タイプ
レポート
日付
2012/8/29

セッション3(15:40-17:40) 東アジアの協力と新秩序 East Asia Summitについて

モデレータ:張宇燕 中国社会科学院世界経済政治研究所所長



1. 楊毅 国防大学戦略所前所長



 議長、ありがとうございます。最初に、私の発言ですが、15分間発表させて頂いて、最後の5分間がクローニン先生から、たぶんいろいろと攻撃されると思いますので、そのために時間を置き換えたいと思います。

 先ほどの議論の中で、実は中国政府はいま、より強硬な姿勢になった、また従来と違って妥協しなくなったというような指摘がありました。この問題は一概には言えないと思います。強硬かというような判断ではなく、もっと堂々と言うようになったのかということで見るべきだと思います。国益、正当な利益を守るために、ちゃんと理屈を言っていくということは正しいことであります。ただし、理不尽で、それから柔軟に妥協しても、これも駄目だと思います。

 いま外国から中国政府が強硬すぎると。一方、国内では8割以上の国民が、国の指導者また外交部が弱すぎるという指摘があります。ちょっと通訳が追いついていないようなので。ついこの前、ある大学で話をしました。いま南シナ海で諸外国にやられて、なぜ海軍が前に出ないのかと。何をやってるのかと。

 その問題に対して私が言ったのは、われわれの政策というのは平和的な発展、その対話というような方針で。ただし学生諸君はそれを別に納得はしなかったようです。このセッションのテーマが「東アジアの協力」ということですが、まずこれはやはり日米中の3カ国の協力だと。この3カ国の協力なしには、東アジアの協力というのは成り立たないと思います。日中、米中の間で衝突がもしあれば、恐らく協力は無理だと思います。

 ついこの前、私は日本を訪問しました。日本政府の方から、いろいろな防衛関係のハイレベルな方々にアレンジをして会わせて頂きました。自衛隊の関係、また有名な学者などとも対話を行いました。一番私の印象に残ったのが、アメリカで一番保守派と言われている日本国家問題の研究所の所長、桜井(よしこ)所長さん、女性の方なのですけど。話によると、桜井所長の研究所が非常にタカ派だ、気をつけろと言われました。ただし、その方に会うと、全然印象が違いました。非常に美人でありますし、チャーミングな方です。話し方も非常にお上手です。ただし、その問題が非常に鋭いのです。5時間かけて対話をしました。最初、緊張していたのですけど、夜になると一緒に会食をしながら、本当にお互いの交流について相互理解が深められたと思います。

 今回の訪問を通じて、私にもっとも深い印象を残したのが、やはりまず日本政府、あるいは日本が日中関係の将来に対して非常に強い要望があること。また中国の急速な発展にも非常に懸念もしています。人によっては、アメリカが衰退していて、中国が台頭しているので、アメリカを西太平洋から追い出すと、日本の頼りがなくなるというふうな発言をしている人もいます。また日本の最近の防衛白書も、実は非常にまずいところがあります。中国を仮想敵と、脅威だと思って、これはcounteractive、相手を敵だと思うと、本当に敵にしてしまうというような言い方があります。中国は本当に脅威だと思い込んでいけば、本当の脅威になるかもしれません。

 2つ目の問題が、日中間では、両国関係以上に地域一体化のために貢献すべきだということです。日本滞在中に、私、何回も繰り返し言っていますが、なぜ日中間でドイツとフランスの関係になれないのか。60年、70年前の敵がいまヨーロッパ一体化のリーダー役を果たしているわけです。この問題について、実は私から言わせると、日中間ではできるはずです。要は日本のその姿勢、心の準備であります。ドイツの元首相、ブラント氏がポーランドで跪いていたことが、実はその民族が立ち上がったわけです。歴史問題以外に、日本としてはやはりもっと大らかな心で中国の発展を見守るべきだと思います。

 もう1つが、日中間では全体の両国関係に近い安全保障の関係も構築すべきであります。中国の発展、また軍事の発展は、これは防衛が中心であります。最初の空母がいま実際に試運転したわけですが、ただし日本に比べるとまだ全然対等なものではありません。日本の海上自衛隊が4万人で、中国の人数はその5倍でありますが、装備と訓練のレベルから見ると、まだまだ格差が大きいです。したがって双方が日支太平洋の安全保障のためにもっと協力し合うべきだと思います。

 3点目ですが、第3国との関係を正しく取り扱うことであります。それが2カ国関係の阻害要因になってはいけません。私の友人のハーバード大学のロフト先生ですが、その方の考え方は、実は私をいつも批判しています。彼に言わせると、中国が台頭している21世紀において、アメリカの安全保障の戦略のもっとも基本的な用務というのは、分裂した東アジアという局面を保つことであります。これはなかなかずるいと思います。日米中の3カ国は、私から見ますと、やはり協力関係を構築すべきだと思います。日米関係を悪くするようなつもりはそもそも一切ございませんし、また日本が中国とアメリカの間で板挟みになってもいけないと思います。ただし、アメリカからすると、日本が中国を牽制するような手段として使ってもいけないと思います。3カ国が自分の基本的な権益のためにお互いに協力し合うというのは、非常に可能性が十分にあると思います。
 簡単ながら、以上であります。ご清聴ありがとうございました。


2. パトリック・クローニン 新米国安全保障センター上級顧問、アジア太平洋安保プログラム上級ディレクター



 まずは、時間はそう多くないですが、やはりこの場をお借りいたしまして、中国社会科学院の日本研究所成立30周年にお祝いを申し上げます。また東京財団に尽力して頂いたことに感謝申し上げます。もう本日の会議の終わりに近づいておりますが、アメリカの東アジア秩序に対する見方、とりわけ東アジアサミットの東アジア秩序構築における役割を中心にお話をしたいと思います。

 まず、そのバックグラウンドについて紹介したいと思います。アメリカのオバマ政府がどのようにして今年11月のパリにおける東アジアサミットのために準備をしているかということについて話したいと思います。今年のバリの東アジアサミットは、オバマ政府にとっては初めて参加するサミットなわけです。これまで幾たび、東アジアサミットが行われて来ましたけれども、アメリカにとっては初めて参加することになります。

 東アジアにおいては、その構造が大きく変化を見せております。今年は同時多発テロの10周年も迎えております。9・11を振り返ってみますと、多くのアメリカ人がその対応策について、その是非について議論しております。今日の午前、新聞を見ますと、アメリカ政府が間違っているような言論を見ました。テロ組織はローカルレベルの組織ではありますけれども、しかしアメリカ政府が大々的に対策を採っているため、地域的な組織が逆に勢力を広げたわけです。また一方でアメリは軍事力を大規模に投下して、テロ組織を撲滅しようとしているわけです。

 オバマ政権としては、その路線を変えようとしているわけです。ジュニア・ブッシュがやらなかったことをいまやってみようと考えているわけです。ジュニア・ブッシュ政権のときは、東アジアサミットはあまり重要視しなかったわけですので。ASEANあるいは東アジアの活動に参加する必要性についてはあまり注視しなかったわけです。しかしオバマ政権になりますと、やはりオバマ自身としては、東アジアのこのサミットに参加しようという強い姿勢を見せているわけです。これまでのテロ対策一辺倒から、いまのようにバランスをとり、できるだけ包括的な配置を使用としている傾向を見せています。もちろんこのプロセスにおいてはチャレンジ、さらには弱点も出て来ると思います。しかしこれは必要不可欠な過程ではないかと思います。

 アメリカの安全顧問が就任の挨拶をするとき、このようなことも話しています。アメリカ政府が新たにアジア、とくに東アジアの重要性を見直さなければならないということです。ジュニア・ブッシュの安全顧問が就任したとき、一連の談話を発表しています。いろいろな話をしましたけれども、やはり当時ブッシュ政権の注視する課題については、ブッシュ政権としては東アジアの地域構造の構築に目を配っているという話をしました。もちろん東アジアについては、やはり注目していますけれども、しかしテロ対策にあまりにも力を入れているため、なかなか東アジアに対しては実際のアクションを採る余裕はなかったわけです。

 また東アジアサミットといったような重要な地域レベルの交渉の場に参加する余裕もありませんでした。08年に研究所に入ったとき、私もわれわれの研究活動を通じまして、アメリカ政府には自らの外交政策を見直してほしいと助言をしました。当時、東アジアチームを担当する国務長官、そしてその後継者である東アジアの担当者も、当時われわれの研究所で研究をしていました。当時すでに政策面の提言も政府にしているわけです。つまり次の政府につきましては、やはり友好協力条約に調印し、それを批准するという助言をしました。また東アジアサミットに参加するよう助言したわけです。このような動向もあるがゆえに、これまでの口にとどまっていた東アジアに対する態度を、実際のアクションに回したわけです。しかしながら東南アジア、あるいは東アジアといったような、長い間見下ろされてきた地域につきましては、今後やはりアメリカにとってのこれまでのパートナー、シンガポールとか、あるいは新たなパートナーであるインドネシアとか、ますますアメリカと密接な関係をつくり上げつつあります。

 世界のこのような趨勢を注視しなければなりません。東アジア地域を見ますと、経済規模は15兆ドルに達しております。そして人口は15億人になっております。アジアの歴史もすでに長いものです。バリ条約に基づいたものであります。今年の東アジアサミットの開催地でもあります。ASEAN条約に調印してから、ASEAN諸国、東南アジア諸国としましては、域内の局地的な平和と安全を実現するためには、周辺大国の支持、あるいは周辺大国との意思疎通がなければ実現できないわけですので、その後ASEAN+8など、その枠組を拡大する努力も見られております。このようなマルチ、あるいはバイのメカニズムにさらなるその内容を付け加えております。

 さらには東アジアの地図上についての私の見方について言及したいと思います。これまでの発表者も言及しましたように、日米中関係につきましてアランさんのご意見に賛同いたします。またオーストラリアの学者は懸念も示しています。日本、そしてアメリカとしては、もしも真剣に中国の台頭を見守ることができなければ、その後深刻な結果になってしまいます。これらの現地的な向上は、やはり強い問題が存在しております。ですので、アメリカはやはり覇権には興味を持っておりません。中国もこのような野心はもちろん持っておりません。地域のリーダーになるというような野心は持っていないと思います。

 しかしわれわれが生きている、生活しているこの世界は理想の世界ではありません。理想の世界はやはりルールがある、あるいは理に適った世界であります。しかし現実的な世界を見ますと、もちろん望ましいものではないものの、やはり実行可能な前進するアプローチを提供してくれるでしょう。たとえば21世紀におきましては、もうすでにこれまでのような対立あるいはお互いに対抗するというような態度ではなく、やはり21世紀に入りますと、お互いに協力する構造を構築しなければなりません。包容性、透明性などを基本的な原則といたしまして、共通利益を見いだし、お互いの信頼を醸成することであります。これは東アジアないしはアジア太平洋地域の全体の特徴になると思います。

 東アジアは、アジアからかけ離れることはないので、やはり私が申しましたのも、アジア全体の特徴といえるでしょう。こういった秩序のある大国にとりましては、十分なる三角関係を支える力を探らなければなりません。もちろんこれは正三角形ではないかもしれません。しかし均衡の取れた三角形を構築する努力をしなければなりません。この3カ国の中では、いずれの国も海洋における貨物が阻まれたり、あるいは自然災害が発生したとき、救助が行き届いてないというのは望ましくないでしょう。あるいはエネルギーの共有には安全性が欠けている。あるいは経済の低迷も望んでいないでしょう。あるいは貿易赤字が拡大するなど、つまり、これら良くないことは望んでいないわけです。

 ですので、東アジアサミットにとりまして、このスケジュール、議事日程の設計におきまして、どう設計すればいいのでしょうか。東アジアのサミットの参加国は18カ国ですので、もちろんその内容もさらに複雑になっております。今年、バリ島において多くの会議が行われ、いろいろな準備の会議も行われました。東アジアサミットは良い契機であると思います。つまり東アジアの秩序の構築を促進する契機であります。またこのサミットで議論される議題も、政治、経済、安全保障などに及んでくると思います。経済におきましては、ルールを踏まえた透明、開放的な貿易システムの構築になると思います。

 今年、アメリカもハワイでAPECの会議を行います。先ほどの方が触れられました、エネルギー分野における協力。これも非常に包括的なプランであると思います。各国のエネルギーのトップがさまざまな角度、さまざまな側面から原子力の安全利用などについて、あるいはグリーンエネルギーの利用について議論することが可能だと思います。

 また台頭するアジア太平洋地域は、さらなる責任を負わなければなりません。1つの生き方があります。世界でもっとも貧しい10億人ですが、もちろんこの10億人は全部アジア太平洋地域にいるわけではありません。しかしアジア太平洋地域は貧困からの脱却についても、やはり真剣に考えなければなりません。また台頭する中国にとりまして、アフリカでは多く資金を投下しています。しかしこれらの資金は、アフリカの政府を通して使われております。なので、実際に恩恵を享受したアフリカの国民はそう多くないのではないかと思います。これについても反省しなければなりません。アメリカ、日本などの先進国も、国際支援において進んだ経験を持っていますので、これについても中国にとっては参考になるのではないかと思います。

 また東アジアサミットを通じまして、どのようにして域内における自然災害に対する対策についての協力を強化するかについても議論できると思います。また域内協力の強化も議事日程の1つになれると思います。東アジア、東南アジアの国々は、よくさらされていますので、日本もよくこれらの国の自然災害の救助に参加しています。いまやすでに一種のメカニズムができておりますけれども、しかしやはりバージョンアップの可能性はあると思います。

 また南シナ海における問題についても、ひとりでになくなってしまうわけではないので、やはりこれについても議論する必要があります。戦略的な判断が間違っていれば、一部の国は意思疎通、あるいは情報の共有の分野におけるやり方が間違っていれば、やはり他国にとっては一種の懸念になります。また関係国の共通の行為のルールも構築するべきであると思います。このマニュアルと作ります。拘束力のあるマニュアルを作ります。ですので、指導者としては、なすべきことは多々あると思います。

 と同時に、核兵器の拡散を阻止することも重要なことです。北朝鮮の核開発は世界的に注目されております。もしも原子力安全利用について議論していけば、核兵器の拡散阻止にも資するのではないかと思います。

 また東アジアサミットですが、とくにこの地域において、もっとも活発化している地域のコントロールが必要ではないかと思います。北朝鮮とミャンマーです。しかし中国は最近、北朝鮮に対して投資をすることを考え、特に工業団地の構築をやっております。アジアのパイプも北朝鮮を経由しますので、北朝鮮にも積極的に国際協力に参加してほしく、積極的に北朝鮮の非核化を促していき、これにより経済面の協力を進めることも必要であると思います。また東アジアサミットにおきましては、六者会談の復帰についても議論すべきではないかと思います。とくに政治経済のレベルでガバナンスのメカニズムを改善し、よって北朝鮮とミャンマーについてのガバナンスを改善するわけです。2010年においては、ミャンマーはこのような会議を行います。今年はインドネシアで行われます。もしも2014年にこの会議が行われれば、ホスト国としては多くのトップの人に来てもらわなければなりませんので、ミャンマーはいまからこれらの国に対して働きかけをしなければならないわけです。

 なので、中国、日本、アメリカとの協力を見ますと、4つの課題を見なければなりません。まず人道主義の支援と災害救助、気候変動と地震はマイナスの影響を及ぼしています。またこれらの災害は大きなチャレンジももたらしています。これは信頼醸成の基本的な過程であります。もしも災害救助において協力ができれば、多くの難題の解決にも寄与できると思います。災害救助は隣国、あるいは強い国とスピーディーに協力を進めなければなりません。そうすると、有効に、そして早急に解決できるわけです。

 また2点目ですが、原子力の安全利用です。世界はこれから原子力をあきらめることはなく、改めて見直す過程になってくると思います。たとえば北朝鮮の原子力発電所は、今後発展していくと思いますが、原子力の安全は歴史的な問題ではなく、今後も存在する課題ですので、世界あるいは地域のために原子力の安全性に注目しなければなりません。多くの国は中国、韓国、日本のように進んでいる国ではないのですが、原子力の発電所も考えております。またトヨタはいま、原子力を生かしたハイブリッドカーも考えているようですが、先ほど李さんもおっしゃられたように、これは中国の改革、開放のさらなる進展にとっても非常に重要なものです。

 ?小平氏は30年前から改革、開放のスタートを切り、日本から多く学ぼうと提唱しています。日本人は非常にイノベーションが得意な国です。それから歴史的、あるいは民族的な、あるいは今日議論されているさまざまな要因もあって、その後日本を勉強することはあまりなかったわけです。しかし日中両国はエネルギー分野におけるさらなる協力は可能であると思います。WIN-WINの関係の構築にも寄与できると思います。

 そして北朝鮮の非核化は、地域問題であると同時に、六者会談のメインテーマの1つでもあります。中国、日本、アメリカが密接に連携して、核実験、あるいはミサイルの問題について真剣に議論しなければなりません。そして核拡散の問題についても議論しなければなりません。そして北朝鮮の今後の経済発展についても議論をすべきではないかと思います。

 そして最後になりますが、これも重要な課題です。つまり東アジアサミットにとっての重要課題の1つである、有効なるマルチメカニズム、あるいはプロセスでもって海洋主権を巡る紛争を解決することです。とくに中国の南シナ海における紛争です。中国の東シナ海、あるいは南シナ海における紛争についても真剣に議論すべきであります。これらの紛争には、やはり誤解が存在しているのは事実であります。これらのクライシスにつきまして、先見の明をもって戦略を立てれば、リスクを回避することができます。ですので、東アジアサミットにおいては、これについて強化しなければなりません。

 アメリカは初めてこのサミットに参加しますが、非常に良い兆しであると思います。われわれは強い国、最近強い国になりましたが、アメリカも中国の声に耳を傾けております。東アジア、プラス太平洋という地域には、知恵を絞って地域内、あるいは地域外の問題を解決してもらいたいわけです。
 以上です。ご静聴どうもありがとうございました。


3. 柳澤協二 日本生命顧問、元内閣官房副長官補



 ありがとうございます。ここまで来ると、いろいろなご意見が出て、日米中の相互理解が極めて重要だという点では、すべての出席者の意見は一致しているのだろうと思います。ここで私は枠組の話をしたらいいのか、あるいは個々の問題について話をしたらいいのかということをだいぶ迷っておりますけれども、実は昨年のちょうど今頃、尖閣で漁船の衝突事件があって、11カ月前、私は北京に来て、蒋立峰先生、李楊先生、あと日本研究所の皆さんと議論をさせて頂きました。今日も会議の冒頭に先生から、私に対する豪速球のような、非常にストレートな問題提起もあって、そこにもちょっと触れなくてはいけないという。こんなことを考えております。

 その枠組の問題として申し上げれば、いまのクローニンさんの話にもありましたように、EASが拡大していくというのは大変いいことだと思います。とくにアメリカは伝統的にアジアに対するバランサーの役割を果たしてきたわけですから、冷戦当時のような、中国を封じ込めるとか、あるいは中国を無視するという意味ではなくて、地域のバランスを、地域の外にあって、むしろ維持する。そういうプレーヤーとして、役割は依然としてというより、ますます重要になってきている。なぜそうなってきているかということを、東アジアの変化という観点から申し上げてみたいのですけれども、東アジアでいろいろな信頼醸成の会議体があります。ARFとか、いろいろな会議体があって、同じようなテーマで議論をしていて、それはその信頼醸成の意味では非常に大きな意味を果たしているのですけれども、しかしながら、国と国との利益が正面から対立するようなテーマについては、なかなか成果が得られない。そこにアジアの多様性での限界というものがある。

 その根源を追ってみると、私は別にアメリカを批判するつもりで言うのではないのですけれども、結局、この地域にはアメリカの同盟国がいくつかある。それからアメリカに基地を提供して、アメリカのプレゼンスを可能にしているアメリカの友好国というグループがある。そしてASEANという、同質のような国のメンバーがある。そしていずれにも属さない中国というきわめて大きい国がある。こういう構造をしておるものですから、地域としての統一した安全保障観というものが出てこないのは、ある意味、当然なのだろうと。

 従っていろいろな意味の、いろいろな形の信頼醸成の場というのは重要で、それは広げていくことによって仲介者が多くなるということは、そういう意味では広がっていくのはいいことではあるのですが、域外のメンバーがたくさん入って来るということは、それだけ議論が拡散して、なかなか実効的な成果が上がらないというジレンマが一方であるのだと思います。

 そういう面でも、やはりコアになる国がしっかりとインナーサークルをつくって、そういう地域のマルチの議論をリードしていく体制をつくっていくことが、ぜひ必要なのだろうと思います。そういう観点でも、やはりアジアへの関わり、経済的な面から言っても、軍事的な面から言っても、やはりアメリカ、中国、日本という存在は非常に大きいのだろうと。その三国の相互理解というものは、非常に大きいのだろうと思います。

 防衛白書の話も出て、別にいま私は政府を擁護する立場でもありませんが、私は読んで利口にならない本は読まない主義ですので、防衛白書は読んでないのです(笑)。けれども、日本のティピカルな中国の軍拡に対する批判のしかたというのは、軍の近代化を進めていて、空母まで持って、しかしその目的や戦略目標が不透明であるがゆえに、中国の軍拡を懸念するのだという批判の仕方をしているわけですね。

 しかし私、それは必ずしも不透明であるとは思わない。それは中国がちゃんと説明しているからではなくて、軍隊の構成、あるいはウェポン・システムというものには、何も言わなくても、自ずから客観的に出てくるメッセージがあるからであります。そういう意味で、私は海上自衛隊の専門家とも、この間だいぶ議論をしておりますけれども、中国の軍拡、あるいは空母を持ったことが脅威になるとは、私は個人的にはまったく思っておりません。そして中国がそういう軍拡をしていくということも、海洋に向かって発展する大国として理解もできるし、ある意味、当然の方向性というふうに思うのですね。

 しかしながら、たとえば空母というのは、客観的にどういう兵器かと言えば、パワープロジェクションのための兵器なのですね。カジノに使うためではないので、それは何かというと、昨年のアメリカのQDRに言われておりますところの中国の接近拒否能力というか、アメリカの言うanti-access capability という文脈、あるいは中国で言うところの近海防衛という文脈をはるかに超えた役割を持っているウェポン・システムなのであります。それを別に持ってもいいし、どう使っても、国際法のルールの中でお使いになる限り、それは中国の選択の問題なのですね。

 ところが、まったく同じ理由でそれを周辺国がどのように認識して、それに対するどのような対抗策を採ろうとするかというと、これも周辺国の選択の問題なわけです。従って私たちは、こういうことをきっかけに、アジアにおける無駄な軍拡競争を導かないようにする必要があるのだろうと思うのです。そのために一番のコアになるのが、やはりアメリカと中国と日本。日本というより、とくにアメリカと中国の戦略的な相互理解がきわめて大きいと思うのですけれども、小さいながらも日本も、日本の基地がなければ、アメリカのこの地域のプレゼンスも十分にはできないわけですから、日本もぜひそういう議論に参加していく必要があると思います。

 もう一つのアジアの変化というのは、やはり海洋の利用を巡っての摩擦が生じていることなのだと思います。これは、私はこういう現象を、ですから、中国脅威論という言葉には、私は反対なのですけど、どう説明したらいいのか。つまり冷戦時代の脅威というのは、お互いが理論的には相容れない体制同士の対立で、どちらかを、敵を選別しなければ、理論的には終わらない。そういう対立が冷戦構造であったわけですが、いまのこの摩擦、あるいは競争というのは、同じ方向に向かってみんなが発展しようとするときに、私はよく東京のラッシュアワーの例を言うんです。同じドアに向かって、みんなが下りようとするときに肩がぶつかったり、足を踏んだり、そういうフリクションはたぶん避けられないのですね。ただ、それは冷戦のように、相手を殲滅しなければ解決しない、そういう問題ではない。むしろ順序よく下りればすむだけの話ではないかということなのです。

 ですから、個々の島を誰が持つかという話は、これはまたその問題は永遠に解決しない問題なのかもしれない。しかしながら、いかなる大国も世界中の海を独り占めにしたりするわけにはいかないわけだし、海洋というのは人類の共通の資産でありますから、むしろそれを配分の問題として扱っていこうとする政治リーダーの頭の切り替え。しかしこれは、先ほどから出ているように、たぶんそんなことを言ったら、日本では選挙で負けますから、なかなか言えないとは思いますが、そういう主権というか、dignityの問題として捉えるのではなくて、とくに海洋の権益の問題をdignityとして捉えるのではなくて、distributionの問題として議論する。そういう枠組をつくっていく。それはたぶん拡大したEASのような場が非常に役に立っていくのではないかという気がしております。

 それから李薇先生の豪速球に少しだけお答えさえて頂くと、日本には戦略があるのかと言われました。しかし大国になりたいというのは願望であって、それはテロを許さないということも意思であって、それは戦略ではない。戦略というのは、それを実現するために何をするかという、そのプログラムを戦略というふうに呼ぶのだと思いますが、そういう意味では、私はまさに官邸に総理のスタッフとして5年間おりまして、インド洋、それからイラクに自衛隊を派遣し、そのことによって日米同盟はbetter than everな関係であると言われるようになったわけです。いつも中国の方から怒られる日米ガイドラインの強化の仕事も、私はずっとやってまいりました。

 ですから、日本はそういう方向で、日米同盟のグローバル化ということを通じて大国化ということを果たそうとした。その一つの典型的な例が、小泉総理が2005年の国連総会で、安保理改革を主張するときに訴えた、日本はいまやイラクでも国際協力の役割を果たしていると。こういう話だったと思います。しかし、もはや日本はそうした形の、いわばboots on the groundの協力によって日米同盟のbetter than everを維持するようなことは、そういう力はもうなくなっている。あるいはそういう方向性をもう一度見直さなければいけない。そういう状況になっているのだと思います。

 ですから、戦略があるかどうかと言えば、いまだに政府が日米同盟だけを維持すれば、すべての問題がうまくいくと考えているとすれば、戦略がないということだと思います。私は日米同盟は大切だと思いますが、それは本当にその地域の共通のアセットとして使っていかなければいけない。もっとその同盟だけではなくて、インターナショナリズムでありますとか、あるいは中国なんかとの場合の外交の戦略というものを持っていかなければ、日本の外交に明日はないと言いましょうか。

 私も専門は、敢えて専門ということを言わせて頂ければ、政治が軍隊をいかに使うかということに関するもので、political military relationsだと私は自分で言っておるのですけれど、先ほど申しあげたように、軍隊というのは、やはり強くなりたいのです。それが仕事です。どんどん新しいウェポン・システムを入れていくのです。それは軍隊の宿命です。それをどのようにコントロールし、どのように使っていくかというところで、政治の良識が問われるということだと思います。そういうことに向けて、ぜひ本音の対話ができるような。そしてこれはあまり大きなEASの場でそのままやるわけにはいかない。やはりそのコアグループとしての日米中がそういう議論をもっと深めていかなければ。中国に毎年私が来ても、毎年同じ疑問が出てきて、同じ信頼醸成のことが議論される。そういう時期をそろそろもっと中身のある段階に切り替えていかなければいけない時期に来ているというふうに思っております。
 ちょっと長くなりました。以上です。


■コメント


1. 李向陽 中国社会科学院アジア太平洋研究所所長



 お二人の観点は、非常に私も同感します。残り10分ありますので、4点ほど触れたいと思います。まず1点目。日中間の安全協力に関しては、実は中国としては一番期待しているわけです。なぜかというと、この3カ国の安全関係においては、中国は弱い立場になります。アメリカと日本を併せると、中国の数十倍をはるかに超えているわけです。アメリカが日本に対して核兵器、また武器の保護をしているわけです。したがって日本は心配しなくていいわけです。ただ、中国がよく言っているのが、日米安保同盟の条約の中には、実は必ずしもはっきりしていないものがあって、中国はそれで憂慮しているわけです。3カ国はアデン湾で、実は非常にうまく協力をしているわけです。この協力体制をさらに東アジア、西太平洋にも広げていくべきだと思います。

 2つ目、中国の軍事力の拡張に関してですが、疑いなく、この20数年で中国の軍事予算が2桁のペースで伸びてきています。ただし、その武器の部分の予算ばかり皆さんは見ていて、その人件費などのほうには目が向いていないわけです。少し秘密を皆さんに教えます。いま軍人の給料、私自身も含めて、2006年の7月1日からいままで、約3倍ぐらい上がりました。私のいまの給料は、2007年までは月約3000元ちょっとぐらいです。いまは1万元以上になっています。いま、大臣以上の給料をもらっています。したがって中国の軍事力の増強というのが、実はある意味では補助的なものが非常に含まれているわけです。先ほど柳澤先生の観点に非常に同感しています。軍事力の増強というのは自然なもので、問題はこれをどう使うかというポイントです。

 次に南シナ海の問題、南海の問題についてです。いま中国が周辺国と衝突があるわけですが、ただし中国がいままで軍事力を生かして周辺国を抑えようとは、いっさいしていません。ただし、本当に中国はいままで軍事力を生かしたことは1回もないのです。フィリピン、インドネシアなどが、中国の漁船、漁民を抑えたときに、われわれは軍艦を救助には出していません。いずれも外交ルートで解決を図りました。

 この問題について、いま南シナ海で紛争があります。ベトナム、フィリピンがいろいろと海上の石油開発をしていますし、いろいろと商売になったわけです。中国はいままで1回も石油の開発には手を出していません。中国をいじめた小国が、自分は被害者だと一生懸命に叫んでいます。傷つけられた大国の中国が悪い人だというふうに指さされています。これはやはり理不尽です。

 次、3つ目について、透明性の問題についてです。中国の透明性は、実はいま次第に改善しています。ただし、透明性というのは軍事力の透明性のみならず、やはり軍事的な、戦略的な意図の透明度というのも実は重要です。それについては実は誤解がたくさんあります。

 2007年に、当時太平洋司令部の司令官とclosed doorの対話をしたことがあります。中国の空母の問題。私が言ったのが、空母を造る中国のねらいは、アメリカと戦うというような目的ではありません。もし戦争を起こしたら、絶対中国は負けます。お話ししたのは、考え方をちょっと変えてみましょうかと。中国はより強い兵力を搬送する能力がもしあれば、中国、日本、アメリカがシーレーンの安全を保証するということは可能ではないでしょうか。それが責任のシェアリングというふうに私は言っていました。米国のキーティング氏は、これは不断のシェアリングだというふうに彼は言っていました。ただし、アメリカに帰ったら、実は私の言おうとしている意図を誤解したわけです。彼に言わせると、中国がアメリカと一緒に海洋をシェアしようと。したがって戦略的な意図の誤解は、軍事量に対するものよりもっと恐いのであります。

 クローニン氏から海上のルールについてのお話がありました。これは非常に重要であります。国際法、また国連海洋法などの条約を守り、周辺国の権益を尊重しなければなりません。無害通航というような原則をやはり守るべきであります。innocent passage。軍事行動などを行うと、無害通航にはならないわけです。また中国に最も近い海洋で偵察をするということ。そういう行為も、実は衝突の元になるわけです。

 したがって、やはりお互いに相互信頼を深めて、このような信頼を脅かすようなことをやめるべきであります。もし相手を信頼していれば、また日中米、そして海上におけるアクシデント、突発事件の防止に関する協議も結ぶべきであります。こういうような対話の体制がいろいろな面において、基本的に重要だと思います。総じて言えば、日本も中国もアメリカも、やはり東アジア地域における安全、安定、発展のための責任があるし、また貢献すべきだと思います。
 以上です。


2. マーク・マニン 米国連邦議会調査局アジア地域専門官



 ありがとうございます。主催者側にまず感謝の意を表したいと思います。中国社会科学院、日本東京財団の皆様が、今回このような貴重なチャンスを与えて頂いてありがとうございます。シミズ様と私の2人が、このシンポジウムでの発言について打合せをしたときに、実は私の発言の場が最後に回されたということがわかりました。午前中だったらもうちょっと頭がクリアなのに、いまはちょっと眠くなっています。

 先ほど、TPPとアジア地域フォーラムの話に触れました。まずアジアサミットに関してですが、いまなぜアメリカがアジアサミットに参加したがるのかということについて、実はいくつかの肝心な要因があります。先ほどクローニン様がいくつかの要因について触れたわけですが、当初そのサミット設立のときに、アメリカ政府はそんなに関心がなかったわけです。ただし2008年のときに、ワシントンでコンセンサスが得られて、このEASに参加するという関心を寄せたわけです。実はEASの設立当初には、アメリカ政府はそんなに関心がなかったわけです。これはクローニン氏の発言とちょっと違います。オバマ政府が当初の立場を変えたわけです。チェンジしたわけです。

 もう1つの変化は、オバマ政府がやはり東アジア、またその他の国の国民のアメリカに対する見方が非常に悪化しているということで、そのイメージチェンジを図ろうというのも1つのきっかけです。とくに去年において、東アジア地域の国の国民から、アメリカの東アジアに接近、また意思決定に参加してほしいというような声がありました。去年、たとえばベトナム、マレーシア、インドネシア、またみんな懐疑的に考えている韓国、日本の国民たちに対しても、実はアメリカの東アジアへの参画をウェルカムだというような声がありました。

 安全問題に関しては、われわれが確かに一種の困惑がありまして、東アジアにおいては、国と国の違いがかなり大きいもので、とくにマレーシア人についての南シナ海の紛争からわかりますように、マレーシアがいままでの政策を調整したわけです。アメリカの南シナ海におけるプレゼンスを排除しようと。

 もう1つの重要な見方が、アメリカがEASに参加する意図、動機というのも、実は変化しています。先ほど楊様がおっしゃったように、これは防衛的なやり方。なぜかと言うと、いままでのEASが、実はアメリカを排除しようという警戒感がありました。ただし、いまアメリカのEASへの参加の動機、意図については、やはりアメリカからすると、これが地域の安全、またその平和維持の非常に重要なチャンスだというふうに考えるようになったわけです。クローニンさんの意見に対して多少批判的になりますが、多くのアメリカ人はEASのプロセスよりも結果が重要だと。こういうASEANみたいな国際組織は、いつも会議のための会議をやっていると。その成果よりもプロセスが重要だというような考え方をしているわけです。アメリカがそういうやり方を別に好むわけではないので、やはりその結果が重要だというような考え方を持っています。

 中国、日本、アメリカがエースを引退する態度というのは、実は極めて重要です。議論のための議論だという会議であれば、アメリカ人からするとおもしろくない。それよりもっと実務的な成果を期待するわけです。ただし、いま中国も実はEASに対して関心度がますます高くなってきています。これは中国国内の情勢の変化も要因だと思います。つまり中国は国際舞台に、たとえば10+3にもっと積極的に出るべきだというような見方が増えています。

 最後に、李先生が触れた経済の角度からの問題です。今年が東アジア一体化の重要な年になるかと思います。アメリカがEASに参加するし、初めてアメリカが東アジア一体化の中で一石を置きたいと初めて明言しているわけです。アメリカと韓国とのFTAが締結されました。これが北米とのFTA締結以来のもっとも重要なFTAであります。中国はTPPに入るかどうかということは、これは実は北京の姿勢次第です。どこの国でも参加したいという意欲、意図があれば、参加の交渉ができるわけです。アメリカとしてはTPPから中国を排除するつもりもないし、これは要するに中国の態度、姿勢次第であります。
 以上です。


3. 渡部恒雄 東京財団上席研究員



 ありがとうございます。実はさっきのセッションのモデレーターをやっていて、最後のコメンテーターって、これはなかなか賢いやり方でした。前のモデレーティングで時間を余計に使ったら、その分自分の時間がなくなるということで、一生懸命さっき時間を守りました。皆さん、このやり方は今後も使って見るとおもしろいのではないかと思います。

 最後、コメントさせて頂きますが、まずちょうどさっきの李先生のコメントに、マーク・マニンさんもコメントしたので、TPPのことを私もそこから話させてください。というのは、私も中国に来て、中国の研究者の方とか、学生の方なんかと意見交換をして、これはちょっと誤解をされているのではないかなと思う点が1つあるのがTPPに関してです。というのは、どうも私の印象だと、TPPというのが日本とアメリカが中国を排除するためにやっているのではないかというふうな疑いを持たれているような気がするんですが、これは誤解でして、1つはTPPというものは、先ほどマニンさんが言ったみたいに、誰でも入れるものだということなのです。

 それともう1つは、TPPに入るのは、日本も相当苦しいのですね。これはどの国でもそうなのですが。とくに日本の場合は、農業分野の大きな抵抗があって、TPPというのはなかなか政治的にも楽なものではないのですが、ではなんで考えているかというと、1つは、日本は経済発展、経済成長もそろそろ行き詰まって、なかなか伸びないのですけども、その解決策として、やはり発展するアジア太平洋地域の人たちと、より貿易を広げることによって成長したい。こういう気持ちがあるのですね。

 さらにテクニカルなことを言えば、先ほどこれもマニンさんが言っていたのですが、実は韓国が一生懸命フリートレード政策をやっていまして、韓国と日本というのは、工業製品、とくに自動車なんかではライバル関係にあるということですね。私なんかも、北京に来ても何が気になるといって、車に乗っていると、ヒュンダイの車がビュンビュン走っていることに大変危機感を持っているのですね。それはどういうことかといえば、やはり日本がこれからも安定して経済成長していくためには、対等な競争をしたいからです。そういうところで先行している韓国の自由貿易政策にある程度追いつかなくてはならない。そのための1つの手段である。ですから、本当に中国を外そうという意図はまったくない。これは1つ、誤解を解いておきたいと思います。

 さらに言ってしまうと、韓国がEU、ヨーロッパのほう。これがまたフリートレードを進めていますが、これも実はTPPというものをやることによって日本に対してEUに振り向かせたい。こういうこともあるのですね。だからまったく実は中国と関係ないところでゲームは繰り広げられているというところだと思います。

 それからもう1つ誤解を、実は今回出た誤解じゃないのですけど、こういう誤解されているのだなと思ったので、話してみたいんですが、これは日本の前の政権、鳩山政権に関してです。鳩山政権は、ご存じの通り、基地問題等で、非常にアメリカの政府との意思疎通で齟齬があって、それで結果的にはその責任をとる形で退陣しました。中国側の誤解は、これも質問を受けたのですけど、アメリカが圧力をかけて、アメリカとの関係よりも中国の関係をある程度強めようとした鳩山政権を退陣させた。その鳩山さんと民主党の小沢一郎さん。この人たちはより中国寄りであって、それに圧力かけたというのですが、これもちょっと違いますよね。何が違うかというと、まず鳩山さんと小沢さんは、最初は組んでおりませんでした。順番が逆なのですね。鳩山さんは党内で賛成を得られないで、退陣させられたから、それで今度小沢さんと組んだと。順番が逆なのです。

 それからもう1つは、今回の鳩山さんの問題点というのは、中国との関係を良くしようとしたから失敗したのではなくて、基地問題の解決をしようと思ったところに、どちらにも、つまりアメリカ側にも、あるいは沖縄にも、お互いにいいことだけを言って、結局その辻褄が合わなくなったので、もうどうしようもならなくて辞めたということです。

 逆に言えば、鳩山さんは逆の方向で、つまり基地問題をもっと積極的に解決しようと思ってとり組んでいれば、アメリカのオバマ政権も、そこはきちんと対応することができたのだと思います。これはもう完全に、自分のところの元総理をこんな言うのはなんですが、自分で失敗した、自滅したということだと思います。

 それで、今日のテーマの1つのEast Asia Summit、東アジアサミット。これについてちょっとコメントさせて頂きたいのですが、やはりおもしろいことに、最初にどちらかというと、トレードとか、経済協力の場合に、安全保障の話が出ましたよね。セッション2でもいろいろな話、経済の話、安全保障の話、出ました。これ、やはり一緒に話して、今回、良かったんだと思います。これはつながっている話ですよね。つまり軍事力をある程度近代化していくためにはお金がいります。そのお金を稼ぐためには、経済成長したり、貿易をしたり、そういうことをしなくてはならない。このへんのいいバランスをうまく持っている国が、世界が平和になるのですよね。もし飽くまでも軍事力にこだわりすぎて、それで国を豊かにするために、自分たちを守る力が強いほうがいいといって頑張っても、それで軍備拡張競争が起これば、それは危機的な状況にもなるでしょうし、何よりお金が足りなくなる。

 ここで、私は今日、せっかく日米中で考えるのですから、先のことを考えて頂きたい。先というのは、たぶん20年後とか、30年後ぐらいだと思います。いま日本も、アメリカも、たぶん世界で一番借金をしている国で、お金がないです。お金がない理由というのはいろいろあるんですが、1つは経済成長というのは、どこかの時点で、やはりゆるくなるんですね。アメリカはわりといろいろな要素で、人口も増えていますし、あまり悲観的になりすぎる必要はないと思うんですが、日本の場合は、もう人口も増える見込みはありませんから、恐らくヨーロッパ諸国がなっているように、低成長で、ある程度大きな経済成長はできなくなるという状況になります。

 そうなってくると、とてもじゃないけどお金がかかります。とくに日本の場合は少子高齢化。これはもう中国の専門家の方は見てられると思うのですが、日本がもう1回、たとえば核兵器みたいなのを作って、軍備拡張して、アメリカとの関係をより独立的にしてやりましょうなんて言ったって、現実的にお金がないわけですね。そんなことしたらば、大変日本国民は不幸になる。もちろん日本の周りの中国の人も、韓国の人も、みんなハッピーじゃない。

 そういうことを考えると、やはり安全保障と自分のところも財政、経済というのをずっと長く考えなくてはならないわけです。それを考えるとして、いまは日本とアメリカはお金がない。それでもなんとかやっている。今後、中国はいま財政的には非常に豊かですよね。お金もあるし、先ほど楊先生がおっしゃられたような、中国というのは自分たちのために軍事力を近代化したい。それはもう当然そういう権利もある。

 ただし、これは柳澤さんがおっしゃっていましたけど、ちょっと考えましょうと。この先ずっとそんなにお金を使っていると、相当苦しいと。楊先生、言われましたけど、人件費がかかる。将軍の給料が非常に上がる。これは実はアメリカもそうなのですね。ここ10年、20年ぐらいで、給料が、とくに偉いジェネラルの給料が上がっちゃって、やりくりがえらい大変になった。それをもうちょっとみんなでやりくりして、何とかそのお金をセーブできないかということを、そろそろ考える時期なんじゃないかと思います。

 とくに中国の場合は、やはり私が20年後、30年後と言ったのは、今日のセッションでもありましたけども、これだけの人口を擁している国で、少子高齢化というのが間違いなく、日本のように、後々やってくる。そこにたぶん社会保障費として、相当なお金を使わなくてはいけない。そのお金を使わないと、社会が安定しない。不安定化になる。

 たとえばこれもアメリカの人には悪いのですが、レッスンなのですが、アメリカは国民皆保険システムという、医療費を国が負担するシステムをちゃんと、本当にお金があるときにつくらなかったから、いま大変苦労している。オバマ大統領が呼びかけても、むしろそれに反対する人たちがいて、なかなかコンセンサスができない状態がある。中国も、20年後、そのへんを見て頂く。それで、あのときによく考えておけば、もうちょっと楽だったなという時期が来るのではないかと思います。

 実は中国に来て、大変なご馳走攻めでして、毎日おいしい中華料理を食べています。ただ、いっぱい出るでしょ。それを全部食えないのですよね。食いきると眠くなっちゃうし。でも、あのときにちょっと食わないで取っておいたのを、日本に帰ってから、あの中華料理、食いたかったと言っても、もう遅いのですよね。

 恐らく、社会保障費と軍事費の関係というのを、もう少し長い目で見るというのは、とくにアメリカと中国、この人たちというのは、たぶんわれわれ日本人からすると、大変先見の明があって、戦略的な人たちなので、これは日本人に言われたくないわと思っておると思うのですが、ぜひそういう戦略案を考えて頂ければいいなと思っております。そしてその場として、1つは、こういう日米中の場というのをより発展させていってもらえばいいし、あとEast Asia Summit、これはやはりそこにさらに東南アジアの国が入る。それからロシアも入る。非常に建設的な場にして頂ければいいのではないかなと思っております。ありがとうございます。


■ディスカッション


張宇燕 残り2人のプレゼンテーターからコメントをしたいというような声がありましたので、まず王少普(上海交通大学教授)さんからコメントを頂きます。

 主催者側の準備とお招き、ありがとうございます。そして専門家の皆様のすばらしい講演、どうもありがとうございました。大変勉強になっております。

 3点だけ申し上げたいと思います。まずは、東アジアのマルチの協力の特徴です。この特徴は2点挙げられると思います。まず東アジアのマルチの協力のアプローチは多様化を呈しております。そしてアメリカが積極的に東アジアの協力に参画しようとしております。この2つの特徴は、東アジアの協力に複雑性をもたらしています。

 そしてこういった状況の下、皆様のおっしゃる通り、日米中3カ国が良好な関係をつくるのは、東アジアの協力を良好なる方向に導いていくことに資することであります。そうすると、どのようにして日米中関係を良好なる関係に築き上げていくのか。やはり3カ国はわりと平和、開放、対等な関係をつくるのがもっとも重要だと思います。皆様の発言をうかがいますと、経済と安全の面に多く言及していますけれども、やはり安全面においての相互不信について多く言及しております。しかし当面の客観的な条件を見ますと、やはり日米中3カ国の関係が均衡、開放、協力的な関係を構築する方向に向かっているのも見られます。

 まずその条件を見ますと、1点目。グローバリゼーションの発展です。共通の利益がますます多くなっております。歴史的に見ますと、戦後、あるいは冷戦終焉を見ますと、日米中の間にはいまのような共通利益はなかったわけです。

 そして2点目は、中国は平和的発展という道を選んでいます。よって日米中3カ国がこういった関係を構築する大前提ができているわけです。

 3点目の意見ですが、どのようにしてわりと均衡、開放の関係をつくるかと言いますのは、やはり2つの不確定要素を明確にしなければなりません。まず1点目は、中国の発展性の不確定性です。中国は大国であって、その発展は確かにさまざまなチャレンジにさらされています。現段階を見ますと、国内においては不確定要素がただ存在しております。たとえ