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レポート
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第22回「中国の国際戦略」

日時
2009/3/24  18:30~20:00 [終了しました]
場所
日本財団ビル2階 第1~4会議室

第22回東京財団フォーラム「中国の国際戦略」

 

【日時】 3月24日(火)18:30~20:00
【会場】 日本財団ビル2階 第1~4会議室
【スピーカー】 王緝思(東京財団客員研究員/北京大学国際関係学院院長)
【司会】関山健(東京財団研究員)



今年は中国が改革開放政策を始めて30周年の節目の年。この間、中国は目覚ましい発展を遂げ、名目GDPの規模で言えば、07年には世界第3位の経済大国となった。数年内には日本を抜くことは間違いがない。一方、政治面でも、中国は国連安全保障理事会の常任理事国として、国際政治に大きな影響力を有する。米国にとっても、オバマ政権の重要課題であるイラク・アフガン問題、金融経済問題、気候変動問題のいずれも中国の協力が必須であるのが現状だ。その中国が、今後の国際社会においてどういう道を進むのか、一衣帯水の日本としては関心を持たざるを得ない。

そうした中国の国際戦略について、去る3月24日、現在東京財団客員研究員として日本滞在中の王緝思・北京大学国際関係学院院長に語ってもらった。王緝思・客員研究員は、国内きっての国際政治学者として中国の外交政策にも強い影響力を持つ外交ブレーンと言われており、中国の国際戦略を語ってもらうには、これ以上ない論客である。

以下、王緝思・客員研究員の講演内容の概要を紹介したい。


【王緝思・客員研究員の講演内容】

国際戦略を考える際の要素は、(1)守るべき国家利益、(2)その国家利益に対する外部リスク、(3)その外部リスクに対する対応策の3点である。

まず、中国にとって守るべき国家利益とは、(1)主権独立、(2)安全保障、(3)経済発展の3点である。論者によっては、それぞれの順位付けをする向きもあるが、私(王緝思。以下同じ。)は、この3点すべてが同列に最重要の国家利益であると考えている。

次に、これら国家利益を脅かしうるリスクは何か。中国が最も懸念するリスクは国内の安定なのであるが、私は国際政治学者であり、今日のテーマは国際戦略であるから、ここでは国内リスクについて論じない。

また、国家利益に対する外部リスクという点では、アメリカとの対立を指摘する向きも少なくない。しかし、私としては、外部リスクは特定の国家ではなく、具体的な問題(例:世界的な経済不安、エネルギー危機、環境破壊など)から生じるものだと考える。

では、そうした外部リスクに対応するために、中国はどういう外交を展開すべきか。中国外交にとって最も重要な国はどこか。この点、米国が最も重要な外交相手であることは間違いない。では、二番目に重要な国はどこだろうか。ロシアやEUを二番目に挙げる論者もあるが、私は、日本こそ中国にとって二番目に重要な国だと考えている。

なぜ日本が米国に次いで重要なのか。端的に言えば、日本が中国にとって米国に次いで重要な(単体の)経済パートナー国だからである。日本は中国とイデオロギーこそ違うが、欧米ほど人権問題など中国にとって敏感な問題を強調したりはしない。また、日本は中国の国家利益のすべてに多かれ少なかれ関わっており、東シナ海や台湾周辺で摩擦はあるものの、どれも中国の国家利益を脅かすほどのリスクではない。

中国の国際戦略においては、まず、こうした大国との協力関係構築が重要である。次に、台湾、チベット、新疆などを含めた国家の統一が重要であり、そのためにも、周辺地域の安定が重要である。中国は、以前より周辺地域との多国間協力を重視しており、中央アジアや東南アジアの隣国の安定に対しても、中国の経済力をもって貢献してきている。

中国が今後どのような国際レジームを目指すのかも皆様の関心事だろう。この点、私は、既存の国際レジームは中国の国家利益にとって基本的には有利であると考えている。しかし、一部には不利な部分もあり、そこは変えていかねばなるまい。

中国にとって、守るべき国家利益としての安全保障は、かつての軍事上の安全から、経済安全保障、エネルギー安全保障、食糧安全保障など、その内容が多様化している。経済発展についても、今後は環境や社会の調和を重視した「科学的発展」を目指さねばならない。

こうした諸点において、日本には中国が学ぶべき点が数多く存在する。かつて中国は日本の高度成長に学んだ。いまや、成長スピードでは中国が日本を上回るようになったが、例えば、農業効率、環境保護、省エネ・新エネ、ガバナンス、公衆衛生、社会保障など多くの点で日本は世界最先端の技術やノウハウを有しており、米国以上に学ぶべき点がある。

中国は数年内に日本のGDPを抜くだろう。そうすれば、日本の皆様としては快くないかもしれない。しかし、中国としては今後も日本と協力をしていかなければならず、そのためには両国政府間の関係強化はもとより、民間主導の協力を今以上にもっともっと増えていくことを希望する。(了)


【王緝思(Wang Jisi)氏の略歴】
1978年北京大学国際政治学部入学、83年同大学修士号取得後、講師、准教授、副学部長を歴任。91年に中国社会科学院アメリカ研究所副所長へ転じ、93年より2005年まで同所長。05年3月より現職。01年5月より中国共産党中央党校国際戦略研究所所長を兼任。その他、中国国際関係学会副会長、中華アメリカ学会会長、解放軍国防大学客員教授など。英国オックスフォード大学(1982-83)、米国UCバークレー大学(1984-85)、米国ミシガン大学(1990-91)に客員研究員として留学。研究分野は、アメリカ外交、米中関係、国際政治理論。