タイプ
レポート
プロジェクト
日付
2012/8/10

雇用政策の課題について~若年雇用問題の論点~

7月24日、岡田豊 みずほ総合研究所 政策調査部主任研究員より「雇用政策の課題について~若年雇用問題の論点~」と題する報告を受け,その後メンバーで議論を行った。

1.若年雇用問題の現状

若年雇用は景気の影響に大きく左右される。これは、企業が景気悪化のショックを新卒採用で調整するためで、特にリーマンショック後、急速に悪化した。とはいえ、足元の新卒者の採用はやや改善しており、卒業時の内定率も9割程度を維持している。海外と比較すると、リーマンショック後の若年失業率の悪化度合いは、OECD平均に比べて緩やかであった。しかし、若年失業者に占める1年以上の失業者の割合はOECD平均を大きく上回っており、2000年の20%強から2011年の30%へと大きく上昇した。これは新卒一括採用という慣行の中で、一度フリーターになるとそこから脱却しにくい上に、不本意で就職した人が2~3年で辞めてしまうことなどが要因である。現在の年長フリーターをどうするか、年長フリーターになる人を減らすために何ができるか、は大きな課題である。

2.若年雇用問題の背景

実は、高卒・大卒ともに求人倍率は1倍以上ある。しかし、中退者や一時的な就職・3年以内離職者など、高卒の約1/3、大卒・専門学校卒の約1/2は教育から雇用へと円滑に接続できていない。このようなミスマッチは特に中小企業において顕著。求人倍率でみると1000人以上の企業の0.73倍に対して、300人未満の企業は3.27倍であり、未就職者を十分に吸収できる余地がある。また、製造業・流通業では求人が求職を大きく上回り、金融業ではその逆であるなど、産業間のミスマッチも存在している。これらの要因として、ネットを利用した就活の一般化により、労働条件の悪そうな「ブラック企業」に、求職者が敏感になっていること。大学進学率は上昇しているものの、大学生の学力低下など、質の面で追いついていないこと。さらに、サービス業の増加に伴って、コミュニケーション能力が重視されるなど、大学における就職支援で対応しきれない要素が増えてきたこと、などがあげられる。2020年ごろまで大学卒業者数は横ばいが続くと予想され、供給面での改善は難しい。

3.若年雇用政策の論点

 そんな中、2012年6月に、若者雇用戦略が打ち出された。しかし、基本方針はあるものの、具体的な施策はこれからという状態である。政策に必要な財源をはっきりさせる、政策に優先順位をつける、政策の効果をきちんと評価する、といった中長期的な戦略が必要であろう。若年雇用政策の争点はかなり多岐にわたる。厚労省の諸政策の使い勝手、離職率や財務情報などの企業のデータ公開のあり方、地域の事情に即した対策のための権限委譲、民間就職支援サービスの可能性、中小企業における本格的なインターン制度の導入、最低賃金を上回る生活保護費など就業意欲を阻害しかねないセーフティネット、若年雇用政策における省庁間の縦割りの解消など、検討すべきこと・実行できることは非常に多いと考えている。

議論


・ 地方には、大卒女性の働き場が無く、その多くが東京へ。これに伴う人口構成の変化は、継続的に続くと考えられる。一方、就職に特化した大学も出てきており、地方大学の生き残りのひとつのあり方と考えている。
・ 大学新卒者に焦点が当たりがちだが、国全体の成長ということを考えれば、小中高レベルから、飛び級を認めるなどの施策が必要ではないか。少なくとも、高校3年間で学生の意識を高めるなど、できることは多いと考えられる。
・ 就職率が低いのは、成長セクターがないから。国際的な競争に耐える人材がより評価される社会にしていくことが必要。
・ 学生が社会に出るうえで必要な能力・欲しい能力を、大学が提供できていない。
・ 年金の支給年齢の引き上げに伴い、高齢者の定年延長の議論もある。少ない職場をめぐって、高齢者・女性・若者が取り合いをしている状態。在宅や兼業も含めて、働き方を変えていく可能性もあるのではないか。
・ 年功序列ではなく、欧州のように同一労働同一賃金にすべき。ただ、労働の中身を評価することは簡単ではない。
・ 秋入学の導入は、企業の採用のあり方を変えるひとつのきっかになるのではないか。
・ 政策の方向性についてコンセンサスが作れないのは、実態が分からないから。実態を評価するための統計を作っていくことが大切。
・ 本来、景気が悪いときのほうが、いい人材を採りやすいのではないか。企業に長期的な視点が無いのが問題。社内における年齢構造もいびつになり、教育がしにくくなっているのが現状。


文責:東京財団研究員 中本淳