タイプ
レポート
日付
2012/8/29

セッション2(13:30-15:30) 日米中関係の将来(2)

■ディスカッション


渡部 これからディスカッションに入りますが、まずは行天先生の友人で、中国社会科学院の余永定先生に、中国側から見た経済についてのコメントを頂きたいと思いますが、これからコメントは、申し訳ないですが、時間が限られているので、5分を最大にということで、短ければ短いほど感謝されますので、よろしくお願いします。

 時間も限られておりますので、簡単に申し上げます。まず私は先ほどのスピーカーの話を聞きまして、大変勉強になっております。ほとんどの考え方には賛同いたします。とくに行天先生は、いまの世界のアンバランス、そして昨今の一連の発展モデルの持続不可能性についてうまく説明してくださいました。賛同いたします。

 1点だけ強調いたしますが、これはいまの行天先生の発言に関連するものでございます。長い間、国際収支のアンバランスによりまして、中国と日本、最初は日本、それから中国ですが、非常に輸出を強調する政策をとってきましたので、両国には大きな貿易黒字を持っています。日本はアメリカに多くの資金を提供し、よってアメリカがいまの贅沢な生活を保つことができたわけです。これについては真剣に見直さなければならないと思います。

 長期的なこういうアンバランスな状態の、そして中国のアメリカに対する貿易黒字により、2兆元あまりの外貨を持っております。これまで外貨の貯蓄が少なかったですけれども、しかしいま数兆元に上っていると、もうすでに中国の人数を上回っているわけです。過剰になっているわけです。

 いまアメリカの経済には大きな問題が出ております。バブルが弾けてから、アメリカの政府には大きな赤字が出ております。アメリカの政府は2つの選択を迫られております。1つは財政を緊縮することです。現在の状況を見ますと、オバマ政権はこういった政策を採っております。もう1つの選択肢ですが、クルグマンなどの多くのアメリカの学者が提唱する政策です。つまり拡張的な通貨政策を採り、引き続き拡張的な財政策を採ることです。そうすると、深刻なデフレにつながってしまいます。ドル安になってしまいます。しかしそうして初めて、アメリカが簡単にサバイバルできるわけです。しかし逆に、日本と中国にとっては大きな痛手になります。

 というのは、中国と日本は同時にアメリカの債権者であります。第1位と第2位の債権者が、アメリカに対して主権を求めるとき、なかなか実力は持っていないわけですね。ですので、いまの状況を見ますと、必ずしも適切な政策ではないと思います。なので、債権者といたしまして、中国と日本が協力して、アメリカ政府にわれわれの資産の安全性を保ってもらわなければなりません。これは無理な要求ではありません。ドルを一括に売ってしまって、深刻な事態を招くことはもちろんしません。責任を持っている債権者でありますので、アメリカには責任を持っている債務者になってほしいわけです いまの状況はまだ大丈夫ですが、しかしアメリカのハーバード大学の学者の言い方を見ますと、雇用状況によってはコントロールできなくなってしまいますので、これは中国と日本にとっては非常に痛手になってしまいますので、中日両国の関係各者がこれについて真剣に議論をし、またアメリカと交渉しなければなりません。こうして初めていまの難関を乗り越え、世界の金融の暗転性を保つことができるのではないかと思います。よって、初めていまの経済衰退の現状を克服できると思います。

渡部 フロアのほうからもう1人、コメントをもらおうと思っております。これはアメリカのほうで安全保障の専門家で、しかも中国の専門家で、Center for Naval Analysisのエイブラハム・デンマークさん、お願いします。

デンマーク 私も簡単にお話しします。最後のコメンテーターです。先ほどの余先生のコメントが非常に興味深いものでした。私の言いたいことも全部言って頂きました。なぜかと言うと、中国と日本がアメリカに大量にお金を貸しているわけです。これは日本人、中国人が、人がいいということではなく、やはり自分の利益のためでもあります。アメリカは投資先としては非常にいい国です。アメリカへの投資というのはいい投資ですので、したがって日本も中国もアメリカに投資しているわけです。当然ながら、中国人、日本人がアメリカに対する政策についての懸念、心配というのも、私も理解しています。

 アメリカはアメリカなりの国内の問題もございます。外交政策の専門家として、実はわれわれが直面しているチャレンジというのは、政治家は国際問題よりも国内問題にあまりにも気を取られているだけです。協力は必要なのですけれど、国内の政治家たちにとっては、国内問題にもっと耳を傾けるのです。したがって、政治家たちをもっと外交問題にいかに注目させるかというのが課題だと思います。

 多くの中国人が、中国が台頭しているということを見て、やはり外交政策で自分のプレゼンスを強調し、アメリカに妥協しなくてもいいじゃないかというような声もあります。確かに中国はいま台頭している大国であります。先ほど、王教授が外交政策に関して1つの論文を発表されて、アメリカでも非常に注目されています。国際世界のためにもっと貢献をするということを訴えています。

 相対的な権利というような概念がありますが、それがたびたびセミナー、シンポジウムで触れているわけですが、いま中国は日本を抜いて、もしかしたら将来的にアメリカを抜いて、世界最大の経済強国になるかもしれません。誰がナンバー1なのか、誰がナンバー2、ナンバー3なのか、実はそんなに重要なことではありません。重要なのは、その国がこの権利を生かして、どういう振る舞いをするかということです。アメリカがいまその権利を使って、パブリックな問題、国際的な秩序に使っていますが、これは当然中国にとってもプラスであります。日本も同じようにアフガニスタン、イラクなどでいろいろと貢献をしているわけです。

 では、中国が世界の安定、発展にどうやって貢献するかと。恐らく世界中が見守っているわけです。王教授が描いたそのビジョンについては、多少われわれにも懸念があります。中国の権利がますます大きくなるわけですが、恐らく今後、もっと妥協するところも多くなってくるかと思います。この会場から離れれば、やはり1つのクェスチョンがわれわれに残されるでしょう。いかに政治家を説得して、国内問題以外に外交政策にもどうやって目を向けさせるかということです。
 以上、私の簡単なコメントです。ありがとうございました。

渡部 次は中国の安全保障の専門家のドクター・江新風さん(軍事科学院研究員)にコメントというか、ディスカッションのリクエストが来ていますので、お願いしたいと思います。

 今日の午後、中日米3カ国の学者が、経済および政治、安全保障の面から中日米3カ国の関係につきまして詳しく分析してくださいました。幅広い協力の分野のみならず、そしていま抱えている問題点についても触れられました。私からは、安全保障の面から中日関係について議論したいと思います。

 中日関係の未来につきましては、高原先生のご意見に賛同いたします。つまり中日関係は全体的に明るい方向に向かっていくでしょう。中日の戦略的互恵関係は、こういった方向性につきましては、両国の間ではすでに意識が一致しております。両国の指導者はお互いに非常に受容しております。これについても明らかになっております。安全分野におきましては、現状を見ますと、必ずしも望ましい状態にはありません。午前中、これまでの話をうかがいまして、お互いに総合不信、理解の欠如など、国民感情の劣化など、よく出てきます。

 そして日本の新しい白書、防衛大綱を見ますと、日本の中国の近代的な軍隊の建設、海洋における活動などにつきまして高度に注目しているということがうかがえます。また中国の軍事動向は、国際社会にとっても憂慮すべき事項だといわれています。一方で中国は、日本における日米同盟の強化、とくに尖閣諸島を日米安保条約の範囲に組み入れることにつきましても大変注目しております。

 このような相互不信は、両国の健全なる発展にとって良くないものであります。ですので、今後これらの憂慮を払拭するために4点アドバイスしたいと思います。まず1点目、やはり意思疎通をすることです。日本は中国の意図を過度に拡大しているのではないかと思います。中国は軍事的にアメリカの覇権的地位にチャレンジする意図もなければ、可能性もないし、その能力もありません。もちろん必要性もありません。

 先週、日本にいたとき、日本の外務省の同僚から聞きましたが、中国の外交部の外交辞令を聞きますと、やはり反感を抱いていると聞いております。もちろん、やはり中国にとってもさまざまな考え方、さまざまな手法でもって、単なる外交辞令ではなく、たとえば学術面の交流、あるいは学術レベルの交流などの形で持って意思疎通を図らなければならないと思います。

そして(2点目に)お互いに相手側の立場を理解するということも重要です。日本は既に経済成長期を経ております。中国はいま途上国であります。ですので、日本には中国の立場を理解してもらいたいわけです。

 3点目ですが、座って交流することも重要です。お互いに疑うことよりも、もちろん交流することが良いでしょう。両国の学者が相手国に行って交流し、あるいは短期間の訪問などを通じまして、政治レベル、政策レベルの方々と踏み込んだ交流ができればと望まれております。

 最後の1点ですが、共通利益の拡大です。対抗、あるいは抑止よりも協力という考え方を拡大することです。先ほど、行天先生もおっしゃられたように、経済分野においては協力の分野は非常に広いわけです。安全分野においても、たとえば災害救助、事故の救助、あるいは海洋環境の保護など、あるいは資源などにおきまして、非常に幅広い協力の分野が存在しておりますので、対抗よりも協力の考え方でもって、お互いに関係を進めてほしいと思います。
 以上です。ありがとうございました。

渡部 中国人の方から2人、アメリカ人の方から1人、フロアからの議論ということになりました。最後、日本から1人。これで時間いっぱいでございます。明治大学の准教授で、東京財団の研究員でもあります関山健さんのほうから議論をお願いします。

関山 渡部さん、発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。またすばらしいスピーカーの方々から大変示唆に富むお話を頂き、ありがとうございました。時間もないことですし、私のような若輩がコメントをさせて頂けるようなものではない、大変レベルの高いお話を頂きましたので、1点だけ高原先生が言及された幅広い社会交流、文化交流の重要性というお話を聞いて、思い出した統計データをご紹介させて頂ければと思います。

 日本政府が毎年10月に、外交に関する世論調査というのを行っておりまして、日本の国民がアメリカや中国や韓国、その他主要な外交相手国に対してどのような感情を持っているかということを調査を行っています。これは1980年代からいまに至るまで、毎年日本政府が行っているんですが、その統計データを少しご紹介させてください。

 まずアメリカに着いては、1980年代から現在に至るまで、日本国民のおよそ70%の人がアメリカに対して親近感、intimacyを抱いています。この数字は過去30年間非常に安定しています。次に中国については、1980年の頃はだいたい日本国民の70%の人が中国に対して親近感、intimacyを感じていたんですが、その後1989年、天安門事件をきっかけに、この親近感が70%から50%ぐらいに下がりました。その後、この数字は90年代はほとんど変わらなかったんですが、2003年、2004年あたりの反日でもの頃に50%からさらに40%を切るまで数字が下がってしまって、この1、2年はさらに30%近くまで数字が落ち込んでいます。だからだいたい日本国民のわずか30%ぐらいの人が中国に対して親近感を感じていて、逆に60%ぐらいの人は中国に対して嫌中感を感じているということであります。

 ちなみに、韓国に対する感情なんですが、韓国については90年代ぐらいまでだいたい日本国民の40%ぐらいの人しか韓国に対して親近感を感じていなかったんですが、これが2000年代に入ってから、先ほど高原先生も指摘をされましたが、日本で韓国のドラマや音楽や映画が大変流行するようになってから、この親近感が急速に改善をしていまして、90年代は40%ぐらいだったのが、2000年代に入ると突如として50%を超えるようになって、いまは60%を超えて、65%近い数字まで上がってきています。

 この3カ国に対する日本国民の世論と言うか、親近感の変化をみますと、3つのことが言えるのではないかなと思います。まず1つは、過去30年間、70%ぐらいの高い水準で維持されてきている安定的な日本国民の対米感情というのは、安定的な強い日米関係の極めて重要な基礎であるということが言えると思います。2つめに、逆に非常に不安定な、とくに過去30年間下がり続けている日本国民の対中感情というのは、不安定な日中関係。日中関係上の最大の障害になっているということが言えるかと思います。

 では、どうすればいいかと言えば、ここで参考になるのが、やはり韓国に対する日本国民の感情の例でありまして、韓国と日本の間で文化交流が進んだ結果、日本国民の韓国に対する感情というのは非常に劇的に改善したことを思えば、やはり日本と中国の間でも幅広い社会、文化の交流というのは極めて重要だろうというふうに私も思います。この点で、先ほど高原先生が、幅広い社会、文化交流が重要だとご指摘をされたときに、この統計データを思い出しましたので、簡単にご紹介をさせて頂きました。ありがとうございます。

渡部 関山さん、ありがとうございました。それではこれで第2セッションを終わります。それでは最後に、発表者とコメンテーターの方に盛大な拍手をお願いします。ありがとうございました。