東京財団 外交史ブックレビュー

東京財団 外交史ブックレビューvol.047

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2013.05.28
    ◇◆◇ 東京財団 外交史ブックレビュー Vol.047 ◇◆◇
     http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19
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▼▽ ブックレビュー

日本政治外交に関連する最近の優れた書籍・論文等を、気鋭の研究者が紹介し
ます。外交の実務に携わる方々には必須のものばかりです。是非お読みくださ
い。


■┓『大戦間期の対中国文化外交 ― 外務省記録にみる政策決定過程』
┃┃  熊本史雄著(吉川弘文館、2013年)
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   評者:千葉功(学習院大学文学部史学科教授)


本書の最大の意義は、著者自身が序章・終章で強調するように、日本外交史研
究において史料学的アプローチを積極的に採用したことにある。それは、史料
学的アプローチを提唱する中野目徹氏を指導教官に持ち、さらに外交史料館勤
務で「書庫に自由に出入りできる立場となり、外務省記録という“宝の山”に
常に囲まれた環境に身を置くことができた」(p.335)ことが大きく作用して
いる。このことは、本書を個性的で魅力的なものとして刻印することになった
のである。

例えば、pp.105-112に典型的に表れるように、外交文書の欄外等に見られる接
受印や接受年月日から、文書の処理過程ないし文書のライフステージを再現し
たところなどは、きわめて興味深い。これほど「外務省記録」に関して史料学
的アプローチを突き詰めて研究したものはほぼないと思われるからである。そ
して、以上の検討をふまえて〈亜細亜局保管文書〉や〈文化事業部保管文書〉
を再現し、さらにそれをもとに外務省内における意思決定過程のあり方の分析
に進める。例えば、著者は第3章で、〈亜細亜局保管文書〉率が減少に転じた
1925年以降も、〈文化事業部保管文書〉率が高率を維持したことをもって、文
化事業部が亜細亜局の文書処理過程に影響されることなく、独自の意思決定過
程を形成していたことの表れと指摘(p.163)するが、これは近代史料学的研
究の方法が日本外交史研究において適用され、新たな外交史像を描くことに成
功していることを示している。

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http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=1178

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■┓『植民地独立の起源 ― フランスのチュニジア・モロッコ政策』
┃┃  池田亮著(法政大学出版局、2013年)
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   評者:川嶋周一(明治大学政治経済学部准教授)


本書は、1956年にチュニジアおよびモロッコがフランスから独立を勝ち取るプ
ロセスを極めて詳細かつ丹念に辿った研究である。フランスはかつてイギリス
に次ぐ世界大の植民地帝国を築いた。正確に言えば、世界の複数の地域に植民
地を持った「世界帝国」はイギリスとフランスだけである。それ以外のヨーロ
ッパ列強は、オランダであれ、イタリアであれ、ベルギーであれ、きわめて限
られた領土しか植民地として持ちえなかった。我々が今日19世紀から20世紀中
盤にかけてヨーロッパ諸国が築いた植民地帝国という姿は、端的には英仏が構
築した仕組みと経緯を投影したものである。そのような植民地化から脱し、現
地の人々の手からなる国家を構築するという脱植民地化は、第二次大戦後の世
界における巨大な国際政治変動であることは、筆者の言を俟たない。しかる
に、実のところ脱植民地化のプロセスは、第二次大戦直後の例外的な独立以外
は、全て1960年以降に起こるが、唯一1950年代に起こった独立がフランスから
のチュニジア・モロッコの1956年の独立なのである。このチュニジア・モロッ
コの独立は、何故起こったのか。そしてその独立はどのような歴史的な意味が
あるのか。池田氏は、フランスのみならず、英米両国の一次史料に当たりなが
ら、チュニジア・モロッコの独立経緯に隠された歴史的意義を詳らかにしてい
く。


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http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=1146

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▼▽ 新刊図書紹介

2013年4月に刊行された政治外交関連の図書リストです。外交に関する情報収
集や研究のデータベースとしてお役立てください。


4月のリストはこちら↓
http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=1148



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           日本外交に関心を持つ方々へ

          北岡伸一(東京財団名誉研究員)

清沢洌は『外交史』(1940年)の序文に、「外交史に関する知識が、今日ほど
必要とされてゐる時はない。この知識を基礎とせずして造りあげられたる外交
政策と、外交輿論は、根のない花である」と書いています。

これは、時代を超えた真理だと思います。現代の日本は、当時ほど切迫した状
況にあるわけではありませんし、当時とは比較にならないほどの言論の自由が
あり、情報収集も容易です。にもかかわらず、現代の外交政策や外交世論が、
正確な外交史の知識の上に築かれているとは、決して言えないのではないでし
ょうか。

その一方で、戦後外交に関する研究は着実に発展しつつあります。外交文書の
公開や情報公開制度の利用等によって、新しい史料が利用可能となり、アメリ
カ等外国の文書に主として依拠した研究から、より総合的複眼的な視点が提示
されつつあります。それらの研究は、しかし、まだ専門研究者の間で共有され
るだけで、広い外交論議の基礎として十分利用されてはいないというのが現状
です。

このニューズレターは、そうしたギャップを埋めることを目指しています。す
なわち、戦後日本外交史およびこれに密接に関連する分野(日米関係史、日中
関係史、その他の国際政治史、日本政治史、地域研究など)において最近登場
した優れた研究を、対外政策に関心を持つ幅広い層、いわゆるforeign policy
constituency に紹介しようとするものです。日本外交を「根のある花」にす
るために、ささやかな貢献ができれば幸いです。

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『外交史ブックレビュー』第47号(2013年5月28日発行)

発行元:東京財団 政治外交検証研究会(リーダー:北岡伸一名誉研究員)
    〒107-0052 港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階
    http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19

編集責任者:五百旗頭薫(東京大学社会科学研究所准教授)
      小宮一夫(駒澤大学文学部非常勤講師)
      細谷雄一(慶應義塾大学法学部教授)
      宮城大蔵(上智大学外国語学部准教授)

編集担当:松下薫(東京財団広報渉外担当オフィサー)

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