東京財団政策研究所 No. 7

公益財団法人東京財団政策研究所のリーフレットです。非営利・独立の民間シンクタンクとして、外交・安全保障、経済・社会保障、環境・社会分野の政策提言・普及活動と、国内外で実施する各種人材育成プログラムを行っています。


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04新型コロナウイルス危機の影響1歴史家によると、人類の歴史はウイルスとの闘いであったといわれている。今回の新型コロナウイルスについては、なぜ感染がここまで拡大してしまったのだろうか。当初、科学者は通常のインフルエンザウイルスを念頭において、その感染力と毒性について軽視する発言があった。とくに、初期段階においては、新型コロナウイルスの感染ルートが解明されておらず、その結果、感染者に対する隔離措置が遅れ、主要国のほとんどが医療崩壊に陥った。そして院内感染が、大規模感染を引き起こした主な原因の一つだったといわれている。中国では、2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)禍を経験したため、都市のロックダウンこそ遅れたが、比較的早い段階から人々にマスク着用の呼びかけをした。日本においては、通常、冬の季節にはインフルエンザ予防のため、日常的な衛生習慣として手を洗い、消毒することが励行されている。とりわけ、春先は花粉症の季節でもあり、マスクを着用する人が多かったため、それらの対策がウイルス感染を抑制する効果があったとみられている。それに対して欧米諸国は、初期段階において明らかに新型コロナウイルスの感染力を軽視していた。アメリカは、1月と2月に爆発的に増えた中国での新型コロナウイルス感染を、あくまで地球の裏側で起きたことであり、対岸の火事とみていた。またアメリカ人は、普段からマスクを着用する習慣はほとんどない。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)やトランプ大統領は、記者会見でマスクの着用は必要ないと言い続けていた。一方、ヨーロッパ各国にしても、中国は極東の国でしかなく、故に、そのウイルスは遥々ヨーロッパまで侵入することはないとみていた。ヨーロッパにとっても中国発の新型コロナウイルス感染は、アメリカと同じように対岸の火事であったのだ。しかし現実は、社会・経済活動ともグローバル化されている。実際、2018年現在、国際観光をした人は14億人と推計され(図表1参照)、そのうち、中国人旅行者は2億人にのぼるとみられているのだ。ここから推測すると、新型コロナウイルスの基本再生産数(R0)はまだ確定される状況にないが、科学者の当初予測よりも高いレベルに達するはずである。また、新型コロナウイルスの感染拡大をもたらした要因として、その他、二つの点があると指摘しておきたい。一つは、中国政府の初動が遅れたために、中国国内で感染が広がったということである。少なくとも2019年12月には感染例が報告されたにもかかわらず、患者の隔離が行われていなかった。現に武漢市がロックダウンされたのは1月23日である。これは、明らかな初動の遅れといえる。もう一つは、世界保健機関(WHO)の対応遅れによる感染の全世界的な広がりである。振り返れば、日米をはじめ世界主要国が中国からの外国人旅行客の入国を制限し世界的な感染拡大は、何が原因となり起こったのか?本論/6つの視点から中国経済の展望と世界への影響を推察する「脱中国」を視野に入れることで、新しいサプライチェーンの構築を!ChinaWatch5


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