タイプ
レポート
日付
2007/9/27

奨学事業レポート「“SYLFF (シルフ)”のフォローアップとは? 」【Vol. 2】

SYLFFプログラムでは、奨学金を支給するだけに留まらず、奨学生(“SYLFFフェロー”)の研究・社会貢献活動やネットワーク構築の推進を目的として、様々なフォローアップ事業を展開しています。今週の奨学事業レポートでは、これらの事業のうち、SYLFFフェロー間のネットワークの構築を目指したプログラムとその成果についてご紹介します。


■なぜネットワーキングするのか?

SYLFFは、1987年の第一号基金設置以来、20年を迎えましたが、様々な変遷を経て現在のネットワーク推進にかかわる事業を展開するに至っています。第一号の基金設置から約10年間(1987~1997)は、主に基金校数の拡大に焦点が当てられました。現在ある69基金校のうち、8割を超える58校には、この10年間にSYLFF基金が設置されています。東京財団にSYLFFの運営が移管されたのは、財団が設立された1997年ですが、それ以前には、SYLFFフェロー間のネットワーク構築はほとんど注目されていませんでした。

しかし、基金校が増え、毎年世界各地で奨学金の受給者が続々と誕生する中、SYLFFの求める“fellow”の育成には、学位取得のための奨学金を支給するだけでは不十分という考え方が生まれたのです。新たに選抜されたフェローに対しては、SYLFFの理念や目的について理解を促す機会が必要であり、フェロー同士が共に活動することによって価値観を共有し、お互いに感化し合っていくことが重要です。もちろん、その中で生まれたネットワークは、修士・博士課程で学んでいるフェローにとって、また既に奨学金受給を終えて、学位を取得したフェローにとって、学問の面でも価値のあるものです。

東京財団では、SYLFFの目的が理解・共有され、また、フェロー同士が切磋琢磨し成長し合っていくことを望み、ネットワーキングの構築を支援しています。


■各SYLFF校から地域社会/近隣国・地域へ

各SYLFF校におけるフェロー同士の交流を目指して、「奨学生交流活動支援プログラム(SYLFF Network Program)」では、フェローによって自主的に結成された組織、“ローカル・アソシエーション”を支援しています。現在までに24のアソシエーションが設立されています。アソシエーションの活動内容はフェロー達の自主性に任されていますが、基本的な活動として、新たにSYLFF奨学金を受給したフェローに対するオリエンテーションや論文発表会、SYLFFフェローの名簿管理やニュースレターの発行などがあります。こうした学内での活動に留まらず、地域社会への貢献活動を展開するアソシエーションもあります。また、彼らのネットワークは、国境を越えて、近隣諸国や各地域に広がる動きも見せ始めています。

地域社会への貢献活動
SYLFF@ADMU
アテネオ・デ・マニラ大学(Ateneo de Manila University/フィリピン)のアソシエーション
地元の公立小学校における絵画コンクール

フィリピンの公立学校は、政府からの予算配分が極端に少なく、教室までもが不足してしまい、屋外や階段などで授業をしなければならないなど、厳しい状況に置かれている。しかし、貧しい家庭の子供達は公立学校に通わざるを得ず、目の行き届いた教育を受けているとは決して言えない。このような子供達のサポートをしたいと考えたSYLFF@ADMUメンバーは、絵画セットを持って地元の小学校を訪問し、絵画コンクールを開催。約40名の児童達は、「フィリピンのクリスマス」というテーマに基づいて絵を描き、大会の最後には1位~3位に選ばれた児童が表彰された。子供達は夢中になってクレヨンを持ち、出来上がった絵をうれしそうに説明してくれたという。中には、テーブルいっぱいの料理と1人の女性を描いた児童がいたが、これは、父親が海外へ出稼ぎに行ってしまい、クリスマスを家族そろって過ごすことが出来ないという、フィリピン社会の厳しい現状を表したものだった。SYLFF@ADMUのメンバー達は、今後もこのような子供達のサポートをしていきたいと考えている。

国境を越えたネットワーク活動
A.L.U.S.-Association of Leipzig University SYLFF fellows
ライプチヒ大学(University of Leipzig/ドイツ)のアソシエーション
4か国のフェローによる中欧・東欧の政治・文化に関する学術会議・文献出版


2006年1月、A.L.U.S.では、ルール・ボッホム大学(Ruhr University Bochum/ドイツ)、カレル大学(Charles University/チェコ)、ハンガリー科学アカデミー(Hungarian Academy of Sciences/ハンガリー)、ヤゲロニアン大学(Jagiellonian University)の4校からフェローを招き、「中欧・東欧における知的・文化的変化(“Intellectual and Cultural Change in Central and Eastern Europe”)」と題した学術会議を開催した。出身国や専門分野の違うフェロー達は、各国の政治・法律・マスメディア・文化などについて議論した上で、グローバル化と同地域への影響について議論を深めた。会議を受けて発表者らは論文を執筆し、これらを編纂した本が今年に入って出版されている。文献の詳細情報は以下の通り:
Felix Boellmann, Stefan Jarolimek, Makhabbat Kenzhegaliyeva and Elena Temper (eds.), Intellectual and Cultural Change in Central and Eastern Europe: New Challenges in the View of Young Czech, German, Hungarian and Polish Scholars (Frankfurt: Peter Lang, 2007).


SYLFFのネットワークは、上記のような多様な発展形態を見せつつも、まだまだ成長段階にあります。現在は、20~40代の比較的若い世代のフェローがネットワーク活動の中心を担っていることもあり、有名大学が持つような資金力と組織力を兼ね備えた同窓会組織にはまだ及びませんが、東京財団では、フェロー達の自主性を尊重したネットワーク作りをサポートしています。今後、時代の変遷とともに、またフェロー達の成長とともに、どのようなネットワーク形成が求められていくか、東京財団としてもフェローとともに試行錯誤を重ねています。

上記でご紹介したローカル・アソシエーションに対する支援の他にも、世界各国から選出された9名からなるSYLFFフェロー協議会(SYLFF Fellows Council: SFC)に対する支援や、各SYLFF校からの代表フェローを招聘しての奨学生国際フォーラム(SYLFF Regional Forums)の開催なども行なっています。これらについては、次回以降の奨学事業レポートで随時ご紹介していきます。

(文責:石川絵里子)