タイプ
レポート
日付
2007/10/17

第5回研究会概要レポート(その?)を掲載しました。

去る9月29日、第5回研究会が開催されました。第5回研究会は、「日本、中国、文化交流」および「模倣品・海賊版対策から見た日中関係」の2つのテーマについて研究メンバーからの報告をもとに議論を深めました。今回は「模倣品・海賊版対策から見た日中関係」について、研究メンバーの分部悠介氏(弁護士、経済産業省模倣品対策・通商室)からの報告と議論の概要を掲載します。


1.報告概要


(1)中国における「模倣品・海賊版」被害の現状
・被害総額の算定は困難。各国関係機関が様々な数字を発表しているが、算出根拠も金額もバラバラ。例えば、中国政府の発表(2003年)によれば中国における模倣品市場額推計は約2.4~3兆円とのことだが、特許庁の発表(2005年)によれば中国における日系企業の被害額だけで9.3兆円に上る。

・中国政府機関の取り組みが強化され始めてきている一方、模倣技術の高度化に伴い、被害が拡大・深刻化している。

・さらに、中国模倣業者が海外進出することで、中国を震源に被害がグローバル化している。特許庁の発表(2006年)によれば、中国製模倣品のうち、中国国内で販売・消費されるのは概ね2割程度であり、残り8割は海外(日本、米国、欧州、東南アジア、中東、ロシア等)に流れている。

(2)日本の対中「模倣品・海賊版」対策
・企業レベルでは、調査会社を通じた調査・摘発行政機関への摘発要請等の対策を実施する企業が増加。先進的な企業は、知財部を中国に設置。また、業界団体レベルでも、模倣品対策部会の設置、情報交換、中国政府に対するミッション派遣等の対策を実施。

・政府レベルでも、知財に関係する官庁が、適宜、中国政府関係機関と協議を実施して摘発強化を要請。しかし、官官ベースの協議では中国政府側も警戒する傾向にあり、必ずしも実効性が十分とは言えないため、日本政府関係官庁が一同に会した上、産業界横断的な団体と合同で、2002年より「官民合同ミッション」を派遣、多くの中国政府関係機関を回って、幅広く要請や協力を行っている。

(3)中国中央政府による対応
・2001年のWTO加盟後、基本的な法律が「形だけ」は整備されたが、全体的に適切な執行が確保されていないのが現状。

・しかし、最近では、少なくとも中央政府レベルでは、「知財保護は中国自身の経済発展のために必要」との認識が共有され、対策を強化(「第11次五ヵ年規画」、「知的財産権保護に関する行動計画」、「知的財産権通報センター」の設置etc)。

・一方で、新たな問題として、中国企業保護の観点から、その他の法律規定を濫用して、外国企業の知財権公使を牽制する動きがある。

(4)対中「模倣品・海賊版」対策における課題
・中国国民全体の知的財産権保護意識の欠如

・不整合な知的財産権関連法体系。中国では通達、司法解釈等が乱発され、全体として整合的な法規範となっていなかったり、地方によって法規範が異なっていたりする。
・模倣品・海賊版業者の手口の巧妙化・国際化 → 中国政府が取り組みを強化するほど、模倣品・海賊版業者の手口も巧妙化。

・地方政府における適正な法執行確保の欠如。「法律を知らない裁判官」。地元経済・企業の利益を優先する「地方保護主義」。

・官民合同ミッションを通じて、日本側の産業界・政府間や政府関係当局間の連携が強化されてきてはいるものの、未だ、必ずしも十分ではない。

・日米欧の「真」の連携不足。米国は、法・ルールに則って圧力をかけていくアプローチ(米国の中国知財制度に対するWTO提訴はその典型例)であり、日本のアプローチとは根本的に異なる。とはいえ、同様に中国において模倣被害を受けているという点では利害が共通しているので、連携できるところとそうでないところをしっかりと見極めて、実効的な連携を図っていく必要がある。

(5)今後の対中「模倣品・海賊版」対策に必要な視点
・日本側の官民全体の「模倣品・海賊版」問題に対する意識・対策の強化。

・また、中国の現状に対する正しい分析・認識が必要。中央政府は法改正・運用の改善等の措置を採りはじめている。問題を問題として認めようとしないプライドの高い中国政府の悩みの本質をつかみ、これを後押ししていくことが、ひいては日本の利益にもなる。

・会社内部門間の連携、業界団体間の連携、日中業界団体間の連携、関係省庁間の連携、官民の連携の強化が必要。

(6)実効的な日中協力の実現への提言
・「日本vs中国」ではなく「日本・中国中央政府vs模倣品業者」の構図へ変遷しつつあることを認識することが重要。かかる認識の下、中国政府の模倣品対策に協力することが、日本の利益にもつながる。

・具体的には、例えば、中国知的財産権法の整理・改善のために、?立法担当者・執行担当者との徹底的な議論を通じた法律概念の共有化・キャパビル、?地方政府に対する直接的な働きかけを通じた執行力の向上などの協力が望まれる。

・また、知的財産権法以外の分野と絡ませた働きかけとして、?対中投資と引き換えの知的財産権保護要請や?知的財産権保護に係る中央政府による地方政府の評価システム構築支援なども検討してはどうか。

・さらに、日米欧との間で真の意味での連携が必要。アプローチや被害状況の違いを踏まえて、連携すべきところは連携し、距離を置くべきところは距離を置くことが大事。

2.ディスカッションの概要

・面子を重んじる中国人は、知らないことを知らないとは言わないが、知財対策においてはやはり担当者のキャパシティが足りていないことがある。ルールを理解していない者に対して「しっかり対応しろ」と文句を言うだけでは実効があがらない。やはり言うべきことは言いつつも、協力すべきことは協力していくアプローチが必要。

・今年で5回目となる「官民合同ミッション」も、最初の1、2回は中国側に文句を言うばかりだったため中国側は聞く耳を持たなかったが、3回目以降、協力を交えた対話というアプローチにしたことで、中国側も徐々に聞く耳を持ってきた。

・米国の中国知財制度に係るWTO提訴に日本が第三国参加したことについて、一時期、中国から、「日本のスタンスが分からない。日本は、アメリカとは違い、協力重視のアプローチではないのか」と指摘され、日中間の知財保護の協力に悪影響が出てしまった。もちろん、中国に対して継続的にプレッシャーをかけていくことは重要ではあるが、中国の状況に対する正しい理解、今後の知財保護にかかる日中関係のあり方等を総合的に勘案して、日本は日本独自のスタンス・アプローチをしっかり持っていくべき。

・知財対策を厳しくすると、薬などの価格が高くなり、貧困層にとってはマイナス。その意味で、知財保護問題には、常に「南北問題」が付きまとうが、通常、国際社会において問題となるこの南北問題を、都市部と地方部の格差の大きな中国は国内に抱えているのも留意する必要がある。

(以  上)