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社会保障・税番号制度における技術要件と解決技術

April 12, 2012

4月3日、花谷昌弘 NTTデータ公共システム事業本部第二公共システム事業部営業部第三営業担当課長より「社会保障・税番号制度における技術要件と解決技術~安心・安全・効果的なシステムの実現を目指して」と題する報告を受け、その後メンバーで議論を行った。

1. 情報提供ネットワーク構築に向けた現在の課題

マイナンバー法の提出後、議論の中心は情報保有機関側(各府省)の対応に移っている。しかし、この点についてはマイナンバー法では具体的に触れられておらず、各府省側でもどう手を打つか、どれだけの予算を取るか、どう連携させるかが全く分からない状態となっている。様々な要因・課題があるが、そのひとつは「リンクコードの変換」をめぐるものである。情報連携の際、マイナンバーを使っての直接のやり取りではなく、基本4情報を送付・突合してリンクコードをもらうことが必要になる。しかし、各府省において、住所の番地の書き方が異なる、JISコードで定義されていない外字のコードが違う、など、現状のままでは基本4情報の突合はできない。このことは数年前の株券電子化における証券保管振替制度(ほふり)のときにも問題になった。このときと同様、今回も情報提供ネットワーク側でガイドラインを示し、それに合わせて各府省が正規化する必要があるだろう。

2. 情報保有機関側のシステム改修

情報保有機関側では、システムの構築・改修も必要である。現段階で何らかの形で情報の申請・申告・承認・発行というプロセスがあるものについては、システム改修は小さくて済むが、そうでない場合は大きな改修が必要となる。マイナンバー法では運用ルールの詳細がまだ決まっておらず、情報取引の件数が少ないものについては、システム対応するか否かという点から、今後各府省で決めることとなる。システムの開発には1年以上が必要とみており、来年度から予算をとる必要があるが、25年度予算に向けた概算要求でいくら必要かもまだ分からないのが現状である。システムに必要なセキュリティの詳細なども未定であるが、システムの構築には、ハードの運用も含めて、大規模なものでは、数百億円程度がかかるとみている。

3. 本人確認の考え方

本人確認の手段としては、個人番号カードを使用して、対面での本人確認およびオンラインでの本人認証は、引き続き可能となる。しかし、現在は可能な「郵送による届け出」については、個人番号カードのコピーの送付は不可のため、受け付けることはできなくなる。また、法定調書の作成時における社員の番号とデータの紐付けは各企業の責任となる可能性があるなど、民間側の負担も増大することも想定される。

様々な課題はあるものの、番号の導入によって、マイポータルができれば、各府省へのサインインは一箇所で済むようになり、地味ではあるが、これだけでも大きな効率化・費用削減となる。これを第一歩として、今後はユースケースの具体的な設計が求められる。

議論

・ マイナンバーが直接やり取りできないのは、住基コードをめぐる最高裁判決を適用されないようにするため。番号を利用している他の国で、ここまで複雑な制度を利用している国は少ない。

・ 国税・地方税については、従来通りの業務が可能となるよう、情報ネットワークを介する必要はないことになっている。また、これによりマイナンバーを利用した申告書の突合が可能になる。

・ 照会者がどのような情報を、どのようなタイミングで利用できるか、というのはまだ決まっていない。運用ルールの構築はこれから。

・ 番号の活用法としてあげられていた、個人番号カードが保険証になるかどうかは、現在は白紙。

・ 医療に関する情報については、(1)資格、(2)医療費、(3)診療内容といった3段階の情報が考えられる。総合合算制度の導入など、カードの利便性を高めようとすれば、(2)までの情報が必要となるが、医療機関側でもシステムの構築が必要になるなど課題も多く、まだはっきり決まってはいない。

・ 民間については、個人番号関係事務実施者であれば、番号の提示を求めることができる。保険会社の保険金支払いなど。銀行の利子支払いについては、源泉分離課税のため、番号の提示は求める必要はないのではないか。

・ ICカードについては、容量が大きいため、4情報の他に公的な情報を入れられるようにするのが良いのではないか。

文責:東京財団研究員 中本淳
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