東京財団 外交史ブックレビュー

東京財団 外交史ブックレビューvol.021

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2009.08.24
◆◇ 東京財団 外交史ブックレビュー Vol.021 ◇◆
      http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19
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1. ブックレビュー
 ■『ウェストファリア条約 その実像と神話』
   (明石欽司著、慶應義塾大学出版会)
   評者:君塚直隆(神奈川県立外語短期大学教授)

 ■『浜口雄幸と永田鉄山』(川田稔著、講談社選書メチエ)
   評者:大前信也(同志社女子大学嘱託講師)

2. 新刊図書・雑誌記事・書評紹介(2009年6月)

3. 編集後記

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1. ブックレビュー

このコーナーでは、日本政治外交に関連する最近の優れた書籍・論文等を、気
鋭の研究者が紹介します。特に外交の実務に携わる方々は必須のものばかりで
す。是非お読みいただければと思います。


 ■『ウェストファリア条約 その実像と神話』
   (明石欽司著、慶應義塾大学出版会)
   評者:君塚直隆(神奈川県立外語短期大学教授)

2010年代へと突入しようとしている昨今の国際政治は、米ソ冷戦の終結から20
年の時を経ようとしているが、相変わらず混沌とした状況が続いている。その
国際政治の枠組や、現代の世界に見られる主権国家間の関係が始まった出発点
とされる出来事、それが17世紀前半にヨーロッパの中央部で繰り広げられた三
十年戦争(1618~48年)であり、その講和のためのウェストファリア条約であ
った…

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  http://www.tkfd.or.jp/research/news.php?id=473


 ■『浜口雄幸と永田鉄山』(川田稔著、講談社選書メチエ)
   評者:大前信也(同志社女子大学嘱託講師)

柳田国男、原敬、浜口雄幸の政治思想史的研究を重ねてきた著者が、永田鉄山
と浜口を対比させて論じているのが本書である。著者はある文章で本書の狙い
を次のように述べている。浜口内閣の対米英協調と中国内政不干渉という外交
政策によって米英中とは協調可能だったことから、満洲事変やそれ以後の大陸
膨張政策の展開を理解するには、昭和陸軍の政策構想の検討が必要である…

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  http://www.tkfd.or.jp/research/news.php?id=476

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2. 新刊図書・雑誌記事・書評紹介

6月に刊行された政治外交関連の新刊図書・雑誌記事・書評のリストです。
外交に関する情報収集や研究のデータベースとしてお役立てください。

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  http://www.tkfd.or.jp/research/news.php?id=472

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3. 編集後記

ホィートン(Henry Wheaton)の主著『国際法要綱』(Elements of
International Law)は、日本において漢語訳『万国公法』または原著から複
数の翻訳が作成され、初期の国際法受容に大きな影響を与えました。遅れて主
権国家体系に参入した日本は、ウェストファリア神話をより濃密に摂取したの
かもしれません。

浜口雄幸に見られる主権国家間の相互尊重と市場経済の活用という構想にも、
永田鉄山に見られる軍事力による大陸での資源確保という構想にも、非国家的
主体の役割は予定されていたでしょうが明確な像を結んではいません。

文化交流から商社、蠢動する大陸浪人まで、非国家的主体への関心がむしろこ
の二人に先立つ時代から高まっていたことは知られています(酒井哲哉『近代
日本の国際秩序論』。本プロジェクトによる書評<宮城大蔵>は
http://www.tkfd.or.jp/research/news.php?id=138)。しかし、これらが社会
的存在であることを超えて、国際政治の中で何がしかの公的な役割を帯びる契
機を受容し制御する言説を模索する上では、聖俗両界にまたがる多数の領邦・
都市の権利義務を精緻に定めたというウェストファリア条約の意義が後景に退
いていたことは、喪失だったのかもしれません。

個性的な二人の評者の報告は、思考を刺激するところが大でした。つい妄想を
書き連ねてしまいました。(五百旗頭)

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日本外交に関心を持つ方々へ
北岡伸一(東京財団主任研究員、東京大学教授)

清沢洌は『外交史』(1940年)の序文に、「外交史に関する知識が、今日ほど
必要とされてゐる時はない。この知識を基礎とせずして造りあげられたる外交
政策と、外交輿論は、根のない花である」と書いています。

これは、時代を超えた真理だと思います。現代の日本は、当時ほど切迫した状
況にあるわけではありませんし、当時とは比較にならないほどの言論の自由が
あり、情報収集も容易です。にもかかわらず、現代の外交政策や外交世論が、
正確な外交史の知識の上に築かれているとは、決して言えないのではないでし
ょうか。

その一方で、戦後外交に関する研究は着実に発展しつつあります。外交文書の
公開や情報公開制度の利用等によって、新しい史料が利用可能となり、アメリ
カ等外国の文書に主として依拠した研究から、より総合的複眼的な視点が提示
されつつあります。それらの研究は、しかし、まだ専門研究者の間で共有され
るだけで、広い外交論議の基礎として十分利用されてはいないというのが現状
です。

このニューズレターは、そうしたギャップを埋めることを目指しています。す
なわち、戦後日本外交史およびこれに密接に関連する分野(日米関係史、日中
関係史、その他の国際政治史、日本政治史、地域研究など)において最近登場
した優れた研究を、対外政策に関心を持つ幅広い層、いわゆるforeign policy
constituency に紹介しようとするものです。日本外交を「根のある花」にす
るために、ささやかな貢献ができれば幸いです。

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『外交史ブックレビュー』第21号(2009年8月24日発行)

発行元:東京財団「政治外交検証プロジェクト」(北岡伸一主任研究員)
    〒107-0052 港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階
    http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19

編集責任者:五百旗頭薫(東京大学社会科学研究所准教授)
      宮城大蔵(上智大学外国語学部准教授)

編集担当:林大輔(慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程)
     松下薫(東京財団広報部)

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