公開フォーラム

タイプ
レポート
プロジェクト

「税と社会保障の一体化の研究」公開研究会

日時
2007/11/19  13:00-15:00 [終了しました]
場所
日本財団ビル2階 大会議室
担当
研究部 南條

 2007年11月19日(月)13:00より日本財団ビル2階会議室にて、「税と社会保障の一体化の研究」公開研究会が、政治家、マスコミ、学者等、約40名を集めて行われた。
 今回のイベントは、同プロジェクトの研究者である森信茂樹東京財団研究員(中央大学法科大学院教授、ジャパンタックスインスティチュート所長)、阿部彩氏(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部第二室長)、鶴光太郎氏(経済産業研究所 上席研究員)、八塩裕之氏(京都産業大学 専任講師)により、これまで進んでいる研究の報告のために開催された。
 また、今回の公開研究会に先駆け、森信研究員は政策提言「税と社会保障の一体化を考える-給付つき税額控除制度の税制における意義と具体的提案-」を東京財団のホームページで公表している。

 当日は、森信研究員による研究の趣旨説明、阿部氏から社会保障制度の現状についての報告、八塩氏から給付つき税額控除の制度説明と海外の事例紹介、鶴氏から経済財政政策における税と社会保障の一体化の必要性と位置づけの考察、最後に森信研究員から具体的提案と今後の検討課題、という順に進行していった。(いずれも配布資料参照)

 まず、森信研究員は、ワーキングプア、母子家庭支援、少子化など諸問題を、税制からのアプローチで、どう解決できるかを考えたことが研究を始める動機であると説明した。さらに、給付つき税額控除制度を日本に導入することの意義を述べ、最近になって経済財政諮問会議など国政の場でも議論の遡上に上がってきたことを話した。

 続いて、阿部氏より、日本の貧困の現状と低所得者の現状を、OECDが2005年に発表したワーキングペーパーの統計を用いて説明があった。阿部氏によれば、日本はOECD諸国の中では、所得再配分機能が弱く、低所得層、特に片親世帯の貧困率が高いという。これは、税の絶対額については別の議論であるが、相対的に見て他国に比べると低所得者への給付が少なく、また低所得者の税負担の割合が他国に比べて高いからであると指摘した。
1119 Ms. Abe「日本の貧困の状況」配布資料[PDF]

 八塩氏は、給付つき税額控除とは、つまり低所得者に対して税の還付を認める制度であり、欧米では、所得再分配の観点から広く普及していると説明した。同制度のメリットとして国民全体に幅広く再分配が可能であり、生活保護のようなケース・ワーカーが必要なくコストが低い点を挙げた一方で、デメリットとして不正給付や税務執行の混乱の可能性があることを指摘した。さらに、海外における同制度の実施状況を説明し、特に対象を限定することで、政策目的に合わせて活用されることを指摘した。
1119 Mr. Yashio 「給付つき税額控除とは何か」配布資料[PDF]

 鶴氏からは、経済財政政策の中で、税社会保障一体化がなぜ必要なのか、どういう位置づけなのか、自身の提示する五原則に沿って説明があった。さらに、最低賃金に関する研究の権威であるニューマーク教授(カリフォルニア大学)が勤労税額控除の方が最低賃金よりも貧困対策としては望ましいと発言していることを引用しながら、給付つき税額控除制度を議論する際には、他の政策とも比較して、どういうメリット・デメリットがあるかをきちんと研究してから、制度導入を考えるべきであると意見があった。
1119 Mr.Tsuru 「なぜ税・社会保障一体改革なのか」配布資料[PDF]

 最後に、森信研究員より、給付つき税額控除制度の具体的提案と今後の検討課題についての説明があった。給付つき税額控除制度のメリットとして、所得配分配度が高くなり、累進度が増すこと、労働インセンティブの向上がある等の点を挙げた。また海外で導入されているEITC(勤労所得税額控除)など具体的な提案がある中で、日本の現状でまず優先すべき案は「子育て税額控除」であると述べた。
 実際の控除額を計算したシミュレーションでは、配偶者控除を減らしその分の財源を子供がいる世帯に税額控除として振り分けることで、税制ニュートラル(全体の税収を変えずに)にて、子供がいる世帯への経済的支援できる方策を提示した。
 税と社会保障を一体化した税制の課題として、対象をどこにあわせるのか、他の政策とどう調整をしていくのかを検討していかなくてはいけない、と述べた。
1119 Mr. Morinobu 「給付付税額控除の意義と課題」配布資料[PDF]

 引き続き、会場に集まった方々との議論が行われ、生活保護の問題、金融資産への課税、徴収の一元化、地方税との関係など、さまざまな点に及んだ。また、課税最低限の者に給付するという実務面を、どうしていくのかについても様々な意見が交わされた。

 会場との議論を受け、鶴氏は、税と社会保障にかかわる様々な問題は、早急な解決が求められている一方で、縦割り的なことや政治的な事情があってなかなか進展していかない。給付つき税額控除制度は特定の制度として議論するのではなく、税と社会保障の全体に関係する課題だとして、国民的な議論になるように、総合的に検討していかなければいけない、と述べた。

 最後に森信研究員は、今回の議論を受けて今後もさらに研究を深めていくとして、会を締めくくった。


問い合わせ先:金子(経済担当)