タイプ
政策提言・報告書
日付
2011/7/27

日本農業の長期的ビジョン―ぶれない農政の実現に向けて―

ぶれない農政の実現に向けて



環太平洋経済連携協定(TPP)への参加をめぐる問題が浮上して以降、メディアが農業や農政に関する論点を大きく取り上げ、そのあり方をめぐる議論が活発になっています。

一方、農業・農村では、高齢化や耕作放棄地の拡大の問題がより一層深刻となり、価格支持制度や担い手の育成、農協の役割や生産調整の今後など、考えなくてはならない課題が山積しています。

東京財団は、日本の農業の再生に向けて、それぞれの個別議論や「産業としての農業」という捉え方だけではなく、その時々の政治情勢に左右されない広い視野に立った長期的なビジョンが不可欠であると考えます。

そこで、「日本の農政改革」プロジェクトでは、2年にわたるこれまでの研究成果として、「日本農業の長期的ビジョン」をまとめました。

この政策提言書では、農業・農村の現状を俯瞰した上で、TPP交渉参加の有無にかかわらず進めなければならない農政政策について、ぶれることのない骨太のビジョンを示しました。

■政策提言「日本農業の長期的ビジョン」(PDF:587KB)





「日本農業の長期的ビジョン」の概要

第1章 日本の農業・農政をめぐる主要な論点 7つの切り口からの俯瞰
 ・各章のイントロダクションとして
  【直接支払い型農政】 支給の対象、財政負担に対する納税者の理解、WTO規律との整合性
  【担い手】 水田農業で深刻な担い手不足、「担い手政策」の必要性
  【農地】 無秩序な農地転用と耕作放棄地の拡大、農地集積や企業などの農業参入をめぐる農地の利用調整や権利移転の問題、<農地制度運用の第三者によるチェック体制>
  【コメの生産調整】 農家の生産調整参加のインセンティブと米価維持のための市場介入のバランス、不透明な中長期の展望
  【農協】 競争上の公平性に対する批判、農業の活性化につながっていないという批判、<農協に代わる組織の設立>
  【資源管理と環境保護】 異質な構成員による農村コミュニティの共同行動のあり方、環境への負荷が小さな農業の実現、<農業政策における地方分権の推進>
  【中山間地域】 生産性が低いものの食料供給の役割大、伝統文化の継承、将来像の模索

第2章 持続可能な水田農業を目指して 担い手づくりに関する問題提起とその議論
 ・農地面積の減少、進まない世代交代
  ― 危ぶまれる水田農業の持続可能性
 ・持続可能な水田農業のビジョン
  ― 数集落に1戸主たる職業として農業を営む農家。他、兼業農家など様々な主体で構成する農業生産構造
  ― コミュニティ(基層)とビジネス(上層)の二層からなる農業生産構造
  ― 切れ目のない参入によって再生産される農業生産構造(担い手支援・農業経営の自由度の確保)

■政策提言
 ・持続可能な水田農業ビジョンの明確化と日本社会のコンセンサス
 ・持続可能な水田農業ビジョンに照らした農業政策の総点検
 ・農業政策と社会政策、目的に適した政策デザイン、事後検証・政策の透明性など

第3章 中山間地域に独自の農業・産業展開を求めて ケーススタディをふまえた検討
 ・中山間地域は、多様な稼ぎで生計が維持された「多業型経済」であり農業はその1つ
  ― 中山間地域の振興は農業以外の多様な「業」を含めた「多業型経済」の現代的再生が基本
 ・中山間地域の農業は農業産出額や農地面積で4割を占め日本の農業にとって役割は大きい
 ・中山間地域に住む生活者にとって農業は、生活空間の保全や景観の意味でも重要である

■政策提言
 ・中山間地域等直接支払制度の恒久化:制度の法制化と政策評価システム
 ・「多業型経済」の再生
  ―「需要創造型6次産業」の構築支援:起業資金供給・相談窓口・人材育成
  ― 生活サービスの産業化支援:過疎地域など特定地域に限った規制緩和の実施

第4章 農政の執行体制刷新 農政における地方分権のあり方
 ・農業は地域密着型産業であり、各地の条件に合った政策設計が求められる
 ・市町村合併などにより地方自治体の農政推進体制が脆弱化
 ・「協議会農政」は、公金管理面で脆弱でかつ「無責任体制」が生まれやすい

■政策提言(短期的に取り組むべき課題)
 ・法律等による市町村レベルの協議会の正当化・分野毎の協議会を統合化する仕組みの構築
 ・自治体、JAなど農政関連組織のワンフロアー化

■政策提言(分権改革の全体像にかかわる長期的課題)
 ・農村振興政策・農業環境政策の企画・立案主体としての都道府県の再設定
 ・不測時の食料確保、農地総量の確保における国と地方自治体の役割分担と連携の仕組みづくり
 ・食料・農業・農村基本法の改正:国・都道府県・市町村の役割分担の明確化、「中央」と「地方」の二元論からの脱却

第5章 ぶれない農政に向けて:TPP交渉参加問題に対する4つの観点からの問題提起
 ・唐突なTPP交渉参加の検討方針
  ― 綿密なリサーチと冷静な比較考量、利益再分配政策の検討の欠如
 ・農業界と経済界の単純な対立図式
  ― 原材料の供給、フードビジネス、国民の購買力などにおいて深い関係
 ・迷走・逆走が続く農政―ぶれる担い手政策
 ・東日本大震災を契機とした「地域間共生」の追求
 ・おわりに
  ― 国際化の問題を前になすべきこと、考えるべきこと




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