タイプ
その他
日付
2008/9/17

第23弾「鰹節」(2/5)


2.どのように作られているのか



 一口で鰹節といっても、その形状や製造法はいくつかの種類に分かれ、産地によって主要となる製造法も異なる。まずは、製法の違いによるそれぞれの呼称を説明しておきたい。




(左)荒節=鰹をおろし、煮熟した後に焙乾(薫乾)し、乾し固めたもの。
(中)裸節=荒節の表面を整形し脂肪分を削って、形を整えたもの。
(右)本枯れ節(仕上げ節)=裸節にカビ付けをして鰹を発酵させたもの。なお、カビ付けを行うことの効用は、次のとおり。


(1)カビが生物の生命維持のために鰹の中の水分を摂取するために乾燥が進んでいく。
(2)カビの持つ脂肪分解力によって魚の脂肪や臭みが除去され、また脂肪が脂肪酸へと変化するため水溶性となり、かつアクも抜けて旨みと芳香が生じる。
(3)カビの持つたんぱく質分解力によって、鰹のたんぱく質がアミノ酸その他の窒素化合物へと変化し旨みが増す。
(4)カビが先につくことによって、ほかの雑菌がつきにくくなる。
(5)カビの脂肪分解能力によって、中性脂肪が分解され、遊離脂肪酸が増加するために煮出した時の濁りがなくなる。 

 ちなみに、現在、カビつけをほどこして仕上げる本枯れ節の最多生産地も枕崎市であり、その品質を守るにあたっては、職人集団の高い技術力が保持されてきた。中でも、「薩摩型」と呼ばれる旧来の本枯れ節は、原料の鰹の質、それを加工する技術共々が保証され、フォルムも美しい独自の逸品。一流料亭が軒を連ねる京都においても「薩摩型」と指名して買い上げる料理人は少なくないという。
 しかし、包丁さばきにおいては高い技術力が必要とされ、なおかつ効率が良いとはいえない作業が忌避されてか、近年は「薩摩型」の伝統的な製法技術を持つ職人は、市内にわずか数人であると聞く。そのうちの一人「山辻商店」の尾辻求さんの仕事場を訪ね、原料処理から仕上げまでの製造過程を見せていただいた。

工程1 鰹をさばく

 前述の「薩摩型」のおろし方は、すべて手作業。頭部を身から切り離さずに作業を始める。




 薩摩型で仕上げる鰹には、7キロ以上の大きなものが選ばれる。尾辻さんは、最高級ラインの原料としては、近海の一本釣りの鰹を使用。それ以外に機械であらかじめ頭部を切り落としてから作業を始める「改良型」と呼ばれる製造方法もある。

※鰹の大きさ、おろし方によって節の呼び名は、本節と亀節とに分かれる。
・本節=一匹の鰹を三枚におろし、左右に分けた身をさらに二分し、計4本の節に分けたもの。背側は「雄節」、腹側は「雌節」と呼ばれる。




・亀節=一匹の鰹を三枚におろし、左右一本ずつ計二本の節をとったもの。


工程2 鰹を煮熟

4本の節に分けた鰹を「煮籠」(にかご)と呼ばれる金属製の籠に並べてから、専用の釜に浸け、約2時間煮る。この作業によって、殺菌を行うと共に、鰹のタンパク質を凝固させ、燻製の作業に備える。タンパク質が完全に凝固することによって、旨み成分となるイノシン酸が分解されずに残りやすくなる。





工程3 乾燥(焙乾)

 煮熟後、放冷を経て、生身の時に残しておいた太骨類(背側の二本骨、腹側の七枚骨など)や皮の一部を取り除く。皮をすべて取らないのは、身くずれを防ぐためと次の作業で皮の縮み具合を見て乾燥、燻蒸の状態をチェックするため。身が割れてしまった箇所へは鰹のすり身を塗り込んで修繕をほどこす。




乾燥室(焙乾のための部屋)にて、薪の火を用いて燻蒸。薫乾と放冷を繰り返しながら約一ヶ月間かけて荒節を作る。




荒節が仕上がったら、表面の焦げ付きを削って整形し裸節へと仕上げる。





工程4 カビつけ

 裸節にカビ付けをして、天日に干す(真夏の強い日差しが望ましい)。カビ付け→2日ほど天日干し→倉庫に半月ほど仕舞うという作業は、一番カビから三番カビまで、約3~4ヶ月をかけて繰り返される。一番カビの時には、うっすらとした青い色だったカビは、発酵期間を経ていくうちに黄色っぽくなり、やがて白みを帯びた枯れ木のような状態になっていく。カビ付けを繰り返すことによって、完成時の鰹節中の水分は、約18%~20%となる。発酵食品としての鰹節・本枯れ節の誕生だ。