タイプ
レポート
日付
2007/11/21

奨学事業レポート「インドにおけるSYLFFフェロー活動報告:地域社会とのつながりを目指して」

現在、インドには2つのSYLFF基金が設置されているが、その1つがインド東部コルカタ市に位置するジャダプール大学(Jadavpur University)である。1955年に設立された同校は、首都デリーに位置するジャワハラル・ネルー大学(Jawaharlal Nehru University)と並んで、優秀な教員と研究施設の整った、インドを代表する大学である。同校において、SYLFF奨学金の知名度は非常に高く、応募者数も多いことから競争率も極めて高い。また、大学院進学準備の時点から、SYLFF奨学金を視野に入れている学部生も少なくない。


ジャダプール大学へのSYLFF基金設置は2003年と歴史が浅いため、現在までに誕生したSYLFFフェローはまだ8名であるが、その少数の利を生かして2005年には JU-SYLFF Associationという同窓会組織が立ち上げられた。彼らの社会に対する問題意識は非常に高く、毎週開催する定例ミーティングでは、地域社会へどのように貢献していけるかと話題は尽きないようだ。時には、途方もなく大きな夢にまで話が発展することがあるほど、やる気が溢れている。成長著しいインドという国の活力を象徴しているようでもある。

彼らの活動のうち顕著なものが、国際NGOの The Leprosy Mission がコルカタ市内で運営するハンセン病療養施設への慰問である。2006年7月、JUSAメンバー全員で同施設を訪れ、子供から老人までの71人の患者・回復者の方々との懇親の機会を持った。この慰問の発端は、SYLFFプログラムの創設者である日本財団笹川陽平会長が取り組んでいるハンセン病撲滅活動である。インドは現在でも世界最多のハンセン病患者を抱えており、笹川会長は、回復者が公平な機会を享受できる社会の構築を目指して、インドにおいても精力的に活動をしている。SYLFFフェローが、自らの地域社会に属するハンセン病療養所を直接訪問し、この病気に関する理解と同時に患者・回復者の方々との交流を深めたことは、SYLFF奨学金の出資者である笹川会長の願いを受けた行為となった。

慰問時の交流活動は、予想以上に深みのあるものとなった。まず、SYLFFフェロー数人によるベンガル語の合唱で始まったのだが、すぐに療養所の方々が一緒にハミングをし始め、あっという間に会場にいた全員での大合唱となった。ベンガル語の歌で、「太鼓は高らかに鳴り響き、喜びが空いっぱいに広がっているよ。みんなで一緒に楽しもう」という内容の歌だった。参加したフェローによると、思わず背筋がゾクッとするほど皆の心が一つになったと感じられた嬉しい瞬間だったという。その後「イクバル(洋題:IQBAL)」という映画を皆で鑑賞した。イクバルという男の子が、障害や貧困と向き合い、生きていく物語である。それは、患者・回復者の方々だけにではなく、JUSAの彼らにも、「やればできる」という希望を与えた映画だったという。あっという間に3時間が経ち、最後にSYLFFフェローがハンセン病の患者さんたちにデザートを手渡して終わった。JUSAとしては、今後も療養所の慰問を続けたいと考えている。

一方、JUSAでは、現代インド社会における独特の大衆文化にスポットを当てたドキュメンタリー映画「The Train Singers」の製作も行った。JUSAメンバーであるアビシェック・バスが監督を務めたこの映画は、ナレーションもなく、電車の中で歌を歌う人たちを映しただけの、インドでは一見すると日常の何気ない一場面を切り取ったものである。インドでは電車に乗ると、フォークソングから映画のサウンドトラックまで、ありとあらゆるジャンルの演奏が聞こえてくるという。バス監督によると、それがインド社会の一つの縮図だとのこと。古来の伝統と近代化の入り混じる現代のインド社会の一角において、行商人から物乞い人、芸人など多種多様な人々が思い思いに時間を過ごす中で、淡々と美しい歌声を響き渡らせている人たちがいる。インド社会の一コマを象徴している風景をドキュメンタリー風に収めたのがこの映画のようだ。


なお現在、JUSAメンバー達は、同校において11月20日~22日の日程で開催中の、アジア・太平洋奨学生国際フォーラム(SYLFF Asia/Pacific Regional Forum)に参加中。参加者としてだけではなく、ホスト校のフェローとしてフォーラムの準備段階から携わってきた。来週の奨学事業レポートでは、このフォーラムの模様をお伝えする予定である。

(文責:石川絵里子、星野文子)