東京財団 外交史ブックレビュー

東京財団 外交史ブックレビューvol.035

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2012.01.11
     ◆◇ 東京財団 外交史ブックレビュー Vol.035 ◇◆
     http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19
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日本政治外交に関連する最近の優れた書籍・論文等を、気鋭の研究者が紹介し
ます。外交の実務に携わる方々には必須のものばかりです。是非お読みくださ
い。

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■┓『中国共産党―支配者たちの秘密の世界』リチャード・マクレガー著
┃┃ (草思社、2011年)
┃┃
┗┛ 評者:前田宏子(PHP総研主任研究員)

中国共産党の統治に関して、しばしば投げかけられる質問に次のようなものが
ある。「中国の政策や現実をみると、とうに共産主義ではなくなっているの
に、なぜ『共産主義』と言い続けるのか」、「中国共産党は中国の政治、経
済、社会のすべてに対し強い拘束力を有しているはずなのに、地方の役人など
が好き勝手なことをしているのは何故か」、「経済発展しているのに、なぜ民
主化が進まないのか」等々。いずれも中国の統治を考える上で非常に重要な問
題なのだが、これらの疑問に明快に答えるのは難しい。一国の中に先進国と途
上国、日本以上の自由主義と権威主義、それらが同時に存在するようなこの巨
大な国を包括的に説明しようとすれば、曖昧な説明に流れてしまわないか、単
純化による事実の取りこぼしをしてしまうのではないかと恐れるからである。

本書の著者であるマクレガーは、20年にわたり中国報道に携わってきたジャー
ナリストであり、長年の中国滞在で得た知識・具体例を盛りこみながら、外部
からは見えにくい中国共産党の機能と権限について丁寧に説明している。国の
最高指導部から基層の民衆まで、さまざまな人々の声や事象を紹介していくこ
とで、中国の内部にいかに多様な声や立場が存在するか、中国共産党がどのよ
うに人々を統治しているかを刻々と描き出していく。数多くの具体的な事例が
紹介されているが、章ごとにテーマを設定しているため、事例の多さが煩雑さ
につながってはいない。

 続きはこちら↓
 http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=875

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■┓『外交証言録 沖縄返還・日中国交正常化・日米「密約」』
┃┃ 栗山尚一著、中島琢磨・服部龍二・江藤名保子編(岩波書店、2010年)
┃┃
┗┛ 評者:昇亜美子(政策研究大学院大学助手)

戦後日本外交史における印象深い出来事として、沖縄返還と日中国交正常化を
挙げる人は多いだろう。本書は、この「戦後」の終わりを決定付けたふたつの
重要な外交交渉に、条約局に所属する外交官として深く関与した栗山尚一への
5回にわたるインタビュー記録を基にした証言禄である。本書の内容紹介に続
き、その意義について論じたい。なお、評者自身も第2回目のインタビューに
参加しており、本書を評価するうえでは厳密な意味で中立な立場にないことを
お断りしておく。

本書冒頭には栗山による「はしがき」に続き、編者の一人で、沖縄返還や日米
安保問題を専門とする中島琢磨による解題「栗山尚一と日米・日中関係」が収
録され、栗山証言の意義が明確に示されている。読者は是非この解題から読み
進めることを勧めたい。

 続きはこちら↓
 http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=874

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日本外交に関心を持つ方々へ

北岡伸一(東京財団上席研究員、東京大学教授)

清沢洌は『外交史』(1940年)の序文に、「外交史に関する知識が、今日ほど
必要とされてゐる時はない。この知識を基礎とせずして造りあげられたる外交
政策と、外交輿論は、根のない花である」と書いています。

これは、時代を超えた真理だと思います。現代の日本は、当時ほど切迫した状
況にあるわけではありませんし、当時とは比較にならないほどの言論の自由が
あり、情報収集も容易です。にもかかわらず、現代の外交政策や外交世論が、
正確な外交史の知識の上に築かれているとは、決して言えないのではないでし
ょうか。

その一方で、戦後外交に関する研究は着実に発展しつつあります。外交文書の
公開や情報公開制度の利用等によって、新しい史料が利用可能となり、アメリ
カ等外国の文書に主として依拠した研究から、より総合的複眼的な視点が提示
されつつあります。それらの研究は、しかし、まだ専門研究者の間で共有され
るだけで、広い外交論議の基礎として十分利用されてはいないというのが現状
です。

このニューズレターは、そうしたギャップを埋めることを目指しています。す
なわち、戦後日本外交史およびこれに密接に関連する分野(日米関係史、日中
関係史、その他の国際政治史、日本政治史、地域研究など)において最近登場
した優れた研究を、対外政策に関心を持つ幅広い層、いわゆるforeign policy
constituency に紹介しようとするものです。日本外交を「根のある花」にす
るために、ささやかな貢献ができれば幸いです。

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『外交史ブックレビュー』第35号(2012年1月11日発行)

発行元:東京財団 政治外交検証研究会(リーダー:北岡伸一上席研究員)
    〒107-0052 港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階
    http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19

編集責任者:五百旗頭薫(東京大学社会科学研究所准教授)
      細谷雄一(慶應義塾大学法学部教授)
      宮城大蔵(上智大学外国語学部准教授)

編集担当:林大輔(慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程)
     松下薫(東京財団広報渉外担当オフィサー)

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