タイプ
政策提言・報告書
プロジェクト
日付
2008/7/4

政策提言 「分権時代の地方議会改革 ―改革派首長からの提言―」

エグゼクティブ・サマリー

地方自治法に定められている現在の日本の自治体の運営方法は二元代表制です。法的には首長と議会それぞれにほぼ対等ともいえる権限が付与されています。執行機関と議会が互いに議案を出し合い、両案を比較検討しながらよりよい制度や予算案を作りあげることが想定されています。

日本の多くの自治体では、首長と議会が一体化し緊張感がない状況にあります。首長は式典出席に追われ、議会は役所組織が立案した政策を形式的に議決するのみです。政策議論は住民から見えるところで行われず、住民の立場に立った行政サービスが十分に提供されていません。選挙においても首長と議員が支持基盤を共有することで、「お仲間」から談合的に選ばれる事実上の無風選挙となっているケースが多く見られます。

近年、この閉塞感を打破すべくいわゆる「改革派首長」がいくつかの自治体に登場しました。登場の仕方は様々ですが、住民との直接的な関係を重視し、積極的に行政改革を行いました。市役所に総合窓口の導入や小児救急医療体制の整備、保育園の民営化など住民が実感できる改革が実施されました。

それらの改革は二元代表制が想定している首長と議会のほぼ対等な関係の産物ではなく、首長が議会を懐柔して、ある意味大統領的な権限を発揮して改革を進めた結果によるものです。「地方自治体のガバナンス研究」で調査したところ、「改革派の首長」は、二元代表制の長所を上手く活かした市政運営をしているのは稀で、議会や議員の行動や思考のパターンを熟知した上で議会を掌握し、既存の役所組織に政治任用等の活用で刺激を与え、圧倒的な政治力をもって推し進めたことがわかりました。

東京財団「地方自治体のガバナンス研究」では約1年にわたる研究調査を踏まえ、下記の政策提言を作成いたしました。

提言1:そもそも「議員とは何か?」とういことを議員も住民もゼロから考えよう。

首長と一体化した自治体の議会は、住民と直接向き合わず執行機関の一挙一動に反応しているのが現状です。議会の多くは、執行権に不当に介入し存在意義を誇示することに注力するあまり、住民の意思を吸い上げて全体の利益を実現しようという姿勢にかけています。これでは二元代表制の一翼を担う機能を十分に果たしていることにはなりません。

住民が自治の意識を高め、議会とは何か、議員とは何かという基本的なこと問い直すことが重要です。具体的には、自治体の財政状況や議会での拘束時間、議員としての業績などを総合的に勘案して、適切な議員報酬を意見することも一案です。

これから超高齢化社会を迎え、財政がますます厳しくなる地方自治体において、議員の総体としての議会は何のための機関であるのかを、住民も議員もゼロから考えてみるべきです。

議員提案もせず個別利益の実現に終始する議会と改革志向の首長の登場を切望する受け身の住民の意識は、地方自治の発展が大きく遅れるだけでなく、独裁政治にもつながりかねない危険性をはらんでいます。

提言2:まずは、議会の権能を最大限活用しよう。

議会は住民意識の向上を待つという受け身の姿勢ではいけません。まずは地方自治法によって付与されている議会の権能を積極的に最大限活用することから始めましょう。個別の議員としての活動ではなく、議会として住民対話の機会を増やし、議員間での議論を実質的なものへと変えていかなければなりません。

例えば、(1)予算措置が伴う具体的で実現可能な条例案を議員提案しよう
    (2)「款・項・目・節」という行政執行上の分類ではなく、住民に理解しやすい事業単位での予算審議を行おう
    (3)公聴会を開催し、参考人の意見を聴取しよう
    (4)議会もパブリックコメントを募り、議会での議論に反映させよう
    (5)議会終了後の住民への説明会を頻繁に開催しよう

このためには議会事務局の知的インフラ整備が必要になると考えられます。議会事務局の専任職員を複数の自治体で共同採用することや、事務局長に外部の人材を登用すること、庶務だけでなく企画法令担当職を設置することは議会の決断で実施可能です。

さらに、個人・会派に支給されている政務調査費を減額、もしくは廃止し、そのかわりに議会費を増額して議会活動の拡大を図るべきです。

提言3:自治の制度(ガバナンス・システム)は、地方自治体が選択できるようにしよう。日本国憲法で困難と思われている一元代表制も選択できるようにしよう。

自らのことは自らで決める自治の基本理念に立ち返り、財政状況や人口規模に適した自治体のガバナンス・システムを自らの意志で選択できるように関係法令を正すべきです。国が定めた全国均一の制度をやめ、自治体が主体的に財政状況や将来展望を考え、財源を可能な限り自力で確保し、決定した事項に責任を負うなどのガバナンス・システムを機能させることが自治の本質です。

地方自治体が自治の制度を選択できるようになれば、人口300万を超える大都市では、効率的な意思決定で責任の所在を明確にする目的で議院内閣制を採用することや、財政難に喘ぐ小規模の地方都市では、議員の報酬を低額に抑え、経営能力の優れた人物を最高行政責任者であるシティマネージャーとして高額で迎え、短期間に懸案の課題の解決を目指すことも可能になります。

自治制度とは、自治の制度です。すなわち、全国均一の制度によって、“形式美”を整えたとしても、自らを治める目的を達成する制度になっていなければ、本末転倒です。
憲法の規定では、欧州のような一元代表制を地方自治体に導入することは困難と思われています。本来、自治体がどのような方法で市長や議員を選ぶかということは、その自治体の住民が決めることです。今後、憲法改正が行われる場合には、地方自治の関係規定の見直しを行い、地方の判断で一元代表制も選択できるように改正すべきです。

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