タイプ
その他
日付
2007/10/24

第1弾「とち餅」(1/5)



「食のたからもの取材レポート」第一弾は、栃(とち)の実ともち米を一緒に炊いて作る「とち餅」のレポートをお届けします。栃は朴葉のように大きな葉をつける落葉樹で、大きいものは高さ30メートルにもなります。栃の実を食する文化は実に縄文時代からわが国にみられ、とくに米に頼れない険しい山間地では、長い間、主食のひとつでした。しかし、いま、食文化の変化や生産者の高齢化により、雑木の森の恵みや人々の知恵の詰まった栃食の継承が危ぶまれています。プロジェクト・リーダーの島村菜津氏が現状を福井県池田町に取材しました。



――――― <目次> ――――――――――――
1.どんなところに残っているのか?
2.なぜ、たからものなのか?

3.山で採集して運び出す労と、圧倒的な加工の手間

4.人物ファイル/5.どこで味わい、買うことができるか
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■English Version→ Tochimochi


1.どんなところに残っているのか?

 
栃食の文化が残っているのは、豊かな森があり、清流が流れる地に限られる。九州ではほとんど見られないが、四国から北海道まで点で残る。静岡県、鳥取県、長野県、岐阜県、新潟県、山形県、岩手県など険しい山間部では、共有林や栃の原生林が守られ、集落によって解禁日(山の口あけ)を決めている地域もある。

岐阜県や長野県、山梨県などでは、地元の和菓子屋が、とち餅、栃せんべい、栃飴などを製造し、独自の加工体制を確立して家業を存続している。長野県や岩手県、山形県などの栃の原生林が残るそうした地域では、養蜂家が栃の蜂蜜作りを続けている。また、山形県の朝日村、長野県の栄村、新潟県の朝日村、島根県の匹見町、福井県池田町などでは、1980年代から地元の女性たちが中心となり、生産と直売を行い、伝統食を守ろうという動きがおこった。しかし、それらの地域でも、また、山村で数軒ほどが町人のために作り続けているという自家消費的に残る地域でも、高齢化は深刻で、次世代にどう継承していくかが課題である。

今回取材した福井県池田町は92%が森林、「冠山」など高い山に囲まれ、日本の滝百選にもなった「龍双の滝」が象徴するように、おいしい水にも恵まれた地域である。谷間の河岸段丘では、古くから水田が開かれ、平安に由来する「田楽能舞」は重要無形文化財でもある。この地域で古くからとち餅が、郷土の味として愛されてきたのは、周囲の“山人”との交流による。この地域では、家族や隣人のために作り続ける人々を中心に、今も30人近い人たちが、栃もちを作る技を持っている。(続きを読む