タイプ
その他
日付
2007/9/10

奨学事業紹介 「フェローシップ・プログラム “SYLFF (シルフ)”とは?」

SYLFFプログラム(注1)はその名称に“Fellowship”(フェローシップ)という単語を使っていますが、元来、フェローシップの“fellow”(フェロー)とは「仲間・同志」という意味を持ち、“fellowship”とは「仲間であること」を意味します。日本の公益法人が運営する奨学金プログラムやフェローシッププログラムというと、日本人の学生もしくは日本への留学生や日本研究者を対象にし、いわゆる「親日派」の養成を目的としていると思われがちです。しかし、SYLFFプログラムは、日本人もしくは日本研究に関わる学生に対象を限定しているわけではありません。では、SYLFFはどのような目的で、どのような“fellow”=「仲間」を求めているのでしょうか?


■SYLFFの目的
グローバリゼーションの進展によって複雑化する今日の世界では、国家という枠組みを超えて相互に連携・協力する必要性がますます高まっています。SYLFFの人材育成は、国籍・言語・民族・宗教・政治体制等のあらゆる「境界」を越え、グローバル化時代の諸問題に取り組むことの出来るリーダーを育てることを目的としています。そのため、ある特定の国や地域に集中的に奨学金を提供するのではなく、世界45カ国の69大学および大学連合において、人文社会科学分野を専攻する大学院生(修士課程および博士課程)を支給対象としています。

なお、人材育成という分野の特質上、長期的に安定した奨学金の資金源を確保することが必須であるため、SYLFFプログラムでは、69の大学および大学連合に各々100万米ドルの基金(endowment)(注2)を設置し、基金の運用益を奨学金として支給しています。日本では、早稲田大学と慶應義塾大学の2校に基金が設置されています。設置された基金の運用および奨学生の選考は、当財団ではなく、各大学に設置されたSYLFF運営委員会が行なっています。この方法は、各大学にプログラム運営を任せることによって、各国の高等教育事情や学生のニーズに見合った柔軟なプログラム運営を行なう、という目的のため採用されています。このスキームに則り、これまでに全世界で9,000人を超える学生に奨学金が支給されています。

■SYLFFの求める“fellow”とは
大学院生を対象とした奨学金である以上、学業的に優秀であり、アカデミックな専門性を備えていることはもちろん要求されます。しかしSYLFFは、机上の空論に留まらず、その知性や専門性を実際に社会に還元していくことを求めます。極めて優秀な知性に富むと同時に、社会に対し高い関心を持って時代の流れを捉え、社会を変革することの出来る行動力・実行力を備えた学生の発掘を目指しています。このような“fellow”の社会貢献活動やネットワーク構築を推進するため、奨学事業部では、フェローに奨学金を提供するだけでなく、様々なフォローアップ事業を展開しています(フォローアップ事業については、次回以降のトピックスでご紹介します)。
SYLFFでは、多様性や様々な差異を受け入れ、リーダーシップを発揮し、よりよい社会を目指して実際に行動する「仲間」を発掘・育成しているのです。


SYLFFフェロー紹介


李正民 (Mr. Chung Min Lee)
1987年度にフレッチャー法律・外交大学院博士課程においてSYLFF奨学金を受給。この年の奨学金支給は李氏1名のみであり、記念すべき第1号のSYLFFフェローである。専門は東アジアの安全保障問題。同校にて国際関係学博士号を取得後、対外政策分析研究所(Institute for Foreign Policy Analysis: IFPA/米国)や世宗研究所(Sejong Institute/韓国)、防衛庁防衛研究所(National Institute for Defense Studies: NIDS/日本)、政策研究大学院大学(Graduate Research Institute for Policy Studies: GRIPS/日本)にて研究者として勤務。1995年よりランド研究所(Rand Corporation/米国)政策研究員を経て、1998年より延世大学(Yonsei University/韓国)国際関係学部教授。

SYLFF校紹介


タフツ大学フレッチャー法律・外交大学院(The Fletcher School of Law and Diplomacy, Tufts University/米国)
1987年にSYLFF基金が設置された第1号のSYLFF校。2007年6月に開催されたSYLFF南北アメリカ地域フォーラムでは、ホスト校を務めた。同校は、世界大恐慌の真っ只中の1933年、外交官養成を目的としてタフツ大学とハーバード大学の共同プロジェクトとして設立され、「国際関係の大学院」としてアメリカでは長い歴史を持つ。外交、国際経済、国際コミュニケーションを含め、国際関係分野において世界50カ国以上の国々より学生を受け入れている。政府高官や国際連合などの国際機関職員、多国籍企業重役を務める卒業生も多く輩出している。元米国エネルギー長官で現在ニュー・メキシコ州知事を務めるビル・リチャードソンやギリシャ首相のコスタス・カラマリンス、元国連事務次長の明石康など、多彩なリーダーを輩出している。


注1) SYLFFプログラムは、基金の寄贈を行なう日本財団と、基金設置に関わる業務、設置後の基金管理、フォローアップ事業など、プログラム全体の運営を行なう東京財団奨学事業部が共同で実施しています。

注2) 本プログラムにおける基金とは、フェローシップの造成・給付のために大学に寄贈・設置される資金のことで、運用のために使用されることが求められます。運用益がでた場合、その運用益をフェローシップとして給付することができますが、基金そのものを取り崩して使用することは原則として認められません。この原則により、プログラムの永続性を保ちます。

(文責:石川絵里子)