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2007/10/23

第4回国連研究会から -スーダン情勢と日本の対応(1)

2007年9月11日
於 東京財団


<牛尾滋・外務省アフリカ第一課長報告>

 外務省アフリカ一課長の牛尾でございます。スーダンなんですが、実は私、担当し始めたのは今年の4月からでございます。従来はアフリカ局の中近東一課というところでやっておりました。何でアフリカ一課に来たのかということなんですけれども、一つは、組織的な背景として、中近東局にスーダンを入れると、中東和平の話が忙しくなって、スーダンが端牌になっちゃうと。今まで端牌だったんですけれども、それで見えないと。他方、G8に行ってもそうですし、スーダンの話をしない人はいないわけで、要するにこれはちゃんと扱わなきゃいけないと。
 アラブ世界とのつながりと、アフリカの中間あたりにあるわけですけれども、どっちのつながりが大きいんだという話が出まして、それはやっぱりアフリカのつながりのほうが大きいんだろうということで、ちなみに、スーダンと言っても、今のダルフールを見ると、実はチャドとか中央アフリカに拡大しているんですね、そこら辺の紛争の流れということで。そこら辺の連続性を持って見たほうがいいんじゃないかと。スーダンの問題を今扱っている主体というのはどこなんだというと、スーダン政府はもちろんそうなんですけれども、あと国連ももちろんそうですけれども、AUというのが見ていると。じゃあ、AUという係りで見た場合にどこがやったらいいんだという組織論になって、おそらくそれはアフリカ一課でやるのがいいんだろうということでアフリカ一課で見ることになったということでございます。
 自慢じゃないですけれども、よかった点が1つございまして、この前、パリでスーダン、ダルフールの問題についての拡大コンタクトグループというのがございました。これは従来、関心を示していないフランスが、サルコジとクシュネルのイニシアチブでスーダンに関心あるぞということで、G8のハイリゲンダムの後を受けてやった会議ですけれども、そこでフランス政府が明確に打ち出したのは、ダルフールはスーダンの中でとらえているのはもうだめだよと。要するに歴史的な背景も考えて、チャド、要するに中央アフリカ、あるいはリビアも視野に入れて扱わなきゃだめだろうと。こういうアプローチをとったわけですけれども、日本政府としても、そういうアプローチはいいんじゃないかということで支援も表明しましたけれども、これは意外と受けているんじゃないかなと思います。
 余談はさておいて、「じゃあ、どれぐらい関心あるの?」という話なんですけれども、外務省、ここの主体を考えた場合、マスコミなんですけれども、マスコミが、まず、アフリカと言ったときに、今、関心を持つ話題が2つある。1つはスーダン。なぜかというと、国際部の連中ががんがん流しているから。しかも、これはどうなるかわからないですけれども、史上最大のPKOなわけです。そのときに日本政府が人を出すのか出さないのかというのは、遠い話かどうかわかりませんけれども、そういう感覚というのは政治部の記者に働くということで、一応フォローしなきゃいけないかなという感じになっています。
 もう一つは、アフリカ全体で言うと、中国のアフリカ進出。これは多分にバーチャルな部分があって、日本の民間企業がどれほど出ていって、両方で、要はバイタルなのかというのはわかりませんけれども、頭の中では市場が席巻されると。中国に根回しされて、日本は出ていく余地がないんじゃないか。産経新聞なんか見ると、そういう論調ですけれども。そういう意味で、アフリカに対する中国の進出に対して、日本はどう考えているのかと。どういう手を打つのかと。ここら辺の2つが非常に興味を持って見ていると。他の話題は、はっきり言って興味ないんじゃないかなという感じでございます。
 この問題はどういう問題かと淵源を最初からやっていったほうがいいと思いますので、1枚目の地図を見ていただいて、お話ししますと、スーダンというもの自体はどうかというと、アフリカ大陸の中では一番大きな国でございます。人口もある程度持っているという国でございます。ただ、この地図を見ると、表紙ですけれども、ダルフールというところと南部と書いてあるところとハルツームと書いてあるところがあって、この国は生まれたときから分裂ぎみの地域であると。
 ちなみに、ダルフールの問題に隠れてずっとあったのが南北の対立の話でございまして、独立してからすぐ内戦になっちゃって、一時停戦がありましたけれども、その後、またもめて、やっと南北の和平合意になったのは2005年ということでございます。
 基本的に北部のほうはアラブの人が住んでいて、南部のほうはアフリカ系の人が住んでいるということでございます。これが、実はスーダンの最大の紛争であったということをご理解いただいたほうがいいのかなと。その背景でダルフールの問題も出てくると。さらに複雑なことを言うと、ダルフールと南部の関係はどうなんだということも出てくると。
 今、北と南ですが、一応和平合意ができて着々と和平プランをやっていますが、問題がございまして、実は和平合意が2005年にできましたが、その6年後に南部の独立を問う選挙をやるということになっていて、そういう合意があるのですけれども、南と北の国境線の確定とか、そういうことが全然なされていないと。なぜならば、南と北の間のアビエ地域と書いておりますけれども、ここは石油の埋蔵地帯で、この石油資源をどうやって分けるのかということが全く合意ができていないということでございます。
 それとあと、やっぱりDDRも進んでいませんし、はっきり言うとですね。北の軍隊を引き上げることになっていますが、全然引き上げていないと。これもどれぐらいシュアな和平合意かどうかというのもわからないということでございます。
 ちなみに、南部ですが、これはアメリカは相当昔から肩入れしている経緯があって、アメリカ、イギリス、欧米、一般南寄りという形になっております。日本も一応南部に対しては力を入れてやるということでございます。逆に、南部に力を入れているので、北との関係というのはどうかなというのは、若干バランスをとって考えなきゃいけないところがございます。なぜならば、日本の経済協力というのは、二国間の要請主義でございます。南の政府というのは独立していませんから、要請が直接とれる関係にない。北経由ということなので、あまりバランスを崩すと南の話はできなくなっちゃうと、こういう背景にございます。
 実はダルフールの問題も南北の対立ということに関係がございまして、南北で対立しているので、北の軍隊というのは南北の紛争のために南と北の間にずっと張りつけておいたと。ダルフールで2003年に黒人の、ダルフールの問題も実は最初はアフリカ系の人とアラブ系の人たちの争いから始まっているんですが、2003年に黒い人を中心として反政府暴動が起きます。兵力を張りつけているスーダン政府としてはダルフールに兵力を回せない。何をやったかというと、義勇軍みたいなのを募ったと。これがアラブ系の義勇軍を周辺国、あるいは国内から募って、民兵組織なんですが、暴れたと。この暴れた連中を「ジャンジャウィード」という名前で言っております。ジャンジャウィードが暴れて、どれぐらい死んだのかというと、3枚目に載っていますけれども、20万人の死者と約200~250万人が国内避難民なり、周りのチャドとか中央アフリカに逃れたと。
 ダルフールの地域の話を言いますと、構成民族は黒い人というのはいるんですが、これはフール族とザガワ族と言いまして、これは実はチャドの大統領の民族と同じなんですね、ザガワ族というのは。従来、スーダン政府がチャドの反政府勢力を支援し、チャドがスーダンの反政府勢力を支援する。同じ民族ですからあり得るんですが、そういう関係で、要するにダルフールで火がつくと、チャドとか中央アフリカにも飛び火するという構図になっていると。ここら辺が国をまたいで民族がお互いに散らばっているという複雑さがあって、なかなか厄介な問題ということでございます。
 スーダン政府はそんなことをやったので、国際社会の批判はすごくて、アメリカは特に最初怒りまして、もともとテロの関係で制裁しておりましたが、こういう話が出たので、アメリカはもっと制裁を強化するというような話になっておると。ただ、後で申し上げますけれども、アメリカの関係でまた別の次元の話がございますので、それだけにとらわれると違うのですけれども、国際的な批判が出てきたと。
 今の状況を申しますと、必ずしも紛争がアフリカ系の人対アラブという図式じゃおさまらなくなってきているという事情があります。アラブ対アラブというのが新たな図式で出てきて、はっきり言うと、ネーションステートが確立していないときにネーションステートまがいな話が出てきて、要するに民族というものがアトマイズされると。こういうような現象が起きているんじゃないかなという形でございます。したがって、状況は、今の時点について言うと、2カ月ぐらい前までは固定したのかなと言われていましたけれども、悪化の一途をたどっているということでございます。要するにまとまっていた政治的なエンティティーも分解し始めているということでございます。
 国際社会の対応は何だというと、これはユーゴのときもみんなそうなんですけれども、難民と国内避難民があれすると、まず、対処療法で大体PKOが行くと。スーダンの場合は、PKOは嫌だと最初言ったんですね。要するに先進国からP5を中心とする介入は嫌だと。アフリカの問題はアフリカで解決するんだということで、AUの部隊ならいいだろうということでAUの部隊をまず受け入れる。これが1枚目の紙にございますけれども、2004年、AUが決定して、7,000名規模で受け入れをしたと。根拠は、AU平和安全保障委員会の決定でございますが、マンデートというか根拠は、「停戦委員会設立及び軍事監視委員展開の様式に関する合意」ということで、人数は7,000名で、任務は、紛争当事者の活動監視、国内避難民のための安全確保、敵対行為の監視・検証等ということになっております。
 当然のことながら、受け入れ合意なんか全くないということで、効果のほども知れているということでございます。効果のほども知れているので、いよいよ国連が介入しなきゃいけないかなということで、スーダンの大統領は受け入れないとかバタバタしまして、あくまでAUを外したくないと言うものですから、国連とAUの合同部隊を考えたらどうだと、こういう発想になってきたと。これは今まで例のない話でございます。これも実は、これが若干入る第2段階というのがあるんですが、これについて、若干国連が入る第2段階はバシール大統領は受け入れて、これの展開をちょうどハイリゲンダムサミットのころは考えていたと。ハイブリッドという本格的なAUと国連の合同については、要するに第2段階、今やって展開させることを考えているのに、ちょっと話が早過ぎるんじゃないかということで拒否してきたのですが、G8のハイリゲンダムで圧力が強かったので、急遽、パリのコンタクトグループの開催前に受け入れを表明したということでございます。
 一応受け入れたということで、スーダンに対する風当たりというのは若干弱まっているんですが、この機を逃さず、国連のほうとしては、年内には展開したいということで国連決議も7月に通っています。任務は、ユーゴのときと同じなんですが、ダルフールへの人道支援・アクセス促進のための治安回復、文民保護、停戦合意・ダルフール和平合意等の監視等で、人数は2万6,000名程度と。費用負担はどうするかという話が出ていますが、これは一応、AUの部分はAUで出すんじゃないのということを言っていましたけれども、AUは金がないとかいろいろありまして、金はあるけど、実際に軍隊に支払われていないとか、いろいろ問題がございまして、要するに国連が全部丸抱えで見るということになりました。
 一応そういうことで対処療法的に国際社会としてやることというのは決まっていて、治安回復と人道のアクセス、それを確保するためにPKOを派遣するということは決まったと、とりあえず。それで、ほんとうのことを言うと、これだけでは全然解決にならないわけで、これは対処療法の話で、根本治療をしなきゃいけないと。これは何かというと、要は紛争している当事者がある程度自分のテリトリーを持って、要するに交渉のテーブルに着くという段階が必要なわけです。これには、2つあって、スーダン政治と反政府組織の話し合い、もう1つは、反政府組織同士の話し合い、これはダルフール・ダルフール対話、DD対話と言っていますが、今の関心はそっちのほうに移っているということでございます。
 過去にも何回かスーダン政府なり、ここはなぜかリビアが力を持っていまして、リビアとエリトリアが一応なぜか力を持っていて和平合意の仲介をしてきていますが、過去、あまりうまくいっていなくて、2006年5月に、反政府派は何派ぐらいあるかというと、一説は8、あるいは16と言う人もいますし、14と言う人もいますし、カウントの仕方によって全然違うんですが、その14とか16とか8のうちの1つが和平合意に応じたと。ミナウィというんですが、ミナウィ派というのが現政権に入っていますけれども、そんな状況で、ことしの8月にタンザニアのアルーシャ、これはアフリカで紛争があると、そこで大体やるんですけれども、ルワンダのときもブルンジのときもそうなんですが、あそこでやったんですが、結局、最大の派閥が、実はヌール派というのがあるんですが、ヌール派が全然来なくて、来たのは8しか来なくて、全部来たわけじゃないということで失敗に終わりまして、次回は10月の末にリビアがまた仲介してやると。
 ところが、タンザニアで欠席したヌールというのが今回も欠席だということを言っていまして、これは相当見通し厳しいなという感じでございます。1つは、こういう交渉がうまくいくというためには、自分たちがどれだけのものを守って、どれだけ譲れるのかということが整理できるぐらい、こんなことを言ってはいけないんですけれども、ある程度の勢力範囲が決まっており、何をとり、何を捨てるのかを各勢力が漠然としてでも見通しを持っているということが交渉の条件になるのではないかと思います。それと、だれが味方か敵かという仕分けですね。そこがしっかりできていて、あとはだれが鈴をつけるのかというところもしっかりしないとだめだと。あと仲介者がだれなのかという話がございますが、いずれをとってもしっかりしないと交渉は進展しません。AU、国連双方に仲介者が指名されていますが、よほど現状ではしっかりしていないと進まないのではないかと思います。
こういうことで、現状のスーダン政府と各勢力の関係、DD対話を見る限りにおいては、非常に見通し暗いよなと思います。私、ユーゴを昔やっていたものですから、それと比較で若干偏見を持って言っているかもしれませんけれども、本当に苦しいのかなという感じはします。
 あとは今後ですが、引き続き関心の的になるんだろうと。スーダンでうまくいかなきゃ、次にもう一つ大きな課題が控えていまして、ソマリアの問題、これどうするんだという話がございますので、やっぱりスーダンである程度AUと国連がうまくあれしないとソマリアまでいかないと。他方、ソマリアのほうもちゃんとやらないと、テロの話もございますし、ここはアメリカとしては絶対譲れないところであろうということもあって、スーダンは早く片づけたいというのが腹だとは思います。潘基文も今一生懸命やっているのは、そういう背景もあるだろうと思いますし、潘基文が行ってうまくいくのかというと、そこまで状況は甘くないんじゃないかなと私は個人的には思っております。
 では、日本としては何をすべきかという話ですけれども、日本は要するに人出しの話はまだ政治のアジェンダに上がっていないというのが現状ですし、日本のPKO原則をどう解釈するかという話もありますが、そういう解釈できるだけのものがそろっていないんじゃないかなと、PKOについてはですね。これはユーゴのときからそうなんですけれども、なかなか検討しにくいんだろうなと思います。
 あとは、出すべき出さないべきという政治のインセンティブというのはどれだけあるのかというのは若干わからないところで、個別の閣僚について言えば、人を出すべきだと言っている人もいますし、じゃあ、それが組織的に指示までおりるまでいっているかというと、そうでもない。
あと、我々にとってこの問題というのはほっとけないという事情がございまして、来年G8の議長国だと。あとTICADというのをやるんです。これで平和の定着というのが一つの大きな柱になっているものですから、スーダンの問題を何もことしやらなくて、平和の定着って大みえ切ってあずかれるかというと、そういうような状況じゃなくて、何かとにかくやらなきゃいかんだろうということを考えています。
 具体的に人を出せないんだったら、どうしようかなということなんですけれども、従来とおり、この表を配りましたけれども、人道、そこら辺の支援は当然のことながらやるとして、それにプラスして何かやらなきゃいけないなと思っていると。要は今までG8の中で、文脈でよく言われているのは、アフリカのPKOについては、アフリカ人をトレーニングしてアフリカ人を送るべきだとアメリカなんかはよく言っているわけですが、それに対する協力というのはできないのかな。要するにPKOセンターですね。あるいはAMISのアフリカ待機軍構想ってあるんですが、そこら辺の要員のトレーニングに貢献できないのかというのが一つあると。
 それと、実はAUの軍隊は非常に今士気が落ちているんですが、それは何かというと、各国政府がお金を出しているんですが、給料が渡らないという問題があるんです。その給料の補てんというのができないかなとか、いろいろなことを考えているというような状況で、トレーニングセンターなんか一つ使えるのかなと。あとはスーダンは、残念ながら、国連とハイブリッドになると、予算上、PKO予算で払えますから、AUにもう1回貢献すると、二重払いになってしまうものですから、ちょっと財政当局はもたないなと思ってですね。ソマリアはそれとは別の文脈で考えられないかなと思っています。いずれにせよ、これは、私の頭の中にまだある話で、外務省の組織全体で固まっている話ではありません。
 とにかく何かやらないと、うちの組織としては、TICAD、G8までもたないなという認識を持っていて、マスコミもだんだん関心を高めてきて、板挟みになっているような状況ですが、とにかく何かせねばならんというような感じで、アイデアとしてはそんなことを考えていると。どれだけ受けるのかわかりませんし、ただ、やった場合は、今までやったことがない協力なので、ある程度は評価されるのかなと思っている次第です。あとスーダンの話は特に、全部説明してしまいましたね。そんなところですかね。
 あと中国です。中国の話をすると、中国は、この問題について、石油を一番もらっていて、武器もばらまいているという、こういう話がございますが、いまだに石油についてはそうかもしれませんが、PKOのオペレーションについては、事前にハリウッドを中心にして、スーダンについて、要は中国政府がきちっとスーダン政府を御さない限り、北京オリンピックをボイコットするというようなキャンペーンが実はハリウッドのスターを中心に起こって、アメリカの議会なんかも中国政府に手紙を書いたりなんかして、比較的中国の行いというのは、このごろスーダンについてはいい。すなわち、PKOの受け入れについて相当働きかけたということは確かで、現地に私そのころ行ったんですが、そういうことを言っておりました。ほんとうに中国は真剣だよと。しかも、人も出すと。工兵部隊中心ですけれども。ということで、ある意味ではスーダンを通じて、中国のアフリカでの行動というのを規制する一つの契機というんですかね、そういうものになり得るのではないかということも考えられるのかなという感想を持っております。
 大体以上です。


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