タイプ
政策提言・報告書
プロジェクト
日付
2009/4/23

地球環境読本(日本語)

世界的規模で取り組むべき地球環境問題の解決には、より大きな視野で問題を捉えていく必要があります。

東京財団が今回作成した「地球環境読本」では、地球環境問題の本質は地球を構成する物質(大気圏、水圏、地圏、生物圏)と人間との関係性であるという考えのもと、松井孝典特別上席研究員をはじめ、第一線で活躍する日中両国の研究者が地球環境の基本知識とその保護に関する基本理念を論述しています。

次世代を担う青少年には、俯瞰的な視野を持って地球環境や人間の未来について考えてほしいという願いから、この読本を作成しました。環境教育の現場や青少年を対象としたイベント等でお役立てください。

地球環境問題とは?


東京財団特別上席研究員
前新日中友好21世紀委員会委員
松井孝典
中国科学院大気物理研究所教授
符淙斌
 

現生人類(ホモサピエンス)は、約1万年前、それ以前の狩猟採集という生き方をやめ、農耕牧畜という生き方を始めました。この生き方の違いを地球システム論的に分析すると、前者は、地球システムを構成するサブシステム(構成要素)の一つである、生物圏の中に閉じて生きる生き方(図1)であり、後者は、生物圏から分かれ新たに、人間圏とでも称するべきサブシステムを作る生き方(図2)となります。このことは、狩猟採集という生き方は全ての動物がしている生き方であり(すなわち、生物圏の中の種の一つとして生きるということ)、一方農耕牧畜という生き方は、それにより、地球全体の物質・エネルギーの流れが変わることを考えてみれば分かるでしょう。宇宙から俯瞰する視点で文明を定義するとすれば、この人間圏を作って生きる生き方こそ、文明ということになります。

急速に拡大した人間圏

18世紀、人間圏は、その内部に駆動力を獲得し(産業革命)、以降急速に拡大し始めました(図3)。20世紀の人口増加は、その増加率がそのまま継続すれば、3000年を経ずして人類の重さが、地球の重さに匹敵するほど異常なことです(図4)。地球はいわゆる文明の世紀(Civilization Era)に突入しました。人間圏の拡大は、そこに流入する物質やエネルギーの拡大を必要とし、そこから排出される物質やエネルギーの拡大をもたらします。すなわち、それは、地球システムの物質・エネルギーの流れの乱れを引き起こす、ということです。これが現在人類の直面する地球環境問題、資源・エネルギー問題、人口問題、食糧問題などの本質です。これらの問題は、その原因が人間圏の異常な拡大によるという意味で、文明の問題といっていいでしょう。
  
この文明を将来にわたって維持するために、私たちは、地球システムと調和的な人間圏を構築しなければなりません。そのための方策が、現在議論されている地球温暖化対策等の取り組みです。このことは容易なことではありません。私たちがこれまで当たり前だと思ってきたことの全てを、もう一度考え直さなくてはならないからです。そのためには、地球や人間や人間圏について、その歴史やシステムについて、もう一度きちんと勉強しなくてはなりません。この読本はそのために作られました。
  

解決に必要な統合的な考え方

地球環境問題など文明の問題の解決のためには、二元論や要素還元主義を超えた統合的な考え方を必要とします。残念ながら、そのような考え方はまだ存在しません。それぞれの分野の専門家が、それぞれの分野で顕在化している問題を中心に議論しているというのが現状です。そこでここでも、地球環境問題の、それぞれの分野の専門家が、それぞれの視点から問題を整理し、議論するというスタイルをとっています。

例えば、地球温暖化問題は、現象としては気候変動ですから、気候システムという地球の視点から、対策としては人間の側から、人間圏の内部システムの問題として経済や工学の視点から、気候変動の結果は地球や生物圏の変動として観測されますから、地理学や生物学の視点から、というふうにまとめられています。もちろん、その原因を作ったのは私たち自身です。そこで、現生人類がなぜ文明を築いたのか、あるいは欲望をどのように抑制するかという、人間とは何かに関係する壮大なテーマの議論も紹介されています。

全体の構成は、第1部で地球環境問題とは何か、その概略をまとめ、それに基づいて、第2部で人間圏の拡大による地球システムへの影響がどうなっているかその現状をまとめ、第3部で地球システムと調和的な人間圏の内部システムの構築に向けて私たちの取りうる対策がまとめられています。



◆日本語版PDF【4.24MB】  ◆中国語版PDF【2.94MB】