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レポート

第7回(最終回とりまとめ)「『税・社会保障制度の抜本改革』を考える」討論会

日時
2011/5/31  18:00-20:00 [終了しました]
場所
日本財団ビル2F 大会議室
担当
亀井

第7回 「税・社会保障制度の抜本改革」を考える討論会 

  • 【日時】 2011年5月31日(火)18:00~20:15
  • 【会場】 日本財団ビル2階 会議室(港区赤坂1-2-2)
  • 【共催】 東京財団、(株)PHP研究所、構想日本、みずほ総合研究所?、?日本総合研究所
  • 【議論に参加した国会議員】(50音順、敬称略)
    阿部俊子(衆)、風間直樹(参)、河野太郎(衆)、遠山清彦(衆)、柴山昌彦(衆)、橋本 勉(衆)、丸川珠代(参)、柚木道義(衆)
  • 【これまでの発表者(フロア参加)】
    西沢和彦(日本総合研究所 主任研究員)、堀江奈保子(みずほ総合研究所 上席主任研究員)
  • 【コーディネーター】 亀井善太郎(東京財団研究員・政策プロデューサー)

討論会の概要

第7回の討論会は、これまでの議論の総括として、税と社会保障制度の抜本改革に関する「そもそもの論点」について、国会議員それぞれの意見を聞きました。

現在、政府の集中検討会議で進められている議論は、高齢者3経費(年金・医療・介護)の不足分に充当する消費税の引き上げが先行して明らかになるなど、そもそも、なぜ、税と社会保障制度の抜本改革に取り組まねばならないのかが国民に対して明らかになっていません。

本日の議論では、これまでの議論に参加し、有識者や他の議員との討論を通じて本問題を考えてきた議員の皆さんが、以下にあげる「そもそもの論点」に対する率直な意見表明を通じて、何が合意できそうなのか、何が対立しているのかを国民の目に明らかにしていくことが目的です。

国会議員の参加は8名となり(出席議員の個別名は上記参照)、コーディネーターから示された論点について、活発な議論が展開されました。また、後半では、第1回から第6回に発表者として登壇した有識者および会場の傍聴者との意見交換も行われました。

■なぜ、税と社会保障制度の抜本改革に取り組まねばならないのか

まず、「なぜ、税と社会保障制度の抜本改革に取り組まねばならないのか?」、「そもそも、税と社会保障制度の抜本改革とは何か? これによって、何を解決しようとしているのか?」といった抜本改革の目的や位置付けに対する認識について尋ねました。これは今の政策議論が”そもそものところ”があいまいなまま、いつの間にか目的が曖昧となり、個別の実施可能な施策論に終始しているように見えるからです。

出席した議員からは、「人口構造がピラミッド型から釣鐘型・逆ピラミッド型に変化している中で制度を支える側の負担が増大することが見込まれるために世代間のバランスを見直すこと」、「核家族化・都市化が進む現状の下で機能していないセーフティネットの制度そのものを見直すこと」、「財政全体へのインパクトが大きい社会保障の制度そのものを見直すことを通じて財政改革を図ること」、「社会保障制度と一括りで言いながら制度間のタテ割りやツギハギだらけの制度を今後の環境変化を見通した上で理念も含め全体の整合性を取っていくこと」といった意見が出されました。

上述の質問では、いまひとつ、税と社会保障制度の抜本改革の目的が明らかにならないように感じたので、コーディネーターから「いまの制度で誰が困るのか(現在と未来)」と別の形で質問しました。議員それぞれが改革の目的をどう考えているのかをより明らかにするのが狙いです。

議員からは、「若い世代」、「いまのセーフティネットから漏れている人」、「医療であれば病気の人、介護であれば要介護の人・・・」、「日本全体が困る(制度に国民全体が不信・不安を感じることで不公平を感じ、未来に希望が見出せないため)」との答えでした。この答えを論点ベースで言い換えると、若い世代であれば「世代間格差」であり「財政再建」、日本全体と答えた場合は「信頼されない制度の見直し」と言えるのではないでしょうか。

■数ある課題の中で優先すべきものは何か

あらゆるものをやるという政治は何もやらないのと結果的には同じです。東日本大震災の影響も含め、税と社会保障制度の抜本改革に含まれる数ある政策分野のうち、「まず何から取り組むべきか」、議員が考える優先順位について尋ねました。

議員からは、「就労を確保するための雇用政策、とくに若年者のための雇用促進策、雇用の機会を平等にしていくための障害の排除」、「生涯をかけて納め受け取るため、制度改革に時間がかかる年金制度改革」、「震災復旧・復興を考えるならば、より生命に関わる医療・介護政策の充実」といった意見が出されました。

以上のように、個々の具体的な政策は別にした政策の枠組みで考えれば、「セーフティネット政策の見直しを含む雇用政策」と「年金制度の抜本改革」が優先順位の高いテーマとして挙げられました。

■高齢者3経費の不足分を消費税率アップで補うとの政府での議論先行をどう考えるか

政府における検討は、そのプロセスが十分に開示されていないとの問題が一連の討論会でも度々指摘されていますが、全体の改革案に先行して、消費税率のアップが出てきました。この消費税率のアップは、本改革案に織り込まれた社会保障の機能強化に伴うものとの説明ですが、実際のところは、いわゆる高齢者3経費(基礎年金、老人医療、介護)に充当するというのがほとんどです。

こうした議論の経過については、野党議員ばかりでなく、与党議員からも、「まずは安心できる将来像を示してからがスジ」、「制度に問題があるのだから、まずは制度の問題を解決してから、財源の議論がされるべき」、「政権交代したのにも関わらず、自公政権時代と同じやり方は残念」といった違和感が表明されました。
加えて、消費税率のアップ分については、政府案ではすべて社会保障に充てるとしていますが、国と地方の負担割合が明らかでないことも問題であるとの指摘もありました。

■日本のセーフティネットは大丈夫か

本来、雇用、保険、地域等々、何層もあるべきセーフティネットですが、これが機能せず、最後は刑務所に至るとの指摘もあります。こうした日本のセーフティネットの現状について、議員の認識を聞きました。

議員からは、現行のセーフティネットが不十分との認識を共有した上で、「北欧諸国や英国のように、例えば若年層のようなセーフティネットのサービスの利益を享受する側が、そのサービスを使ってどうするかということを決められるということが大事(政府が作りこみすぎる上から目線は改めるべき)」、「生活保護と年金の給付の整合性をとるべき、そのためには番号制度が不可欠」、「働くインセンティブを主体にしたセーフティネットとすべき(居心地のよりハンモック型ではなく)」、「求職者支援制度のような制度、NPO等の担い手の充実をはじめとするセーフティネットの網を細かくすることを通じての改善が不可欠」、「必ずしも、高齢者=弱者であるとの認識を改め、若い世代への投資を充実しなければならない」、「男性が外で働いて、女性は家庭にいるという想定している社会像が画一的ではないか、それがセーフティネット政策にも反映している」との指摘がありました。加えて、これらの指摘を実現するためにはベースのインフラとなる番号制度、そして、給付付き税額控除といった政策の必要性についても議論しました。

■世代間格差は縮小・解消できるのか

セーフティネットに関する質問でも議論されたことですが、基本的な構造としても、資産を持っているのは高齢者であり、加えて、社会保障制度で便益を得るのも高齢者であることから、その見直しについて、議員の意見を求めました。

議員からは、世代間格差の縮小に取り組む必要性については問題意識を共有した上で、「人口構造から考えればそもそもから解消することは難しいとの認識が示された上で、高齢者が保有した資産に着目した税制が必要」、「従来の賦課方式ではなく、積立方式への移行が検討されるべき」、「とくに世代間格差の原因となっている年金制度の見直しが不可欠」といった意見が出されました。

■社会保障の「効率化」はできるのか

世代間格差の縮小や財政健全化を考えれば不可避なのが社会保障の「効率化」です。政府案が「機能強化」を先行している中、どういう形で「効率化」に取り組むべきかを尋ねました。

議員からは、「給付の抑制に着手しなければ効率化は実現できない」、「タテ割りの制度を一元化した上で番号制度の導入、システムのクラウド化による効率的なシステム構築(但し、現政権でも着手できていない)」、「外来患者の負担増等、気軽に受診しないようにするための診察料の設定」、「医療イノベーションの活用」、「利用者個人の負担を上げるのではなく、医療機関サイドからの効率化も重要」といった「効率化」に前向きな意見が出ました。

その一方で、「給付の抑制となれば、高齢者の理解を得なければならないが、彼らが若い世代よりも恵まれているとの感覚が無いので難しい、次の選挙のことを考えると言えない」との率直な意見も出されました。

こうした意見については、日本総研の西沢氏より「だからこそ、超党派で取り組むべき」、「加えて、政府にばかり任せるのではなく、民間を活用し、政府の関与をミニマムにすることが重要」との意見がありました。

■政権交代したのに議論の枠組みが変わらないのはなぜか(現在の政府の検討状況への評価)

政権交代前に民主党は自公政権が謳った「100年安心」プランを「ウソつき」と厳しく批判してきました。にも関わらず、民主党は政権を担当した後はこの「ウソ」に乗っかる形になりました。なぜ、こういうことになってしまったのでしょうか。

与党議員からは「与謝野氏を担当大臣に起用したことが大きい」、「起用当時は与謝野氏を大臣に起用すれば、野党との協議が進むとの認識が菅総理にあったがじっさいは違った」といった意見が出されました。加えて、全体の議論を通じては、政府での検討が先行し、与党との調整が進んでいないことが窺われました。

■どうすれば超党派で合意形成できるのか(政府・政党間の合意形成のあり方)

肝心の方法論については、まず、「政府と政党、政党間の合意形成プロセスについて、合意がないまま、議論が進んでしまっていることが問題」との参加議員からの指摘を全員で共有した上で、「シミュレーションモデルの客観性や公表」については、「国民に将来シミュレーションを見せること」はもとより、「政策当局と将来試算担当部局が分離独立していることが必要」との提案がありました。

また、合意できる分野については、「年金制度」、「就労支援を中心とするセーフティネット」、「番号制度の構築」に関する意見が多かったですが、一部議員からは「当面の高齢者3経費の足らず米の手当」、「全般的に社会保障制度の議論は政争から切り離すべき」、「総選挙で各党が掲げ国民に信を問うべき」といった意見が出されました。

■今後の政策議論に向けて

改めて、14時間以上におよぶ議論から見えてきたことについては別のレポートで整理しますが、この2時間の議論だけでも、合意すべきポイントは見えてきています。また、これが進まない理由も明らかです。

民間の立場から、政治の場での議論が進むことを考え、他の政策シンクタンクと共同で開催してきた公開討論会です。参加した議員からは、かつての国会内に設置された超党派協議会の失敗の経験を踏まえ、「政党色のない、政治色のない、しかし、それにふさわしい民間の者を議長にして、そして、そこに与野党の国会議員が集まって、きちんとここで合意形成をするべき」と党利党略にとらわれがちな政治家だけに任せるのではなく、民間に設置された本討論会のような枠組みが不可欠であるとの意見がありました。このように、私たちの取組みを活かしていくのは、議員自身の課題です。私たちも働きかけを続けていくことはもちろんですが、与野党を問わず政治家が合意に向けた一歩を踏み出すことが求められています。

東京財団 研究員・政策プロデューサー
亀井善太郎




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■当日の資料等
   *社会保険制度一覧(あべ俊子事務所作成)は こちら