タイプ
その他
日付
2007/12/20

奨学事業レポート「海外における日本語の普及に向けて -日本語教育基金事業-」

奨学事業部では日本語の普及をめざして、「日本語教育基金」事業を運営しています。これは、海外における日本語の普及、日本語教育の推進を目的として、日本財団が1994年に開始した事業で、日本財団により6ヶ国8大学に対して各々150万ドルが基金(endowment)として寄贈されています。各基金校ではその運用益を使って日本語を学ぶ学生への奨学金、日本語教師の養成、日本語教材開発等の事業を展開しています。今回は、12月初めに訪問したオーストラリアにある3校の基金校の様子を中心に、本事業をご紹介します。


日本語教育基金は、日本財団が1994年に開始した事業で、財団が基金(150万ドル)を大学に寄贈し、各大学では、基金運用とプログラム運営に責任を持つ運営委員会が、基金の運用益を活用して様々な日本語教育関連事業を展開しています。本基金の寄贈は日本財団が行い、事業全体の運営は東京財団が担当しています。

オーストラリアは現在、国別で見た日本語学習者の数は、約37万人と、韓国(約91万人)、中国(約68万人)に次いで、世界で3番目*に多い国であり、その日本語教育は長い歴史を誇っています(1917年にシドニー大学において日本語講座が開設されました)。同国では、1988年頃から学習者の急激な増加が見られました(「津波」現象と言われています)。現在、オーストラリアの日本語学習者の中心は圧倒的に初等、中等教育課程です(全体の約96%)。

マコーリー大学は、1967年にシドニー大都市圏の第3番目の大学として設置されましたが、現在はオーストラリアのリサーチ大学としては全国第8番目を誇るほど、研究と革新的教育を基礎においています。また、大学の看板として、「オーストラリアの革新的な大学」が謳われており、21世紀の教育の模範的提供者となることを使命としています。1988年に現代言語学部に導入された日本語研究科は、日本語教師の養成並びに教育水準向上を目指した奨学制度等のプログラムを策定、同プログラムを安定して推進するための基金設置に要する資金の協力要請が日本財団になされ、1995年のブカレスト大学(ルーマニア)に続いて2番目の日本語教育基金校となりました。現在は、大学、大学院レベルそれぞれのプログラムが確立されており、日本の大学への交換留学制度や、国内の他大学の日本語プログラムでの研修なども取り入れています。また、日本語のみを勉強するのではなく、日本の歴史、文化、文学、経済などを勉強することも、ただ卒業単位に結びつくだけではなく、日本語を理解する上で欠かせない要素として、積極的に勧められています。また、日本語の遠隔地教育にも力が入れられ、インターネットを通じてオンラインによる学習教材の開発も盛んです。本大学では、日本語と他の分野を同時専攻する学生も多数いますが、中でも定評があるのが、日本語と経営学の組み合わせです。

クィーンズランド大学と、グリフィス大学は、両校ともクィーンズランド州に位置し、日本語教育基金を共同で活用しています。具体的には、初等、中等教育における日本語教師に対する奨励金(研修プログラムや研究会議への参加等)、高等教育レベルにおける日本語教育教材開発への支援、日本語・日本研究分野の博士課程生や日本語を学ぶ学部生に対する奨学金などです。学部生に対する奨学金については、両大学の在籍学生のみならず、今後はクィーンズランド州の他の大学で日本語を学ぶ学生も対象にしていく予定です。日本語教師に対する日本語教授法セミナーの開発、全豪日本語教師大会の開催、日本語教育教材の開発、日本語教授法研究などが実施されています。また、数多くの日本語コースが開講されていますが、その内容の充実において、両大学の共同事業が果たす役割はきわめて大きいと言えます。

オーストラリアでは先の総選挙で労働党が勝利して政権が交代しました。ハワード首相のもとでは、外国語教育は沈滞しましたが、ラッド(Kevin Rudd)新首相は、外国語教育、特に中国語、インドネシア語、日本語といったアジア言語教育の重要性を唱えており(本人も中国語を流暢に話す)、これがオーストラリアにおける日本語教育の追い風にもなるのではないかと思われます。

*国際交流基金「2006年海外日本語教育機関調査」による。

(文責:丸山勇、星野文子)