東京財団 外交史ブックレビュー

東京財団 外交史ブックレビューvol.003

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.003━2007.09.13━
      ◆◆ 東京財団 外交史ブックレビュー ◆◆

     編集・発行:東京財団政治外交検証プロジェクト
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はじめに――日本外交に関心を持つ方々へ
/北岡伸一(東京財団主任研究員、東京大学教授)

清沢洌は『外交史』(1940年)の序文に、「外交史に関する知識が、今日ほど必要と
されてゐる時はない。この知識を基礎とせずして造りあげられたる外交政策と、外交輿論は、
根のない花である」と書いています。

これは、時代を超えた真理だと思います。現代の日本は、当時ほど切迫した状況にある
わけではありませんし、当時とは比較にならないほどの言論の自由があり、情報収集も
容易です。にもかかわらず、現代の外交政策や外交世論が、正確な外交史の知識の
上に築かれているとは、決して言えないのではないでしょうか。

その一方で、戦後外交に関する研究は着実に発展しつつあります。外交文書の公開や
情報公開制度の利用等によって、新しい史料が利用可能となり、アメリカ等外国の文書に
主として依拠した研究から、より総合的複眼的な視点が提示されつつあります。それらの
研究は、しかし、まだ専門研究者の間で共有されるだけで、広い外交論議の基礎として
十分利用されてはいないというのが現状です。

このニューズレターは、そうしたギャップを埋めることを目指しています。すなわち、戦後日本
外交史およびこれに密接に関連する分野(日米関係史、日中関係史、その他の国際
政治史、日本政治史、地域研究など)おいて最近登場した優れた研究を、対外政策に
関心を持つ幅広い層、いわゆるforeign policy constituency に紹介しようとするものです。
日本外交を「根のある花」にするために、ささやかな貢献ができれば幸いです。



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  【第3号 目次】

1.政治外交ブック・レビュー

『文化と国防―戦後日本の警察と軍隊』Peter J. カッツェンスタイン(有賀誠訳)  
               /評者 黒崎輝(立教大学兼任講師)


『グローバル・ガヴァナンスの歴史的変容―国連と国際政治史』緒方貞子・半澤朝彦編著
/評者 潘亮(筑波大学人文社会科学研究科講師)


2.読書案内(短評)

「北朝鮮へのエクソダス―『帰国事業』の影をたどる」テッサ・モーリス‐スズキ著
/評者 西野純也(慶應義塾大学法学部専任講師)


『残留日本兵の真実――インドネシア独立戦争を戦った男たちの記録』林英一
/評者 佐藤晋 (二松学舎大学国際政治 経済学部准教授)



3.今月の新刊・書評紹介

編集後記


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1.政治外交ブック・レビュー

※このコーナーでは、日本政治外交に関連する最近の優れた書籍・論文等を、
気鋭の研究者が紹介します。特に外交の実務に携わる方々は必須のもの
ばかりです。是非お読みいただければと思います。


『文化と国防―戦後日本の警察と軍隊』Peter J. カッツェンスタイン(有賀誠訳)  
           /評者 黒崎輝(立教大学兼任講師)

本書は、Peter J. Katzenstein, Cultural Norms and National Security: Police and
Military in Postwar Japan (Cornell University Press, 1996)の全訳である。カッツェン
スタインは比較政治経済学の専門家として日本でも知られているが、本書では独自の
視点から日本の安全保障というテーマに果敢に挑んでいる。その最大の特徴は、国家
の制度と規範に焦点を合わせて、戦後日本の安全保障政策を説明する点にある。
現実主義(リアリズム)や自由主義(リベラリズム)といった国際関係論の主要なパラダイム
では国家の安全保障政策を完全には説明できないと喝破し、制度や規範に着目する
必要があると主張するのである…

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『グローバル・ガヴァナンスの歴史的変容―国連と国際政治史』緒方貞子・半澤朝彦編著
/評者 潘亮(筑波大学人文社会科学研究科講師)

本書は二つの意味で国連に関する従来の研究と一味違うものである。まず、研究の対象
であるが、国連の仕組みだけに的を絞る「孤立的な」国連研究ではなく、国連の役割を
加盟国間で展開された国際政治のドラマのなかで検証する「開かれた」国連研究を目指す
点で斬新な視点を提供してくれている。また、分析の手法に関しては、グローバル・ガヴァ
ナンスというどちらかといえば冷戦後の国際情勢を議論する際によく使われる概念に焦点を
当てたにもかかわらず、本書は国連をめぐる国際政治の変遷の経緯を一次資料に基づいて
解明し、国連の発展のダイナミックスを歴史的な視角から明らかにしようとしている…

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2.読書案内(短評)

「北朝鮮へのエクソダス―『帰国事業』の影をたどる」テッサ・モーリス‐スズキ著
/評者 西野純也(慶應義塾大学法学部専任講師)

「帰国事業」によって、1959~84年にかけて9万3,340名の在日朝鮮人(日本国籍保持者
6,839名含む)が北朝鮮へと渡った。事業は25年に及んだが、61年までの2年間で全体の
80%が帰国船に乗って新潟港をあとにした。そこには様々なアクターが関わったが、これまでは
北朝鮮政府や朝鮮総連、日本の「左派」勢力やマスコミが主な非難の対象となってきた。

本書では、日本政府および日本赤十字こそが帰国事業の「発起人としてもっとも大きな力を
ふるった」(100頁)という事実が、2004年に機密解除されたジュネーブの赤十字国際委員会
所蔵文書などから明らかにされている…


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『残留日本兵の真実――インドネシア独立戦争を戦った男たちの記録』林英一
/評者 佐藤晋 (二松学舎大学国際政治経済学部准教授)

本書は1945年8月の終戦後もインドネシアに残って対オランダ独立戦争に参加した兵士の
丹念な記録である。著者は残留日本兵の生き残りの「ラフマット小野」にインタビューを重ね、
その信頼を勝ち取り、当時記された膨大な日誌類を入手する。その上で、これまでアジア
解放のため・独立の理念に共鳴したとか、帰国しても生活の見込みが立たないから、などと
語られてきた彼らの残留意図の真実に迫ろうとしている…


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3.今月の新刊・書評紹介

2007年6月に刊行された政治外交関連の新刊図書・雑誌記事・書評のリストです。
↓外交に関する情報収集や研究のデータベースとしてお役立てください。
http://www.tkfd.or.jp/research/news.php?id=95

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◆編集後記

日本の歴史研究においては、重箱の隅をつつくような書評が多いとよく言われます。

書評者の研究上の関心や立場を著者のそれと対置しただけの外在的な批判も多
いと言われます。

もちろん、これと違って好意的な書評もあります。

私個人は、やはり書評は戦闘的であるべきだと思います。

本の優れた点を正確に表現するにおいて著者以上に有能であることを示し、著者を
ノックアウトする書評を書きたいと思います。

その上での批判は、重い批判になるはずです。

この検証プロジェクトでは、このような意味での書評意欲をかきたてるような本を取り
上げたいと思います。

分野間のバランスや、選定漏れをなくすことはあまり考えずに、紹介に値する本を目が
ついたものから紹介して参りたいと思います。

末永くお付き合い頂ければ幸いです。

(五百旗頭)


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政治外交検証プロジェクトニュース 第3号(2007年9月13日発行)
発行元:東京財団政治外交検証プロジェクト北岡伸一主任研究員
    〒107-0052 港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階 東京財団


編集責任者:
細谷雄一(慶應義塾大学法学部准教授)
五百旗頭薫(東京大学社会科学研究所准教授)

編集担当:
林大輔(慶應義塾大学大学院法学研究科)
相原清(東京財団研究部プログラム・オフィサー)

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