タイプ
その他
日付
2010/1/28

東京財団日本語作文コンテスト表彰式

東京財団日本語作文コンテスト最優秀賞の2名が来日し、1月25日東京で表彰式が行われました。受賞者の母国オーストラリア、ニュージーランドからそれぞれ、マレー・マクレーン駐日大使、イアン・ケネディ駐日大使を来賓として迎え、日本語教育に携わる方々のご参列をいただきました。

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受賞者には東京財団会長加藤秀樹から表彰状が手渡され、副賞である1週間の日本滞在が始まりました。2人は各地を訪問して日本の文化や伝統に直接触れ、多くの日本人と交流して日本への理解をさらに深めてくれることでしょう。

日本語を学ぶ意義について、当日の参加者のスピーチを要約してご紹介します。


受賞者の言葉より


サマンサ・ビッケリー
オークランド大学3年(ニュージーランド)

日本語を勉強するきっかけは、日本人である幼少時の友人が病気で亡くなったことです。彼女を本当に理解するには、その人の文化を理解しなければならないと気づきました。本人に質問することはもうできませんが、日本語の勉強を通じて彼女の背景や信念をさらに理解できるのではないかと思っています。
外国人の多くは日本社会や文化に対して単純化されたイメージを抱いていますが、日本語の勉強を通じて私は、日本について多くのことが理解できるようになり、それによって異なる文化を持つ人と意思疎通する能力を高めることができたと感じています。
多文化が交錯する時代、このような意思疎通能力はますます重要になってきます。私はこれを生かし、ニュージーランドと日本との良好なビジネス関係維持に役立ちたいと思います。



レベッカ・チェン
モナシュ大学4年(オーストラリア)

中学1年の時、イタリア語、日本語、ギリシャ語のうちどれを学ぶか選択することになりました。学校ではヨーロッパ言語が人気でしたが、父が将来の日豪関係発展を予想して日本語を勧めたので、それに従いました。13歳の私は、日本のアニメがもっと楽しく見られるからいいなという程度の気持でした。
現在は大学で中国語、日本語、ビジネスを学んでおり、卒業後はオーストラリアの日系企業か外務省関係の仕事につきたいと考えています。
1つの国の言語を習得することは、その国の人、習慣、文化、歴史、社会など様々な要素を勉強することでもあります。私の夢は単に日本語が上手になってそれを活かした職業に就くだけでなく、オーストラリアと日本の懸け橋になることです。今回の経験がその第一歩になると信じています。



来賓祝辞より


マレー・マクレーン駐日オーストラリア大使

私自身、40年前に中国語の勉強を始めたことを思い出します。英語とは文字が全く違うので、大変な努力と忍耐が必要でした。しかしそのおかげで、日本でも標識や新聞の見出しが理解できます。外国語学習に疑問を持つ若い人たちに、言葉の勉強は大変だが、文化・伝統を含めて外国を本当に理解するために必要なのだということを伝えたいと思います。



イアン・ケネディ駐日ニュージーランド大使

私たちの国と日本には、経済、安全保障など幅広い関係があります。人と人との交流も大事で、そこで友情を育むには、言葉を使った話し合いが大切になります。若い人たちが日本語を学び、両国を結ぶために働く夢を持ってくれるのは嬉しいことです。この機会を生かし、幅広い日本人に話しかけ、日本に関する知識を深め、母国に帰って大きな貢献をしていただきたい。



加藤秀樹会長祝辞より

この15年間に世界はどんどんグローバル化してきました。グローバライゼーションが進むということは、日本でもオーストラリアでもニュージーランドでも、一つ一つの国の中は多様になっていく。しかし地球全体でみると均一化、画一化が大変進んでいるということになります。これは長い目で見ると危険がずいぶん多い。脆い仕組みになっていく。そこで、多様性というのが非常に大事になります。そういう意味で2人は、今英語が世界での共通語になっている中、あえて日本語を勉強している。英語とは言葉の成り立ちも違い対極にあるような言葉、少数派の言葉を勉強している。これは多様性に貢献するという意味で本当にありがたいし、日本にとって、日本人としてありがたいという以上に、ちょっと偉そうに言えば地球規模で見て本当に大事なことではないかと思います。そういう意味では2人に、今から大いに頑張っていただきたい。

東京財団は、「政策をつくって社会に出していく」、「人を育てる」この2つの手立てで世の中を少しでも良くしていこうとしています。昨年来の世界的な不景気を作ったと言われる、いわゆるリーマンショック、もっとたどれば財政の問題など、さまざまな問題を解決する非常に大きいカギの一つが多様性です。多様性とかコミュニケーションとかいうものを理解していくことが必要です。たとえば金融というような非常にメカニカルに聞こえるものでも、背後には必ず文化がある。こういうものを、言葉を通してしっかり理解してほしい。それを理解して、多様性というものをしっかり身につければ、どの分野に行っても必ず成功すると思うし、社会から必要とされると思います。

日本には季節の言葉がたくさんあります。山についても同様で、たとえば冬の山。枯れ木ばかりで葉がない、枯れ木の下に雪が積もっている。そういう山について日本は「山眠る」という表現をする。それが春になって薄緑、黄色、薄赤など色々な木の芽が出てくると「山笑う」。夏になったら「山滴る(したたる)」。秋になったら「山装う」。こういう言葉は今の日本人でもあまり知らない。だから単に「葉がない」「葉が出てきた」という風にしか見えていない。しかし言葉を知ると感情もふくらみます。感性もふくらむ。私はここが大事なんだろうなと思います。そういう意味でこれから始まる1週間の日本滞在、3割はご褒美として大いに楽しんでいただき、残りの7割を貪欲に、いろいろな物を吸収するようしっかり頑張っていただきたい。