プロジェクトの目的

日本は長らく水産大国として世界の上位を占めていた。周辺水域は、暖流、寒流の複雑な海流によって、世界の三大漁場の一つに挙げられ、多様な水産資源を有する水産資源大国でもあった。しかし、2014年の漁業生産高は479万トンで、ピーク時(1984年、1282万トン)の1/3の水準に減少しており、漁業新興国のミャンマーと同程度でOECD諸国の中では最悪の減少率である。これは東日本大震災の影響も踏まえる必要はあるが、世界における漁業の生産高が増加傾向にある中で際立った存在である。
世界の漁業と水産業の潮流は、積極的に水産資源の持続的利用のための管理等(目標設定を含む)に関する政策、具体的には科学的根拠に基づく漁獲総量の設定と個別の漁業者への割り当てを徹底し、産業としての生産性と消費者の志向に応えた質の向上を実現している。
こうした各国の制度の背景には、経済的利益の再配分のあり方をめぐる科学的な分析と提案が存在し、法律等の改正も含め、必要な政策変更が行われている。
(日本では1998年からTAC(総漁獲可能量)制度を導入しているが、魚種が限られ、また、括り方が適当ではない。また、経済的利益の再配分のあり方を考慮に入れないオリンピック方式なので、競争を煽り、魚価の下落と投資の増大による事業者の弱体化につながっている。)
政策対応の不備による結果である日本の漁業と水産業の停滞を前に何をすべきなのか、ノルウェー、米国、ニュージーランド等の先進国との比較を通じ、日本の資源管理の基本政策を定め、法制度の整備、漁業・資源管理制度の構築とモニタリング制度の創設等に関する具体的な政策提言に資する調査研究の実施が本プロジェクトの目的である。とりわけ、日本と先進国の制度の違いについて、実地調査を通じて把握し、整理するばかりではなく、強力な既得権益層の存在も踏まえて具体的な政策の実現までを想定し、大中規模・沿岸業者への水産資源の再配分システムについて、制度的・経済的効果の評価も行う。

研究メンバー

  • 小松正之  東京財団上席研究員、アジア成長研究所客員主席研究員、新潟県参与、元政策研究大学院大学教授、元水産庁国際交渉担当等(プロジェクトリーダー)
  • 八田達夫 東京財団名誉研究員
  • 濱田弘潤 新潟大学経済学部准教授
  • 澤野敬一 日本政策金融公庫農林水産事業本部情報戦略部調査主幹
  • 亀井善太郎 東京財団研究員兼政策プロデューサー