タイプ
レポート
プロジェクト
日付
2012/6/18

社会保障・税一体改革と介護保険制度の問題

第3回 社会保障・税一体改革と介護保険制度の問題
6月18日、度山徹 厚生労働省老健局 介護保険計画課長より「社会保障・税一体改革と介護保険制度の問題」と題する報告を受け,その後メンバーで議論を行った。

1.介護保険制度の概要と現況

介護保険の基本的な仕組みは市町村ごとに特別会計(ファンド)を作り、税金・保険料それぞれ50%で、介護サービスをまかなうというものである。40歳以上64歳未満の第2号被保険者と、65歳以上の第1号被保険者が納める保険料負担の割合は現在29:21となっており、高齢化の進展によって後者の負担割合は増大しつつある。要介護の大半は75歳以上であり、この世代の増大が要介護者の増大につながると考えてよい。介護需要の増大に伴い、介護費用とそれを賄う保険料は年々増大している(全国平均で、2000年の創設時2911円から現在4972円)。介護サービスの供給が増えることを期待しての現物給付制度だったが、その目論見はある程度成功したと考えている。一方、訪問介護、ケアマネジメント、施設サービスといった各介護サービスにおいて、様々な課題も発生している。

2.社会保障・税一体改革における介護分野の課題

医療・介護サービス保障の強化は、社会保障・税一体改革においても取り上げられている。現状の体制は、急性期医療における在院日数の長さから、慢性期・介護におけるサービス・従事者不足まで、不十分・非効率なサービス提供体制となっており、現状のままでは今後の費用増大を避けられない。そこで必要なサービス強化と効率化を同時実現し、必要な医療・介護を確保することが求められる。特に介護分野では、地域包括ケアシステムなどの在宅介護の充実やマンパワー増強とともに、介護予防・重点化予防などが必要とされている。また、要介護度の高くない人(要介護1、2)には主として在宅介護を利用してもらうなど、介護施設の重点化も必要である。また、保険料についても、第1号被保険者についての低所得者対策の強化とともに、第2号保険料の書く医療保険者からの納付金についての負担能力に応じた総報酬割の導入が検討されている。

3.増加する介護需要に対応した持続可能な制度のあり方の模索

 介護分野への支出を国際比較してみると、OECD諸国の中では日本の支出は平均を少し超える程度であり、高齢化の割に支出は低い。しかし、80歳以上人口(この多くは要介護になると考えられる)の比率予測では2050年まで日本がトップであり、介護分野に効率化が必要なことは間違いない。また、少子化で労働力自体が減少している中で、今も課題である介護人材の不足がますます問題となることは間違いなく、介護の相対賃金の上昇が必要と考えている。OECD諸国でも、介護政策への対応が焦点になってきており、中でも介護費用と要介護者の可処分所得の差が大きいことから、財政的な維持可能性が大きな課題として認識されている。日本では、現在9兆円の費用が2025年に約21兆円(234%増)になると予想され、それに伴って保険料水準も上昇する。今後も介護予防の強化、医療との連携などの改革の他に、クラスター分析などを用いた介護給付の分析・およびそれに基づいた質的な効率化が必要であろう。

議論

・ 介護サービスの利用は、要支援1・2および要介護3~5の要介護認定に対し、それぞれに1ヶ月ごとの支給限度額が定められているが、全員が限度額一杯を使っているわけではない。重度の方でも5~6割くらい。
・ 自己負担1割については、見直しの余地があるかもしれない。医療では1~3割。ただし、一定期間で終わる医療と、基本的に継続的に続く介護の負担を同じように考えることも難しい。
・ 介護の場合、要介護認定の存在や給付に上限があること、ケアマネージャーのチェックなどがあるため、医療のように、不正受給のようなことは生じにくい。
・ 介護を成長分野として認識することはできるのか。施設サービスの参入は難しいが、居宅サービスについては誰でも可能。標準的なサービスを超えるサービスについてはその追加料金をとることもできる。様々な議論はあるが、標準的なサービスの公定価格については緩和の余地があるかもしれない。
・ 介護分野においては、短期間で辞めてしまう人も多いが、その理由は低賃金だけではなく、労働環境なども。この点の改善が同時に進められなければならない。スキルアップとそれに伴う賃金アップのメカニズムが働きにくい・働いていないのも問題。
・ 供給側については、競争も入って効率化が進んできたが、費用負担については、かなり逆進性が高いのが実態。
・ 介護予防・重点化予防を促すような制度になっていないのではないか。要介護1-2程度であれば、出来高払いよりも一人あたりいくらと決めて、サービス内容の自由度を高めた方がいいのではないか。
・ 介護度の改善や維持に対して事業者側にインセンティブがないのも問題ではないか。何を評価の基準とするかは難しい問題。今回の報酬改定で、介護老人保健施設がある程度在宅復帰を果たした時に報酬に反映される報酬設定が導入された。

文責:東京財団研究員 中本淳