タイプ
レポート
日付
2012/8/29

セッション2(13:30-15:30) 日米中関係の将来(1)

モデレータ:渡部恒雄 東京財団上席研究員



1. 王緝思 北京大学国際関係学院院長



 渡部先生のご紹介、どうもありがとうございます。そして中国社会科学院の日本研究所、東京財団、日本の国際交流基金に感謝したいと思います。個人的には長きにわたって、この3つの組織と関わりを持っております。中国社会科学院日本研究所には、非常に敬意を持っております。蒋立峰所長、李所長などの同僚の皆様からも、いろいろと勉強させて頂いております。

 先ほど渡部先生もおっしゃられたように、私は短期間ではございますが、訪問学者として日本にいたことがあります。これも国際交流基金のアレンジでございます。ですので、こういったご縁もありまして、この会議に参加できまして、大変光栄に存じております。
 日米中3カ国の関係と言いますと、個人的には日本とアメリカの学者と一緒に2冊の本を書きました。また2007年に長い論文も書いた経験がございます。振り返ってみますと、日米中3カ国の基本的な枠組は、冷戦が終わってからほとんど安定した状態で保たれてきました。その中でももっとも活躍したファクターの1つは中国であります。中国の実力の向上です。最近の日米中3カ国の関係についての論文では、1つの仮説を掲げました。つまり私の論文は2007年に発表したものでございますが、当時の予測は、2016年には中国のGDPの総額は日本を超えるという予測がございました。あまり適格なものではないと、いまの事実から見ますと、それがわかっていますけれども、個人的な経験を振り返ってみますと、中国の発展のスピードはすでに人々の予想を超えているわけです。

 また日本の発展の様子を見ましても、われわれの予想外のものでございます。経済は低迷していますが、しかし政治的にこれだけ困難を抱える状況は予想外のことです。政治指導者の頻繁なる交代、長期的な戦略的視野の欠如、あるいは計画がないこと、さらには今回の自然災害の影響もありまして、日本の国民は大きなダメージを受けています。未来を展望しますと、やはりこういった変化をまず見なければなりません。

 中国のGDPはすでに日本を追い抜き、第2位となっていますが、国際的な政治面の影響から見ましても、数字的な裏付けはございませんけれども、すでに日本を上回っているとは言えるでしょう。ですので、3カ国の関係は中国に傾いているというような変化を見せています。今後10年間、アメリカはもちろん唯一のスーパー大国であり、またアジア太平洋地域でももっとも大きな影響力を持っている国という事実に変わりはありません。中国はすでにアジア太平洋地域において、もっとも実力のある国であり、また途上国の中でももっとも実力のある国であります。日本は3カ国の力の構造から見ますと、これまでとは違いまして、優位でなくなったわけです。

 こうった力の構造の変化の下で、政治的な要素、あるいはイデオロギー、あるいは制度的な要素を考えなくても、ただ地政学の角度から見ても、日本はこれからますますアメリカとの同盟関係を強化していくでしょう。しかし中国は以前として自らの力で安全を守り、国防を強化する方向にあります。中国は日米同盟に対抗するような同盟関係をつくることはない。そしてその可能性もないと思います。

 続きましては、米中、日中、そして日米の3つの場合の関係について見てみたいと思います。中国とアメリカの経済の相互依存度は、これからも増していきます。さまざまな交流、人的交流も含めて、拡大する傾向にあります。よく耳に入りますのは、2つのG2というような状況は現れないでしょう。しかし米中関係は世界経済、さらには政治の立場においては、ますますその地位が向上するでしょう。両国の指導者から見ても、非常に相手国を重要視しております。中国はアメリカを重要視しており、もちろんアメリカも中国を重要視しております。また中国の指導層では、できるだけ両国関係を改善しようと努めているわけです。胡錦濤国家主席が今年の1月、アメリカを成功裏に訪問し、そして今回のバイデン副大統領が成功裏に中国を訪問したということからも見て取れるでしょう。そして実質的に、アメリカ経済の安定とその繁栄は中国にとって有利なことです。もちろん中国の経済の安定とその実力の増強も、アメリカにとって有利なことです。世界の利益関係からしても、米中間の利益の関係が非常に深まっております。

 しかし政治的リーダー、あるいは国民感情から見ますと、戦略的互恵関係、相互信頼の関係はまだ欠如しております。未来を見ますと、さまざまな要因もありまして、民間あるいは政治的な対立がますます深刻になってくるのではないかと思います。そして両国の利益の要望も違ってきます。政治部門も、必ずしも協調が取れたとは言えません。これらの要素もありまして、政府指導者の戦略的意志決定、あるいは2国間の政治関係を左右しております。

 たとえば、間もなく出て来る、アメリカが台湾に武器を販売する行為。これについては、もちろん中国は強硬姿勢をとると思います。民間の反応、あるいは世論の反応は、政府を上回って強硬なものになるのではないかと思います。つまり政治、あるいは現実的なクライシスが出て来るとき、米中間の敵対イメージが浮上してきます。多くの中国の国民から見ますと、中国はいまやスピーディーに成長しています。そしてアメリカは衰えつつあります。ですので、アメリカを恐れたり、譲歩したりする必要はありません。ですので、国には強硬な姿勢をとってほしいわけです。力を蓄えるというようなこれまでの議論は、むしろ疑問視されているわけです。

 日中間も同様な声が出ています。しかし日中間の摩擦は、米中よりも小さいわけです。日中間の摩擦は、他国間よりもやはりバイの関係に集中しております。米中関係と違いまして、日本は中国の全体の外交戦略における地位は低下しつつあります。日本を軽視し、あるいは日本の国民感情を軽視するような傾向さえ出ております。このような傾向は予想できないリスクを招くでしょう。日中間にハプニングが発生し、政治的なリスク、クライシスが発生しますと、たとえば去年の秋の釣魚島に発生した漁船の衝突事件が発生する可能性もまだ存在しております。

 日本においては、懸念すべきものは、最高指導者の死やその正確な判断を下す能力は、やはり疑われております。河野洋平先生も、午前中、挨拶の中で触れられましたように、日本の指導層は変わりつつあるというふうにおっしゃられましたが、非常にうれしいことでありまして、ぜひその方向に発展して頂きたいと期待しております。

 米中間における思想の交流と比べますと、日中間における指導層の交流も、必ずしも多いわけではありません。その深さ、広さは、米中と比べても少ないわけです。日米関係については、あまり知りませんが、やはり日米関係は安定した状況で発展していくでしょう。アメリカは引き続き、日米関係はアメリカにとってアジア太平洋地域における基盤であると言い続けていくでしょう。

 しかし、日本のアメリカの世界における戦略的地位は、あるいはアジア太平洋地域における地位は、やはり今後見直されるのではないかと思います。日本の経済の低迷、あるいは政治的な不安定要素の存在もありまして、アメリカは今後他の国に焦点を当てていくのではないかと思われます。たとえばインド、オーストラリア、インドネシア、ベトナムなどのようなASEAN諸国に傾いていくのではないでしょうか。そうすると、日本にとっては孤独感、あるいは落胆するかもしれません。そうするとこれは日米中3カ国の関係にとっては良くないです。

 アメリカ、そして日本にとって、中国との経済関係はますます重要になってきております。しかし、おもしろいことに、日米両国は政治と軍事における懸念がますます強化しております。つまり一方で経済面では相互依存度が強化しておりますけれども、一方で軍事、あるいは政治面における憂慮も増えつつあります。もちろん韓国、あるいはASEANとの間でも同じような事情が発生しております。つまりこれらの国は、経済面においては中国に依存しておりますけれども、安全面ではアメリカをよりどころにしております。これは今後10年間の非常に著しい傾向になると思います。

 今後、日米中3カ国の基本的な枠組は、やはり日米関係がもっとも密接であり、米中関係はわりと距離をおいており、日中関係は米中関係よりも、もっと距離が遠いという状況です。このような3カ国関係は、バランスの取れたものとは言えません。理論的には、日米中3カ国の関係をよりバランスの取れたものにするためには、当面の急務としては、さらに緊密な日中関係を構築することです。中国が日本から勉強することが多々あるということは明らかな事実です。また日本にとっては、中国は2番目のアメリカになる可能性はないという認識を持ってもらいたいわけです。

 日米中3カ国の関係を、わりと広い世界的な範囲の中で考察しますと、もっと複雑な考え方も出てきます。今後、向こう10年間の世界政治の中で対抗関係は、中国、日本、ヨーロッパ、アメリカ、ロシア、インド、ブラジルなど、これらの国の相互関係は、基本的に安定して発展していくでしょう。大きな紛争が発生する現実的な可能性はありません。もっとも複雑、不安定要素がもっとも多い米中関係も、基本的には安定した枠組で保たれていくと思われております。世界の安定と平和と繁栄にとってもっとも大きなリスクは、今後の世界の安定、そして日米中3カ国の安定にとってのもっとも大きなリスクは、一連の世界の経済社会発展のアンバランスであると私は思います。少なくとも5つのアンバランスが考えられます。

 1つは経済発展のアンバランスです。金融危機からも見て取れます。もう1つは人口発展のアンバランスです。日本の高齢化は非常に深刻であって、人口が既に減少傾向にありますが、移民政策もこれから調整しなければならない段階にさしかかっております。ヨーロッパも高齢化に直面しております。中国がすでに高齢化の問題が出ております。これに比べまして、中東、イスラム諸国、インドなどの国では、人口が大規模に成長しております。若い人の失業率が高く、人口が外国に流れて行くわけです。もう1つのアンバランスは、所得配分の不均衡です。貧富の差はどこの国でもますます深刻になっているわけです。また世界の資源とエネルギーの需給のアンバランスも注目しなければなりません。そして生態系環境の不均衡も大きな問題です。

 この5つのアンバランスがお互いに関係し、作用し合いまして、今後の世界にとって大きな問題をもたらしています。また民族主義の問題もこの中に関わり合い、社会的な矛盾もますます著しくなり、一部の国の中では内戦が発生し、一部の地域では域内紛争のリスクも存在するわけです。

 こういった世界環境の中で、日米中3カ国の共通責任がますます大きくなってきております。より合理的、有効な経済政治関係の構築の中で役割を果たし、緊密な利益共同体を構築しなければなりません。この利益共同体の急務は、北朝鮮の核問題、そして東アジア、北東アジアの安全問題などがあります。また日米中3カ国の国内における政治体制の調整および政治問題ですね。たとえば経済の復興、雇用創出、対外貿易の均衡、通貨政策の調整、社会保障、さらには新たな経済成長のポイントをつくり出すこと、さらには気候変動に対応することなど、これはいずれも3カ国が共同して解決しなければならない課題であると思います。

 最後には、日米中3カ国の間では、戦略的対話を強化しなければならないと私は思います。いくたびのセカンドトラック、あるいは民間レベルの対話に参加した経験がございます。このような対話の持続性を強化しなければならないと思います。そして政府レベルに対する影響を強化しなければならないと思います。最高レベルにおいて、日米中3カ国の対話メカニズムを構築することは、やはり難しいことだと思います。既に多くのサミット、あるいは地域レベルの会議、フォーラムなどが存在しているので、日米中3カ国のこのような対話メカニズムをさらに加えると、やはり難しいだろうと思いますが、しかしいまのレベル、つまり学者、あるいは民間レベルからスタートすれば、大きな効果が期待できるのではないかと私は思います。
 以上です。ありがとうございました。


2. アラン・ロンバーグ ヘンリー・L・スティムソンセンター特別上席研究員、東アジアプログラムディレクター



 ここで多くの旧友に再会できて、大変うれしく存じております。
 ここで3つの重要な課題について議論しますが、お互いに関連しあっている課題だと思います。まずは、やはり協力的な中米関係の構築。それから共同戦略利益における日中関係。それからその3カ国の関係であります。これらの課題が次のセッションの理論とも、実は非常に絡んでおりまして、いくぶん重なる部分もあるかと思います。私の研究は、実は日中関係の専門ではございません。今回のテーマは日中米三カ国関係に関するものでありますので、したがって多少日中関係にも触れたいと思います。

 もう1つのチャレンジが、実は今回のシンポジウムのスポンサーから関係改善、協力促進というような立場から発言してほしいというご依頼がありました。多くの方々の発言、先ほどの王院長も含めて、実はお互いの協力の重要性を謳っていますので、これが一種のコンセンサスが得られたと思います。私がこの協力に関する研究も、実はたくさんやってきました。中米にしても、日米にしても、いろいろと研究をしています。この研究から私が得られた心得としては、やはり実務的な協力が必要だし、もっと前向きにやるべきだと思います。

 当然ながら、中にはいろいろと消極的な要素も存在していると思います。したがって本日のお話の中で、こういうようなマイナス要因にはどう向かうべきか。それからより協力的な関係はどうすればいいかということについて、ちょっとお話ししたいと思います。研究者の皆さんも、恐らく同じかなと思います。こういう協力を非常に大切だと。ただし、お互いに不信感というのも、実は客観的に存在しています。この不信感には歴史的な要因もあるかと思います。私は最初に、1973年に初めて来ました。そのとき中国の政府側にしても、国民からも、日本の対中国の侵略の歴史、また日本の軍国主義の復活などに対しては非常に懸念がありました。

 アメリカで華僑の方とおつき合いするときも、実は日本に対する不信感というものもたくさんありました。いまでも恐らくその懸念は払拭されていないと思います。日中双方の政府レベルにしても、民間レベルにしても、日本の過去の戦争時代の日本軍国主義に対する不信、懸念がいまだに存在しているかと思います。

 確かにそういう歴史からきちんとそれを研究する必要がありますが、ただし、こういうようなコンプレックス、先ほど日中の歴史に対する見方などの、あれはA級戦犯などに対する見方、考え方などが先ほども触れられたかと思います。教科書の問題で、どうしてもこの歴史がまだいまだにクリアになっていないということです。当然、日本もいまの中国に対する不信感も非常に根強いものがあります。たとえば非常に傲慢であるとか。日中間では非常に戦略的な協力の重要性は、確かに多く存在しています。ただし、ゼロサム的なものもあります。

 最近、中国の新華社通信でこういうような報道がありました。釣魚島、尖閣諸島の共同開発をする用意があります。ただし、日本政府が釣魚島、尖閣諸島に対する中国の主権を認めるということを前提にしています。中国の立場はよくわかりますが、ただし私にとってなかなか理解しづらいのが、中国のこういうオフィシャルな態度が新華社で発表されていることです。またある方が、今後のアジア太平洋地域において、日本がリーダーシップを執りたいというようなことも言っています。私から見ますと、お互いにそういう態度をとっていれば、本当にフレンドリーに協力できるとは思わないです。日中米の間で同じように協力的な姿勢をとらないと、当然ながら、これがうまく協力できないわけです。

 最近、バイデン副大統領が中国を訪問し、胡錦涛国家主席とも会談をしました。それが去年、オバマ大統領訪中の代わりに、胡錦涛国家主席も訪米をするということです。中米の間でもお互いに不信感も、当然ながらあります。最近では中米間で、競争が非常に激化していまして、お互いに悪口を言っているケースもあります。過去ではアメリカがソ連と、実は当時アメリカの専門家が、別にソ連の制度については、必ずしもいいものではないというふうに指摘していますし、同じように中国の制度に対しても、当然そういうような考えを持っているわけです。

 ただし、対中国の好感度が、ソビエトに比べるとはるかにいいものであります。にもかかわらず私が思うには、いま多くのアメリカ人がイデオロギー、価値観の立場からアメリカの姿勢を調整すべきだというような見方も、いま次第に出てきています。中国が台頭している過程において、その姿勢がますます強硬になってきています。昔みたいに簡単に妥協をしなくなりました。過去では、中国はよく妥協したわけですが。ただし最近は中国はかなり変わって来ています。

 台湾問題が従来から日中米関係の焦点問題であります。過去3年間において、台湾海峡の問題はだいぶ改善をしています。にもかかわらず、やはりアメリカにとってみれば、台湾問題というのは対中の1つの弾であります。中国を牽制する武器でもあります。ただし、中国とアメリカがいまの世界の舞台において、この競争がますます今後は激化してくると思います。昔は革命の中国で、中国を牽制するいろいろな手段がありました。これがアメリカの対中政策の基本でもありました。ただし、いまアメリカの対中政策は、平和、安定の維持ということに変わって来ていると思います。台湾に対する現状の維持が強調されています。多くの中国人を説得するのに、なかなか簡単ではないと思いますが、ただしこれはアメリカの国策であります。私も長年の研究の段階で、いろいろなアメリカ政府機関の人間、あるいはシンクタンクの方とおつき合いをしていますが、たとえばこれから台湾の武器輸出の新しいラウンドになるわけですが、これも注目する必要あるかと思います。

 北京の立場から見ますと、アメリカに対しては、対台湾の武器輸出の問題については、恐らく言い続けるだろうと思います。来年1月に台湾の大統領選挙がありますが、結果がどうなるか。恐らくこれが今後の台湾の政策に大きな影響を与えると思います。アメリカのこの問題に対する態度は、実は陳水扁政権のときでもすでに見られたと思います。その多くの点については、仮に台湾問題が解決できたとしても、中国のアメリカに対する敵意、またアメリカの育成政策は恐らくそう変わらないと思います。

 アメリカから見ますと、中国はますます強硬になってきているわけです。過去数年間において、米中関係のぎくしゃくもありました。中国にしても、アメリカにしても、やはりより建設的な関係、前向きな関係をつくるべきだと考えています。お互いの指導者の相互首脳訪問、またそのマルチの協力の枠組なども実はございます。したがって双方にとってより冷静に共通の利益を考えながら協力をして、問題を解決していくべきだと思います。

 先ほども触れたように、実は多くの問題は、お互いの国の国益の見方の違い、あるいはわれわれの判断の違いなどがあるかと思います。朝鮮問題に対する米中の協力が、実は1つの成功も出るであります。2009年の核実験の後に、米中がますます協力関係を深めています。オバマと胡錦濤が会見するときに、実はオバマが言ったのが、北朝鮮は、当然ながら安全の問題があります。ただ中国からすると、朝鮮半島の不安定が中国にとっても非常に憂慮すべきことだと思います。したがって中国の対朝鮮半島問題の政策は、われわれなりに一定の理解はできますよと。ただし、中国にとってみれば、もっと正しい判断をしてほしい。北朝鮮の問題が、中国の利益とアメリカの利益は確かに違いますので。にもかかわらず、やはりお互いのその問題解決の協力はしたいという気持ちであります。なるべく協議の場をつくりたい。

 そこでワシントンあるいは北京の考え、それはそれぞれお互いに無視することはできない。平壌との関係作りに中国が実は大きな役割を果たせると。過去にもそうでありました。北朝鮮にいろいろサポートし、また北朝鮮がより良い方向に向かっていくことというのを中国はサポートができるわけです。

 東アジアについてですが、数年前にASEAN+3の体制ができました。中国、アメリカなどに対しても、一応オープンにしています。中国はその最初から自ら、ある程度意識を持って、ASEA+3の会議に積極的に参加してきました。ASEANの枠組というのは非常に重要なものでありますので、中国の政府代表者がそういうふうに言っていました。アメリカのASEANの意志決定を排除したいと。アメリカは過去には、ASEANのサミットには参加していませんでした。ただしオバマがそれに参加するということになります。中国にとっては引き続きASEANにおいて、アメリカの影響をなるべく避ける。またASEANにおけるアメリカの役割をどう見るかと。中国がもしそういうような対策を打てば、アメリカはどうすればいいのか。それについても、後ほど皆さんからぜひいろいろと意見をうかがいたいと思います。

 日中米の3カ国の協力の分野について、いま現状は必ずしも喜ばしいものではありません。お互いに協力をし合い、国益を守るということの中で、やはりもっと今後いろいろと協力の機会があるかと思います。私は自分なりのささやかな力ではありますが、ぜひいろいろとアドバイスもしていきたいと思います。指導者というのが、やはり国益以上に正しい判断をすべきだと思います。アメリカでは、アメリカの指導者が実はそれをやれるわけです。歴史から見ますと、アメリカ史上では、こういうようなリーダーが何人もいました。いまの時代、まさしくそれが求められる時代であります。外国の国家指導者についてコメントするつもりはないのですが、私から見ますとオバマ大統領にはそれができると思います。

 いま3カ国の指導者がいずれも国内からのいろいろな難題に直面しているわけです。ただし、その3カ国がやはりそれにしても責任のある外交政策、また3カ国の協力政策をつくるべきだと思います。もし3カ国の間で緊迫した情勢になると、恐らくこれが国民に対してもかなりマイナスの影響を与えます。したがって市民、公衆の声も、指導者としてはやはり耳を傾けるべきだと思います。われわれにとってみれば、恐らくいろいろな問題、これから難題がたくさんあります。ぜひそういう3カ国の指導者が難題、困難を乗り越えるために、より公平に相手を考え、また共通の目標を掲げるべきだと思います。
 私としての以上の考え方が、ぜひ皆様にもある程度ご参考になればと思います。以上でございます。ありがとうございました。


3. 高原明生 東京財団上席研究員、東京大学大学院法学政治学研究科教授



 発言の機会を頂戴できて、ありがたく思います。
 まずは日本研究所の創立30周年、まことにおめでとうございます。今朝、あまり時間がなかったので、日本研究について十分にお話が、李薇所長、展開できなかったかもしれないのですけれども、お話しになった内容以上に、たとえば人文科学の面でも、日本研究は大変、過去30年の間に中国で発展してきたと思います。とくに日本に留学に行って、博士号などを取って、中国に帰ってきた人文科学系の研究者の方々が、国家や政治から自由に日本研究を進めて、大変程度の高い実績を上げていらっしゃるということを私は承知しております。

 それからもう1つ、ちょっと気づいたことで、午前中のセッションは時間がなくなって、ディスカッションはできなかったので、申し訳ありませんが、1つだけコメントを申しますと、相互理解ということが大変重要だと。これはまったく間違いのないことなのですけれども、相手が何を考えているのかということを理解するだけではなくて、なぜ相手がそう考えているのか。それを理解すること。もう一段深い相互理解が大変重要なのではないかというふうに私は感じております。

 ですから、中国社会科学院日本研究所が、なぜ日本が政治大国化を目指していると思っているのかというのを、日本側はよく研究するべきじゃないかと思うのですね。そのためには、やはり日本研究所に半年か、1年ぐらい、誰か日本の研究者を受け入れてもらえないかと。それで内部からなぜ中国の日本研究者がそのように考えるのか、内部から研究するというか、理解する。そういった試みができないかなといったことを私は考えながら、午前中の大変内容のある報告を聞いておりました。

 すみません。それだけで時間を取りましたが、本題は「日米中関係の将来」ということですので、そちらの話題に移りたいと思います。将来を展望する上で、常識的なやり方ですが、まずはここ2、3年に発生した新しい事態についておさらいをしておきたいと思います。

 まず日本ですけれども、日本につきましては、自民党の長い統治の時代において蓄積した制度疲労といったものがあって、それが民主党への平和的な、選挙による政権の移行によってチェンジ、変化が起きるのではないかという期待が大きかったと思います。ですけれども、ご存じの通り、民主党は改革、すなわち彼らの言うところの政治主導型の統治への移行というのに、いままでのところは失敗してきたということだと思います。

 東日本大震災の発生というのが、今年はありまして、日本社会の強さというのは、また現れたと思うのですけれども、政治や経済の停滞状況というのは変わっていない。これは今日の会議ですでに何人もの方からのご指摘があったところだと思います。

 では、アメリカはどうかと言いますと、アメリカは3年前、2008年、世界金融危機を起こしてしまった国となってしまいました。やはりオバマさんがチェンジを唱えて当選したわけですけれども、なかなか経済問題の深刻さというのは、解決が難しいわけです。外交面におきましては、ビン・ラディンを発見しました。そしてビン・ラディンを殺害したわけなのですが、しかしテロとの戦いというのは、基本的には継続し続けており、財政困難が大きくなっているというのがアメリカの現状だと思います。

 では翻って、中国はどうかということなのですけれども、中国は2008年以来の内需拡大政策というのが功を奏しまして、経済危機を脱出することができました。日本や欧米とは対称的に、高度成長を継続しているわけであります。そのことは一面におきましては、中国の多くの人々に自信をもたらしているということがいえると思います。

 ですけど、他方におきましては、この高度成長の歪み、問題点というのも、また深刻化しているわけです。住宅問題、教育問題、医療問題、物価の上昇、汚職、それからいわゆる縁故主義、nepotismの深刻化ですね。こうした様々な問題によりまして、人々の不満や不安が高まっているのも、同時に事実だと思います。

 この自信と不安がともに高まるという状況は、ナショナリズムにとっては大変に豊かな成長の土壌を提供しているのだというふうに思います。ここから、やはり最近の外交、安全保障政策における中国の舵取りの変化が生じている。その1つの原因がここにあるのではないかと、私を含めて、多くの観察者は感じているわけです。

 それでは、こうした各国別の事情を踏まえて、世界秩序であるとか、地域秩序、どのような動向があるのか、簡単にポイントだけ触れますと、もちろんグローバルにはG20に象徴されるような、新しいグローバル・ガバナンスの在り方が脚光を浴びるようになりましたけれども、まだまだこうした新しい制度は未成熟であって、きちんと機能するのかどうか、判断ができない段階だと思います。

 地域におきましては、いまロンバーグ先生がご指摘になりましたけれども、中国の急速な台頭によって、近隣諸国は、もちろん一方においては経済的に大きく裨益しているわけです。大きな利益を得ているわけですけれども、安全保障の面では、一様に警戒感を高めているというのが実状だと思います。

 とくに海洋で領土や、いわゆる排他的経済水域、EEZを巡る争いを抱えている国々であるとか、あるいは北朝鮮と対峙する韓国であるとか、日本もそうですけれども、多くの国々が力のバランスということを考えて、アメリカに接近を図っているというのが、ここ数年の状況だと思います。そしていま、お話があった通り、昨年はついにASEANがアメリカ及びロシアを、東アジアサミットに招待するといった事態にまで至っているわけです。

 こうした背景の中で、こうした時代状況の文脈において、いよいよ本題ですが、日米中関係はこれからどうなるんだろうかということを考えてみたいと思います。この問題を考える上では、私たちの三角関係というのは、3つの二国間関係によって成っているわけですから、3つの二国間関係についてそれぞれ検討してみる。これがやはりオーソドックスな考え方だろうと思うのですけれども、私の理解するところでは、この3つのいずれにおいても、強靱性、強い面と、脆弱性、弱い面の両面が、いずれの関係にも存在しているというふうに思います。

 従って、ちょっと発想が単純かもしれませんが、私なりに思うに、われわれの共通目標というのは、次のようなことではないか。つまりこの重要な日米中関係の安定と発展を実現するために、どうすれば強靱性をいっそう強化することができるのか。どうすれば脆弱性を弱化することができるのか。ここに私たちの知恵を絞らなければならないのではないかと思う次第です。

 それではまず日中関係ですけれども、日中関係の場合の強靱性というのはどこにあるのか。そもそも強靱性は日中関係にあるのか。私は2005年の4月から1年間、エズラ・ボーゲル先生のお導きで、ハーバード大学で客員研究員をしましたけれども、ちょうど2005年の4月というのは、中国で反日デモの嵐が吹き荒れた直後でありましたから、アメリカの方は日中関係に大変関心が高くて、私はあちこちに行って、日中関係について話をしました。

 そのときに申しましたのは、日中関係というのは、皆さんが考えるほど悪くありませんよということが1点、それから日中関係は近い将来必ず良くなるだろうということを言って回ったわけです。ところが誰も信じてくれないのですよね。ですから、その翌年、2006年に安倍晋三総理が中国へ行きまして、胡錦涛国家主席との間で、戦略的互恵関係という、前よりも一段高い段階に日中関係を引き上げてくれたときには、私は内心得意満面、鼻高々だったわけですね。

 言いたいことは何かというと、やはり日中関係にせよ、米中関係にせよ、恐らく脆弱性のほうが目立つわけです。脆弱性のほうが目立つのですけれども、実は強靱性もあるので、そこを見落とすと、私たちは判断を間違うことになるんじゃないかということが言いたいわけです。その強靱性の内容としましては、いうまでもありませんけれども、経済的な相互依存関係。これが1つの大きな柱ということになります。日本と中国の間であれば、これからはエネルギー方面の協力が一層重要になっていくだろうと思います。

 たとえば省エネ、あるいは再生可能エネルギー、新エネルギーですね。あるいはエネルギー資源の共同開発。とくに日本で原子力発電所の事故が起きてからは、日本の中でもこうしたエネルギー問題に対する関心は、もちろん高まっているところであります。共同開発に関して言えば、2008年の6月に、日本と中国の間で正式に合意ができて、東シナ海の資源の共同開発をするということになったのですけれども、大変残念ながら、その後中国側が態度を消極化させて、具体的な話し合いになっておりませんけれども、ぜひこれを進めてもらいたい。そのように中国の方々には強くお願いしたいというふうに思っています。

 あるいは経済面では、FTAへの期待ですね。日中間のFTA。これに対する期待は、両国の経済界にあるのだと思います。さらには、安全保障の面では、先ほども話題になった北朝鮮の核危機の問題。これをどう解決するか。これまでも協力してまいりましたし、それからいわゆる非伝統的な安全保障の問題。ここで私たちはいっそう協力を強化していく必要があるということは、よくみんなわかっています。

 しかしそれだけではないと思うのですね。ここがどれほど注目されるか、人によって違うのですけれども、私は社会交流であるとか、文化交流というのは、大変に重要な強靱性の来源だというふうに考えています。日本人は中国の古典が、本当に大好きですね。中国の歴史や古典が大好きで、私はよく例に挙げますが、中国の古典を中学校の国語の教科書に載せるわけです。つまり中国の漢詩が、私たちの国語の一部を成している。そういう国は、恐らく日本以外にはないのではないかと思います。

 また、他方、中国の若者は日本のアニメが大好きですよね。あるいはテレビゲームであるとか。日本の学生を連れて、私、中国の大学を訪問して、交流会をよくやりますけれども、最初の頃は喧嘩するのではないかって心配しましたが、それはまったくの杞憂であって、私が全然知らないゲームだとか、アニメーションを巡って、キャッキャ、キャッキャ、笑いながら意思疎通、話し合いをしているのが実状です。

 いや、そういうアニメの交流があるからと言って、安全保障問題がなくなるわけじゃないだろうと。それはもちろんそうです。脆弱性もあるのも間違いないわけで、それはそれで大事なのですけれども、しかしこうした文化面でのつながりの重要性というのは、私は強調しておきたい。とくに日本と韓国の間で、韓国のポピュラーカルチャーが日本社会に浸透することによって、どれだけ日本の韓国イメージが良くなったかということを、いま日本人はよく知っています。で、日本の国に限りませんが、国民感情が良くなるということは、国際関係にとっても大変に重要なことだ。これは午前中から出ている話題であって、ぜひこの文化交流にも、私たちはいっそう注目をしていく必要があるのではないかと感じている次第です。

 脆弱性につきましては、これも語れば時間がなくなるほど、いろいろ言いたいことがありますけれども、やはり基本は相互不信ですよね。相手に対する、相手に関するイメージが悪いということ。中国側では、実は日本に対するイメージは、ここ数年良くなってきていたのです。良くなってきていたのですが、昨年の尖閣沖の漁船衝突事件以降、残念ながら、また悪化の方向に転じてしまいました。これをどうするのか。

 それから安全保障問題は、とくに海洋の面で、尖閣を巡る問題であるとか、排他的経済水域を巡る紛争があります。それから最近は大きな問題になっていませんけれども、潜在的には、やはり歴史の問題があるわけです。

 日本はどうすればいいのかということを、ここでひとこと言いたいんですが、私は日本はもっと正面から中国と真剣に対話をするべきだというふうに思います。また中国は、同時にこれはコインの裏表ですけれども、中国ももっと真剣に日本と対話をしてほしいというふうに思います。日本の望みというのは何かというと、やはり中国とどうやって平和共存していくことができるのか。どうやって日中関係を発展させることができるのかということですし、その前提となる中国自身の安定発展ですね。これを中国がどう実現していくことができるのか。ここに私たちの関心、私たちの利益はあるのだというふうに思います。

 感情的にはいろいろな事件があって、嫌中感が高まっているのは事実です。ですけれども、理性的には大多数の日本人が、中国の関係がどれほど日本にとって大事なのかということは、よくわかっていると思います。ですので、そこのところは見間違えないでほしいのですが、日本の政治家であれ、経済界であれ、とくに政界ですね。中国ともっと真剣に向き合って、中国の言い方を借りますと、どうすれば調和の取れた世界を中国や日本がつくることができるのか。恐らくは、私どもの考えでは、やや不遜な言い方になるかもしれないけれども、中国が本当に調和の取れた世界をつくりたいならば、まず調和の取れた社会を国内につくらなければ、信頼はされないだろうというふうに私は感じています。中国が調和の取れた社会を実現するための協力というのを、日本は正面から継続し、発展させるべきじゃないかというふうに私は感じています。

 あまり時間がありませんけれども、日米関係について、それほど私は詳しくありませんけれども、やはり強靱性と脆弱性があるように思います。強靱性というのは、言うまでもなく、経済的な相互依存、あるいは安全保障協力、さらには社会文化交流。こういったことになると思います。問題は脆弱性ですね。脆弱性、かつては経済摩擦というのが、大変大きな問題でした。最近では、昔もありましたけれども、基地問題がなくなっておりません。そしてとくにブッシュ政権のときに目立っておりました単独行動主義。とくに軍事面、それから環境問題については、ブッシュ政権の単独行動主義に世界ががっかりした。日本の中でもがっかりした人は多かったわけです。

 しかし、翻ってアメリカから見ますと、日本に対する不満がいろいろあるだろうと思います。世界の期待に、ここ20年ばかり日本は応えていない。日本からアイデアが出てこない。こうした点については、アメリカ側から強い不満があるだろうということはわかります。そうしたこと、脆弱性を考えると、私のような日米関係の素人からすると、日米間の意思疎通は本当に十分行われているのだろうかという疑問を持ちます。われわれはアメリカが、安定勢力として、東アジアにおいて軍事的なプレゼンスを継続するということを望んでいる。これは確かなのですけれども、しかし、やはり軍事力の実際の使用について慎重であってほしいというふうに望んでいます。そして持続可能な発展を世界がしていかなければならないのですから、あんまり贅沢をしないで、持続可能な発展の実現に貢献してほしいというふうに思います。

 米中関係については、あまりよく知りませんし、触れる時間もないのですけれども、私のような日本人から見ると、1つの強靱性の所在は、お互いに相手に対する憧れの気持ちを持っていることではないかという気がしています。また日本人からすると、実はアメリカ人と中国人はよく似ているように見えますね。自立心が強い、向上心が強い。大変活発であるという特徴は、かなり共通している。しかし悪く言うと、そうした特徴というのは、けっこう自己中心的であると。それからわりと独善的である。自分は絶対的に正しいと思っていると。そういった大国の国民の意識もかなり共通しているのではないかというふうに思います。このへんは、本当は皆さんに笑ってほしいところなのですけど(笑)。

 最後に、時間もないので、日本に対する注文をもう一つ。やはり政治がもっとしっかりしないと、日本は世界からの信頼を回復できないのではないかというふうに思います。軍事力や経済力。これは他の国と比べて、相対的には、力が低下していく傾向にあるわけですが、それでも決して過小評価できない。日本は当面の間、長い間は、インドに追いつかれるまでは、世界3位の経済大国ですし、ヨーロッパのどの国と比べても、世界に対する大きな貢献を今もしているし、恐らくこれからもつづけていくだろうと、私は思いますけれども、しかしとくにアジア太平洋においては、相対的な地位は下がっていくわけであって、国力は下がっていくわけであって、私たちはもっと頭を絞って、知恵を出さないと、貢献ができないだろうというふうに思っています。

 しかし日本社会は、他の国々と比べても、相当いい社会だと私自身は思っておりますので、日本人は宣伝が大変下手なので、ぜひここにいらっしゃる多くの米中の日本研究者に応援してもらいたいと。そういうふうに思っております。以上です。ありがとうございました。


■コメント


1. 崔立如 中国現代国際関係研究院院長



 渡部先生、どうもありがとうございます。まず、主催者に、このようなチャンスを与えてくださいまして、ありがとうございます。非常に重要な会議で、重要な課題について議論している場でございます。王緝思先生、アラン先生、高原先生。いずれも古くからの友人で、そして3カ国においては一流の学者でもおられます。3名の発言をうかがいまして、時間は短いですけれども、大変勉強になっております。示唆に富んだものばかりでございます。短い時間の中で評価するのも非情に難しいですけれども、しかし3名の発言は、ある程度昨今の米中関係、日中関係、日米中3カ国の関係。これらの関係に対する考え方を代表しているのではないかと思います。

 また、もちろんこれらの考え方、見方は3名の言及されたものだけではなく、3カ国の間にはまたそれぞれ違った見方もあります。これらの見方は、現段階の日中、米中、日米中3カ国の関係の複雑性を反映しております。王先生のお話をうかがいますと、当面の中国の台頭により、3カ国の構造が変わりつつあるということに言及しております。また3カ国の憂慮、懐疑というようなものも増えつつあります。しかし、やはり後者に立ってみれば、3カ国はやはりさらに大きな責任感を持って、共同してこれらのチャレンジに直面しなければならないというものであります。これも3カ国の関係が安定的に発展される大前提であると思います。

 そしてアラン先生の発言につきましては、基本的な考え方は王先生と同じだと思います。しかし、やはりアメリカの研究者の非常に実務的な精神が現れていると思います。米中関係、そして日中関係につきましては、具体的な課題に触れられております。そして先生の発表の最後には、もう1つの考え方が出ております。これはアメリカでもメジャーなものではないかと思います。つまり米中間、日中間の大きな相違、これらの問題はいまの段階では解決できません。これらの相違について議論しても意味がないので、やはり具体的な問題の解決に力を入れたほうがいいという考え方です。と同時に、対極な関係については希望を持たれているというような発言もございました。

 そして高原先生ですが、3つの関係のさまざまな側面についても触れられましたし、国内の状況についても言及しました。日本の学会、政界においては、高原先生とは意見が異なっているのもうかがっております。日中関係については、やはり楽観視しているのが事実です。お互いの絆、お互いの強靱性について注目しているわけです。と同時に、先生は中国自身の発展についても言及されました。これは非常に重要な問題意識ではないかと思います。これについても大変賛同しております。

 この場をお借りしまして、先生方の発言を踏まえて、私個人の考え方も申し上げたいと思います。まず1点目。日米中3カ国の関係は、いまや歴史的な転換期にさしかかっております。この歴史的な転換期は英語ではtransitionと言いまして、一般的な変化、進展ではなく、1つの形態からもう1つの形態に変わるというものです。構造的な変化とも言えるでしょう。王先生も同様におっしゃられております。その大きなバックグラウンドは、やはり世界全体が大きな変化を見せております。グローバリゼーションが大きな2つの変化をもたらしています。1つは国家間の相互依存度の増加、もう1つはお互いの競争の激化であります。これは大国間でとくに目立っております。

 2点目ですが、力のバランス。冷戦後の1極からいまの多極化になりつつあります。権力構造が新たに形成され、再構築される段階に来ております。この見解は、明らかに日米中の関係に表れています。この3カ国は、世界でももっとも大きな経済体でもあります。2点目の私のコメントですが、この歴史的な転換期ですので、戦後、日米中3カ国の特殊な形態により、その変化のアプローチ、そのプロセスも非常に長くなるのではないかと思われます。

 3カ国の関係から見ますと、長期的には安定した状態にあると思います。この安定した構造は、政治安全面において、日米は同盟国であります。中国はもう一方におかれています。しかしバイの関係におきましては、過去の20~30年間、バイの経済関係はスピーディーに発展し、お互いに依存し、幅広い相互依存関係が形成されております。政治面においては、安全保障の分野でとくに非常に低いレベルにあるのは事実であります。経済関係の発展は、政治関係の発展とかけ離れているというのも事実です。政治と経済がかけ離れているため、ある程度政治決定者は政治関係の増進を促進しようと考えています。しかしここ数年の事実を見ますと、根本的には変化は見られておりません。

 ですので、政治、経済、あるいは安全と経済がやはり大きくかけ離れております。こういった変化もありまして、これらの政治と経済の乖離がますます大きくなり、これは2国間関係においても大きなチャレンジになりつつあります。ですので、政治面においてさらに大きな進展を見ようとすれば、やはりまず政治面の改善をしなければなりません。

 もちろんこの中では大きなファクターを、まず見なければなりません。王先生も言及されたように、中国の台頭です。このかけ離れた2国間関係。一方では経済面においてパートナーシップ、あるいは少なくとも利益関係者となっております。しかし一方では、お互いに戦略的互恵関係、戦略的パートナー関係を構築しようとしていますが、しかしながらいまは戦略的相互信頼の関係が非常に低いレベルにあるのも事実であります。日米両国においては、中国に対して非常に懸念をしているわけです。中国の制度に対する対抗の声も聞いております。とくに金融危機以来、この2つの国の中では国民の感情が変わり、自信を失い、その民意も情緒的なものになりつつあります。中国も同じような問題を抱えておりますが、しかしその表現のしかたが違っているわけです。

 また一方で、3カ国の内部ではグローバリゼーションに伴い、国内の政治経済も大きな変化を経験しております。経済を発展させる上では、国内問題がもっとも注目されている課題であります。しかし、内部に力を入れるため、ある程度外交政策にも影を落としております。もちろん日米の間では、政治的な分裂がさらに目立っているのも事実です。と同時に、政治的な指導の地位もますます弱まっております。こういった大きな困難、あるいは変化に当たりまして、チャンレンジに直面するのは、やはり戦略的相互信頼が不可欠ですけれども、現実的には非常に欠如しております。またこの段階においては、政治的な指導が必要となっておりますが、しかしこの政治的な指導は必ずしも強いものではありません。

 3点目ですが、簡単な総括であります。こういった転換期は非常に時間がかかりますし、かつ困難なものであるのは事実です。摩擦と衝突が不断に生じるでしょう。しかし、ここ数年来、3カ国の関係、あるいは2カ国の関係はいずれも重要な利益関係を構築しております。お互いに重要なステークホルダーになっております。双方の指導者も積極的にパートナーシップを構築に努めているわけですので、大局面の衝突をできるだけ回避しようと努めているわけです。

 また一方で、3カ国の間ではクライシス、リスク、矛盾を解決する一連のルールもできているわけですので、一般的には3カ国の関係は、基本的な安定が保たれております。しかし、もちろんその危険性も存在しております。この危険性というのはハプニング、突発事件に対する誤った判断です。現段階において、3カ国にとってもっとも大きな責務は、リスクマネジメントです。これは3カ国にとってもっとも大きな課題となっております。リスクマネジメント以外に、積極的に3カ国の関係を見なければなりません。これについては、先の3名の発表者も言及されましたように、米中関係、日中関係、やはり今後とも積極的、生産的な枠組作りのほうに動いていかなければなりません。これは政治家、政府部門、シンクタンク、あるいは学者が考えるべき課題であります。こういったプロセスにおきまして、新たな考え方も求められております。従来の考え方であると、なかなかその解決策は見出せないでしょう。つまり積極的、生産的な枠組は見出せないでしょう。これは大局からの戦略的設計が求められております。

 これについて1点だけ申し上げておきたいのは、この中に1点だけクライシス、リスクが存在しております。つまり日米関係です。同盟関係はその3カ国の関係においても、つまりこの同盟関係は日中関係の中の政治と経済の分離をもたらしているわけです。これを改善するためには、真剣に見直さなければなりません。地域、さらには世界的なレベルからその構造を考えなければなりません。この構造につきましては、利益以外にもお互いが共通する価値観の問題も存在していると思います。
 以上です。ご静聴、どうもありがとうございました。


2. ケント・カルダー ジョンズホプキンス大学教授、同SAISエドウィン・ライシャワー東アジア研究所所長



 本日ここにディスカッションに参加できるということを、非常に光栄に思います。本日3カ国の専門家の皆様がここで一緒にディスカッションしているわけですが、私なりの考え方も皆様とシェアしたいと思います。

 最近、私が主に研究している分野ですが、環境分野であります。環境エネルギーです。本日、各スピーカーの方からは、各々の立場からいろいろな観点を披露されたわけですが、マクロ的な問題以外に、場合によっては、もうちょっとミクロ的な問題にも注目する必要もあるかと思います。3カ国関係、またグローバルなチャレンジということに、環境エネルギー問題も無視できません。日本のいままでの発展のモデルというのは、恐らく中国にとってもいろいろな意味でいいヒントになるかと思います。

 また、日米中の3カ国の対話、とくにセカンドトラックでの対話というような話も、先ほど先生がおっしゃいました。アメリカの駐日大使と、実は何回か東京でお話をしたことがあります。日米中のエネルギー分野における協力に関して議論したことがあります。中国はエネルギーの輸出大国であります。大量の石油なども輸入しているわけですので、したがってこのようなエネルギー分野における協力が非常に重要だと思います。この問題について、確かに非常に実務的なレベルでものごとを考えていかなければならないと思います。

 実は、先ほど東大の高原先生もエネルギーの問題について触れられました。たとえばエネルギーの共同開発のお話がありました。私も実はそれに大賛成であります。当然ながら、領土問題は日中両国の場合の問題でありますが、アメリカ側としてはこの問題を無事解決し、また共同で開発するということを非常に望んでいます。日米中の3カ国のGDPは世界の半分以上のシェアをしています。したがってエネルギー問題が、実は3カ国にとってもきわめて重要であります。中国はエネルギーの最大の消費国でありますし、また最大のCO2の排出国にもなるかと思います。アメリカも同様です。エネルギーの安定的な供給、それからエネルギーの消費がもたらす環境の問題。いずれもこれがお互いの国にとって重要な課題でありますし、また世界の環境に対しても大きな影響を及ぼす問題であります。

 今後の3カ国のエネルギーにおける連携が、恐らくますます深まっていくだろうと思います。ある国は、たとえば中国のエネルギーの消費量がかなり莫大なものです。中国国内では、石炭などの資源が豊富にあるわけですが、同時に大量の石油の輸入でエネルギーの供給を補っているわけです。したがってエネルギーのこのニーズが今後も、恐らくますます増えていくだろうと思います。深刻