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レポート
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第13回「パキスタンの今後と日本」

日時
2008/1/18  12:00~14:00 [終了しました]
場所
日本財団ビル2階 大会議室
担当
平沼
2008年1月18日、日本財団ビル2階にて第13回東京財団政策懇談会「パキスタンの今後と日本」(12時00分~14時00分)が開催されました。


本来であれば2008年1月8日にパキスタンの総選挙が行われ、総選挙後のパキスタンの情勢について本懇談会で分析することが一つのテーマでしたが、12月27日に起きたブット元首相の暗殺、それによる選挙の延期などでパキスタンはますます混乱した状況となりました。

本懇談会では、このような状況を踏まえて、佐々木良昭 東京財団主任研究員をモデレーターに、パキスタンの現況と今後の展開などを東京財団にて南西アジアの情勢分析を担当している、益田哲夫 東京財団研究員から報告をいただくと共に、南アジアの情勢に非常に詳しいペマ・ギャルポ桐蔭横浜大学大学院教授にコメントをいただきながら会を開催しました。

はじめに、益田研究員から過去のパキスタンでどのようなことが起きたか、その経緯も交えて報告を頂きました。

<益田研究員報告概要>
・日本はこの60年間平和国家として経済発展をし、技術革新を遂げてきたが、パキスタンは英領からの独立以降、戦争と軍事クーデター、そして民政移管の挫折を繰り返してきた歴史があることを、先ず認識する必要がある。
・パキスタンの情勢を考える上でムシャラフ政権、シャリフ元首相派、そしてブット元首相が率いていたパキスタン人民党といった勢力だけではなく、軍部、北西辺境州や連邦政府直轄部族地域などのイスラム急進派勢力などの動きを注意深く見る必要がある。
・ブット元首相の暗殺によってパキスタン人民党との共同政権構想が崩れ、ムシャラフ大統領の立場は非常に厳しくなっていることが考えられる。
・軍の政権離れの可能性ということが報道にも出ているが、現段階ではその可能性は低い。仮に軍がムシャラフ政権離れをして、イスラム諸勢力の他の急進勢力が、パキスタンを支配することは、軍部が絶対に容認しない可能性が強い。
・インド・パキスタン両国関係について、ムシャラフ大統領が非常事態宣言を発表したときのインド政府の対応は、実に慌てることなく、冷静で非難することもなく、どちらかといえば、ムシャラフ政権に理解を示すようなこれまでにない反応があったことに注目すべきである。
・他の国際社会と同様に、日本にとっても、パキスタンが現在置かれている非常に戦略的な位置付け、例えばアルカイダ掃討作戦に協力するというような意味でパキスタンは重要と考える。パキスタンが穏健かつ近代的なイスラム国家として発展し、民主国家に移行していくために日本が何をすべきであるかを考えることが重要である。

続いて、ペマ・ギャルポ桐蔭横浜大学大学院教授より、パキスタンとインドの関係、日本と南アジア地域について以下のようなコメントがなされました。

<ペマ・ギャルポ桐蔭横浜大学大学院教授のコメント概要>
・インドはムシャラフ大統領が非常事態宣言を発表したときに、実に落ち着いた冷静な反応をしたことからわかるように、インドはムシャラフ政権に両国関係、特に国境の治安維持という点に期待をしていると考えられる。
・マハトマ・ガンディーの暗殺から始まって、インド、スリランカ、パキスタンなど国のリーダーとなった人は誰かしら家族が殺されたが故にその地位についたという経緯がある。ある意味で暗殺は、南アジアの政治文化になっているということを理解すべきである。
・南アジアの、特にパキスタン、アフガニスタンなどは、17世紀と21世紀が共存しているということを理解すべきである。この地域で物事を決めることは、日本が現在常識的に考えているような、ある一定の法律があって、その法律に沿って物事が進むということよりも、伝統・宗教、あるいは場合によっては部族・種族の長い間の確執までが色々と影響しているということである。
・様々なインドの外交官、メディア関係者などに聞いたところ、彼らが心配していることは、これからパキスタンにおいて、いわゆる国家的指導者(ナショナルリーダー)というか、国民の多くの人たちを納得させることができるような指導者がおそらく現れないのではないかということであった。
・日本と南アジアの関係について、日本は南アジア全体を見る必要がある。大事なことはインドが発展するにしても、あるいはパキスタンがこれから次のBRICsのようになるにしても、この地域が今後どれだけ安定していくかということにある。この地域においては依然として英国がそれなりの影響力を有し、日本は英国をはじめ関係国と協力しながら、平和構築に協力することが必要である。当然ながらスリランカにおいても同じだし、パキスタンにおいても、あるいはインドの中における国境問題の中においても同じことで、日本が今後南アジア全体、パキスタンのみならず、南アジアと付き合うときに地域全体をどのように安定させるかということを考えることが大切である。

当日は、関係各省庁、マスコミ、専門家など約100名の来場があり、会場からは、今日のパキスタン情勢の中でインドと中国の関係、北西辺境州でのテロ組織の活動、グダワール港湾の開発状況について、など活発な質疑応答がなされました。

パキスタンを含め、南西アジアの情勢については引き続き、東京財団ユーラシア情報ネットワークのホームページにて益田研究員が情報を発信してまいりますので是非ご覧ください。