タイプ
レポート
日付
2007/11/8

奨学事業レポート「カナダとポーランドにおける少数民族コミュニティーの“異文化”理解支援:世代、民族、宗教を超えて」

奨学事業部が運営するSYLFFプログラムでは、「協働プロジェクト支援制度(SYLFF Joint Initiatives Program: JIP)」によりSYLFFフェローの社会貢献活動を支援しています。今週の奨学事業レポートでは、今年度支援している6チームの1つ、ポーランド出身のSYLFFフェローが、カナダとポーランドの少数民族コミュニティーにおいて実施している“異文化”理解支援プロジェクト“Bridging the Distance”をご紹介します。このプロジェクトでは、少数民族出身の子供達に自らのコミュニティーの写真を撮影してもらうことで、少数民族としての自らのアイデンティティーについて考える機会を提供しています。また、それらの写真を学校・公民館等を巡回して展示したり、彼らがコミュニティー長老者へのインタビューを行うことにより、参加した子供達が、1つのコミュニティー内における世代間の隔たりと周辺の地域社会との隔たりという、2つの隔たり=“Distance”をつなぐ架け橋となることを期待しています。



「カナダとポーランドにおける少数民族コミュニティーの“異文化”理解支援:世代、民族、宗教を超えて―Bridging the Distance―」

プロジェクト・リーダー: バルトス・ フレボビッツ 、マグダレーナ・パルズキヴィック(ヤゲロニア大学/ポーランド)

2つの少数民族の背景


このプロジェクトは、カナダ・オンタリオ州南部サウスウォルド(Southwold)のオナイダ(Oneida)・インディアンとポーランドのベラルーシ人コミュニティー、ノワウォラ(Nowa Wola)村の住民を対象に行われた。大西洋をまたぎ遠く離れた2つの小さなコミュニティーに共通するのは、住民が民族的・宗教的少数民族であることである。

オナイダ・インディアンはもともとアメリカ・ニューヨーク州のイロコイ連邦の1つのネイションであった。現在は、カナダ・オンタリオ州、アメリカ・ニューヨーク州およびウィスコンシン州のインディアン保留地に居住する。カナダのサウスウォルドに居住するオナイダ・インディアンは、1840年代にアメリカ・ニューヨーク州の連邦から移住した。

一方、ノワウォラはポーランド東部、ベラルーシとの国境近くにある住民400人弱の小さな村であり、村民の大半がベラルーシ系である。ポーランド人のほとんどがカトリック教徒なのに対し、ノワウォラのベラルーシ系住民はロシア正教徒である。

プロジェクト


まず、カナダのオナイダ・インディアンとポーランドのベラルーシ系住民の子供達にカメラを貸し、それぞれ居住するコミュニティーの人々や生活の様子を撮影させた。子供達に写真撮影をさせたのは、子供の自由な視点からコミュニティーを撮影することにより、自らのアイデンティティーについて考えてもらうという理由からである。 また子供達に、コミュニティーの長老者に対するインタビューをしてもらった。これは、若者に文化や伝統を理解する機会を提供するためである。こうした活動を通じて、世代間の交流、若者の伝統文化の理解、コミュニティー間の絆を深めることがプロジェクトの大きな目的である。さらに、カナダとポーランドの2つの少数民族の写真を街に展示することにより、これら少数民族に対する社会全体の認識向上も図った。

写真撮影


オナイダ・インディアンのコミュニティーで最も多く撮られた写真は、伝統的なオナイダの衣装を身に着けて踊るダンスの写真である。オナイダの子供は伝統的な踊り(Smoke Dance)の写真を興味深く撮影した。子供達が撮影した写真は、オナイダの文化・アイデンティティーを力強く表現するものとなった。

ポーランドのノワウォラ村で若者が多く撮影したのは、老人の写真である。これはオナイダの若者が老人の写真をほとんど撮影しなかったことと対照的であった。また、オナイダでは基本的に写真撮影を歓迎しない。それを象徴するかのように、オネイダでは神聖な儀式を室内で撮影することは出来ない。それとは対照的にノワウォラの子供達は教会内での撮影を多く行っている。一方、オナイダ、ノワウォラの子供達に共通しているのは、みな写真撮影を楽しんでいたことだ。オナイダの子供は野球の試合、ノワウォラの子供はサッカーなど、子供が遊ぶ写真も好んで撮影した。

いくつかの成果


このプロジェクトのタイトル“Bridging the distance”が示すように、このプロジェクトが目指した社会貢献は、コミュニティー内の老人と若者の交流を深め、世代間の懸け橋となること、そしてこれら少数民族と外部社会との橋渡しになることだった。

ポーランドのノワウォラ村では大きな成果を収めることができた。同村では、2007年春から夏にかけ12件のインタビューが行われ、若者と老人の交流に一役買った。老人は若者に自らの歴史を語り、子供達による写真撮影を快く承諾した。老人達はロシア正教の儀式や聖歌などを伝授したり、伝統的なじゅうたんやランプを見せるなどして若者が独自の文化を学べる機会を与えた。老人達が語る自身の生い立ちには幼い頃の悲しい戦争体験も含まれていた。

このプロジェクトのもう1つの目標としたノワウォラの少数民族に対する社会の認識の向上も一定の成果をあげることができた。現地の教会、学校、文化センター等をプロジェクトに巻き込むことにより、地域のネットワーク構築に貢献することができた。また、写真展示会には、多くの人が訪れメディアにも取り上げられた。また、ノワウォラの写真は移動展覧会として他数ヶ所でも展示され、同村と外部社会とのつながりを深めた。

カナダのオナイダ・インディアンのコミュニティーでは、プロジェクトメンバー達が行った3件のインタビュー以外、残念ながら若者が自ら老人にインタビューをする機会はなかった。しかし、オナイダ・インディアンの写真の展示会は、オンタリオ南部近郊のコミュニティーとの交流の足掛かりとなり、オナイダと外部社会との橋渡しとなった。また、カナダで撮影した写真は、アメリカ・ウィスコンシン州とニューヨーク州のオナイダ・インディアン・コミュニティーでの移動展示会でも展示された。オナイダの若者が移動展覧会を兼ねた修学旅行に参加して他のインディアン保留地や美術館を訪れることができ、オナイダ・インディアンの原点やアイデンティティーを学び、他のインディアン・コミュニティーとの交流の機会を得ることができた。

ポーランドでの移動展覧会では、オナイダ・インディアンの写真も展示し、ウェブサイト上でも写真やレポートを紹介することで2つの異なる少数民族の対話も試みた。このプロジェクトを通じて、似通った環境にありながら出会うことがなかった人々同士をつなげることが出来た。

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今年度「協働プロジェクト支援制度」で支援している6チームについてはこちら