アフリカに光を!―ナイロビレポート(3)―ガソリンスタンドで聞く現地の人の声(井上直美)

ターゲットとする顧客へどのように商品を届けるかということは、d.lightにとって重要な戦略的問題です。ケニアでの販売の拡大のために、販売チャネルとして協力している企業の一つにTotalというフランス系のガソリンスタンドがあります。ここで起こっている問題を確実に捉えて在庫や品質管理を改善し、彼らの意見を商品開発へ取り入れていくことは、d.lightのマーケット拡大にとっては大切なことです。

今回は、このTotalステーションでの取り組みを、ブランドプロモーション、セールススタッフ、顧客の3つの観点から、私が実際にナイロビ近辺のTotalステーションを訪れて確認した状況を交えて紹介したいと思います。

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ブランドプロモーション


Totalステーションでのブランドプロモーションが、自社製品への顧客認識を計画通りに高めているかを確認し、効果的なブランド構築を行うことは、d.lightにとって重要です。要素としては、十分な在庫があること、プロモーションのために用意された広告材料が適切に活用されていること、そして統一した価格で商品が販売されていることなどです。

(写真:各Totalステーションでの商品ディスプレイの様子)


実際の各店舗での商品の管理状況は様々で、その品質を一定に保つのは非常に難しいのが現状です。例えば、私が直接訪れて確認したいくつかのTotalステーションでは、売れ行きの良いと思われるS10(灯油ランプ型のランターン)の在庫が約半分の店舗でありませんでした。聞いてみると、1か月も新規在庫の入荷が無いという店舗もありました。一方で売上を確認すると、S250が売れ筋ということを店員は認識している模様。これでは、本当にS250が売れ筋なのか、たまたまS10 の在庫がないからS250が売れていたのか判断がつきません。Totalのどこで在庫納品が滞っているのかは定かでなく、これを改善することが必要と感じました。また、価格についても店舗によって若干の違いがあり、商品の展示方法や広告材料の活用方法も店舗によって大きくばらつきがありました。
※d.lightのソーラー・ランターンは全3種類。価格の安いほうからS10(約12ドル)、S20(約15ドル)、S250(約40ドル)の順。(写真:d.lightのソーラー・ランターン)

セールススタッフ


商品を販売するガソリンステーションのスタッフの商品知識や顧客コミュニケーションの取り方は、商品の売り上げに大きく影響します。具体的には、店舗スタッフが商品を正しく理解していて、それを顧客に説明できるかなどの点が確認すべきポイントでしょう。

店舗内での商品認知はきちんとされており、商品のことについて尋ねて詳しい内容を話し始める段階になると、商品トレーニングを受けたスタッフを呼んで、商品の説明をしてくれるところがほとんどでした。ただし、商品の詳細スペックについての知識は店舗毎、あるいはスタッフごとにばらつきが大きく正しい説明ができていない場合も多いようでした。セールス技量にも大きく差があります。セールスインセンティブについての認識にもばらつきがあり、モチベーション高く顧客に商品をアピールする販売員もいれば、その逆の販売員までさまざまでした。

商品知識をすべて正しく説明できることは大切であることは間違いありません。ただ、一生懸命に顧客と対話しながら商品の説明をしている販売員と話をしていると、商品知識を間違いなく正しく伝えることも大切ですが、それ以前に顧客の立場に立ってその商品がいかに自分の生活に役に立つものかを顧客へ正しく理解してもらえることが重要なのではないかと感じました。S250は使い方次第では、1週間でも充電なしで使うことができます。ただ、顧客が困っている問題が、一夜部屋を限りなく明るく保ちたいということであれば、彼らにとって大切なのは、S250を持つことで部屋中が明るくなり一晩中明りに困ることは無いということを伝えることでしょう。それをまず理解してもらい、顧客の問題を解決できることを示すことが大切なのではないかと感じました。それに加えて、これ以上のメリットがあるということを伝えることで、S250を手にした人はより豊かな生活ができるようになるのだと思います。(写真:Totalステーションで提供される商品の保証書)


顧客


実際に商品をTotalステーションで購入している顧客を知り、彼らがどのようなきっかけで商品を購入しているのかを知ることは重要です。実際に現場の販売員に質問すると、想像していた顧客や利用方法とは違う像が顧客として浮かんでくることも多かったです。ここではその一部を紹介します。

マタツドライバーのランターン購入。マタツとは、ナイロビ市内を縦横無尽に走るハイエースの乗合バスです。朝から夜までナイロビの悪路を荒っぽい運転で排気ガスを撒き散らしながら走ることで有名なマタツですが、その荒っぽい運転のせいか、故障が多いのもその特徴といえます。ナイロビの道は日本のように街灯が整備されておらず、夜間は想像以上に暗くなります。そこで夜間に走行困難に陥ってしまったマタツが、夜間に車の故障を確認したり、お金を数えたりするのにソーラー・ランターンが役に立つというわけです。他にも、バイクライダーが類似の理由でランターンを購入しているということも確認できました。

その購入の仕方も、顧客によって大きく異なります。ガソリンステーションという場所柄か、購入するのはほとんどが男性。男性は一度商品を確認したのちに、また一人で戻ってきて購入することがほとんど。一方で女性が購入する場合には、複数人が連れだって購入しに来るとのことでした。販売する場所や購入する人によって、利用用途や購入の仕方、響くセールストークも大きく異なっていました。

以上、Totalステーションでの取り組みは、まだ始まって間もないこともあり、すべてが思うように整備されているわけではありません。これらの問題を可視化し、一つずつ改善に取り組むことでd.lightのミッションの達成に近づくことができるでしょう。そのためには、自分の価値観を使って判断するのではなく、現地の人の声に耳を傾け、彼らの立場に立って考えることが求められているのだと強く感じます。