タイプ
その他
日付
2008/1/22

第7弾「アサクサノリ」(4/5)


3.どこに残っているのか



アサクサノリを守る人たち


スサビノリと酸処理が常識となってしまった有明湾でも、極力酸に頼らずにアサクサノリを守ろうとしている人たちもいる。
 佐賀県西与賀の島内啓次さん(右写真、左側))。「おいしい海苔づくり」をめざし、実践してきたグループ(16人)のリーダーである。佐賀は質のいい、美味しい海苔の産地だった。
だから酸処理の導入には最後まで消極的だったが海苔の病気による収穫減が続き、生産者の死活問題とついに解禁に踏み切ってしまった。14年前のことである。

それでも島内さんらは酸処理に頼らなかった。伝統の海苔づくりをしたいという想いと海の汚染を目の当たりにしたからである。
 漁連の足並みを乱すとして、島内さんらは様々な妨害やいやがらせにあった。

海苔の流通は入札制で生産者は直接取引きはできない。入札は見た目優先であり、酸処理の話はもちろんタブーであった。島内さんの苦境は続く。ほぼあきらめていた時に、出会ったのが北海道北見市で食品問屋を経営する(株)ヤマムロの社長、山室正則さんだった。二代目であるが、父親の海苔入札の決め手は「味」重視。山室さんの海苔選びの厳しさは父親ゆずりである。10年ほど前から海苔の入札のたびに「おいしい海苔」がなくなっていくのに気付いていた。そして「酸処理」に行き着いたのである。酸処理をしないアサクサノリをつくる生産者を求めて、ようやく探し当てたのが島内啓次さん。山室さんは入札で引き受け手のない島内グループの海苔を全量買取り、商品化することにした。「農業はいい。生産者の名前もつくり方も堂々と表示し、評価されるから。海苔は手間ひま、愛情かけても直接の評価は得られない」と島内さんは嘆いていた。日本の最北と南、海苔が取り結んだ縁が島内グループの大きな支えとなり、旧来の海苔業界に一石を投じることになった。
 その島内さんが、今シーズンはアサクサノリの生産をあきらめたという。健康でおいしい海苔づくりはタネが決め手と島内さんは海苔ダネを自分で培養し、海苔芽を採苗するところから始める。が、最近は海の汚染に加えて異常気象が続き、海苔の生育にもかなりの異常が起きている。弱いアサクサ種がスサビ種に侵食されてスサビ種入りアサクサ海苔が生まれているのだ。春から秋にかけて培養し、カキ殻で育てたタネを顕微鏡で確認して、その事実を発見したのだ。幸い、アサクサの原種は保存してある。今年5月頃からの培養はそのアサクサ種を復活させようと考えている。
 来シーズンは再び酸処理をしないアサクサノリが有明でも育つことになるだろう。
その島内さんたちが酸処理導入時に助言を仰いだのが出水の古賀重美さんだった。
「酸処理に頼るな。海苔は愛情で育つ」それが古賀さんの答えだった。