議長に人事権があるとはいえ、実際は首長のローテーション人事の中に組み込まれている。しかし、一旦事務局に配置になったからには議会に軸足を置いて、首長とは是々非々でやるという覚悟を決めなければならない。事務局は住民自治の視点で執行を客観的に見ることができる。住民の目線でもって行政マンとして仕事ができる。これを宝くじに当たったくらいに喜んでもよいのではないか。


― 議会基本条例を中心に議会改革がすすめられてきたが、他にどのような条件で改革は進むのか。

住民はまだまだ議会を信頼しているとは言えない。これを払拭するには相当な時間がかかる。もうひと踏ん張りやふた踏ん張りでは足りないが、改革をさらに前にすすめるには議会が住民の信頼を勝ち得なければならない。そのためにも、議長の純粋なリーダーシップによる議会運営が必要ではないか。

議会は4年のサイクルで、相当なエネルギーを使って問題の解決に向けて一点集中する。しかし、それが終わった途端に熱意が失われてしまい、検証作業が抜け落ちてしまう。議会は行政よりも継続性が不足していて、住民にこの温度差を感じ取られやすい。

今日のように財政状況が厳しい中では、わが自治体の行政サービスはこの先どこまで持ちこたえられるかという検証作業を継続して行っていただきたい。これは本来、議会の仕事であって、今後はその方向で改革がすすむであろう。


― さらなる議会改革に向けた方策は?

中学校三年生が使う公民の教科書に、首長と地方議会の役割や、直接請求権、住民投票といった住民の権利、さらには住民参加など、地方自治の全般についてかなりのボリュームを割いて詳しく書かれている。彼らがその教科書を使ってその範囲の授業を受けるのがだいたい今頃の9月から10月である。たとえば、彼らと議員が地方自治について議論する場を設けてみてはいかがだろう。きっと新たな気づきが得られるに違いない。