タイプ
その他
日付
2007/12/17

第5弾「干し柿」(3/5)


3.どんなところで作られているのか


美濃加茂市は、名古屋から車で小一時間のところ。その美濃太田駅から車で十分ほどの農村地帯に蜂屋町はある。この辺りは、美濃平野の一角で、岐阜県に多い寒さの厳しい山間部のイメージとは、ほど遠い。冬にも、雪はごく稀にしか降らない。温暖で日照条件もよく、甘柿の富有柿、新高や幸水などなしの産地としても知られる豊かな農業地帯。

干し柿にする渋柿の蜂屋柿は、この町原産の在来種で、その昔、徳川家康が、大垣城に攻めこむ道すがら、農民からこの干し柿を送られ、「大ガキを手に入れようとは縁起がいい」と駄洒落を口にして喜んだという逸話が残るように、大きな柿の名産地として知られた。この品種は、福島や長野など15県に拡がった。

蜂屋柿の特徴は、大きいだけでなく、肉質が緻密で、水分が少ないことから、干し柿にとても向く。また、美濃加茂駅の反対側に十分ほど歩くと、そこに旧中山道、江戸の風情の残す宿場町跡があり、これに平行して木曽川が流れているが、その沿岸では湿度が高すぎるのか、蜂屋柿はつくられていない。

蜂屋町は、関が原、恵那、飛騨といった雪の多い地に囲まれながら、冬にも雪は滅多に降らない。冬の晴天率は高く、そのため天候に左右されやすい干し柿の生産に適しており、朝夕の寒暖の差があること、雨が少なく、昼は適当な日射があることなどが、その干し柿の微妙な風味を醸して、古くから名産地となったようだ。

この地域では、自宅の屋敷林に蜂屋柿を一本、持っている民家も少なくない。そして、現在80軒の栽培農家のほとんどは、この蜂屋町を中心にした狭い地域に限定されている。  

ところが、この千年の歴史を持つ干し柿の里も、名古屋という大都市からそう遠くないせいか、すぐそこに真新しい住宅地が広がり始め、農村にもモダンな住宅が点在し、懐かしい里山の光景は失われつつある。



柿は、数少ない世界に誇る日本原産の果実である。山形大学の平智教授によれば、1912年、政府が行った調査では、全国に千種近い在来品種の柿が記されているという。今では、その3分の1も残っていない。平氏は、その要因を「農村の都市化と食生活の洋風化」とみている。それを考えれば、名古屋だけでなく、東京からも遠くない蜂屋町だが、ここにも、食生活の変化だけではない、負の要因が見え隠れする。