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第7回 現代アメリカ研究会報告(スコット・ベイツ氏講演)

January 30, 2008

現代アメリカ研究会では、この度、民主党系外交安全保障専門家のスコット・ベイツ氏が来日する機会に、臨時研究会を開催しました。ベイツ氏は、バージニア州政府で経験を積んだ後、連邦議会では安全保障問題の政策アドバイザーとして、9・11以降、アメリカをテロリストの攻撃から守るための処方箋「テロとの戦いに勝利する」や「民主党国土安全保障戦略」を策定したことで知られています。法律家として大学で教鞭も取っています。現在、ワシントンの国家政策センター(Center for National Policy)の副所長兼安全保障担当シニアフェローとして活躍しています。ここに、ベイツ氏の報告と質疑応答の要約を掲載します。

開催日時:2008年1月17日、18:30~20:00
於:東京財団会議室

スコット・ベイツ氏講演要旨

ブッシュ政権支持率が低迷し、民主党多数の議会も国内政策において成功しているとは言えない中で、米国国民の75%が、政治が誤った軌道に乗っていると感じ、「変化への希求」を表明するようになっている。2008年大統領予備選挙のプロセスでは、どの候補者も決定的な勝利をおさめていないことからわかるように、流動的な米国の政治環境で展開され、確かな見通しは立てられない。これまで二大政党に対する有権者の忠誠度は安定しているとされ、民主党が35から40%、共和党が35%の全国得票率を維持してきた。しかしこれら二政党の得票率は急激に減少しつつあり、今回の選挙で最大の有権者ブロックは、インディペンデントである。インディペンデントの票は、二大政党のどちらにも流れる可能性がある。

オバマ民主党大統領候補やハッカビー共和党大統領候補は、政党エスタブリッシュメントに属さないアウトサイダーであるにもかかわらず、予備選挙で勝利している。民主党のヒラリー・クリントン、共和党のマッケイン、ロムニー候補らは、政党エスタブリッシュメントからの出馬であるために他の候補者より有利と予想されていたが、1月4日に行われたアイオワ州での予備選挙で見た通り、彼らは十分な支持を得られなかった。
それでは二政党の内部で何が起きているのだろうか。共和党では、党内を統合するだけの有力者が不在であるため、三つの勢力の間で内紛が起きているといえよう。これら三つの勢力とは、社会保守派、財政保守派、そして大きな政府を容認する勢力である。

第一にキリスト教右派を含む社会保守派は、マイク・ハッカビー候補を支援している。ハッカビーは、社会保守派にとって完璧な大統領候補ではないが、二度離婚歴がありかつ同性愛者の権利を容認するジュリアーニ候補や、モルモン教徒であるロムニー候補よりは社会保守派の支持を集めやすいのである。第二の勢力である財政保守派は、内部で分裂しているものの、主にマッケイン候補の支援に回っている。これは「責任ある、限定的な政府」を推進する勢力である。三つ目の大きな政府を容認する勢力は、共和党内の一派としては耳慣れないかもしれないが、ジョージ・ブッシュ現大統領がこの勢力にあたる。ブッシュ政権は連邦支出を激増させ、強硬的な外交政策を施行してきた。この陣営に属している大統領候補者はロムニーおよびジュリアーニの二人であり、共和党のエスタブリッシュメントとなっている。大統領選挙ではさしあたって、共和党のどの候補も圧倒的優勢には立っておらず、今後も大統領選挙キャンペーンを通じて、引き続き三つの勢力が競合し続けることになるだろう。

他方、民主党には党内を統合する理念のようなものは不在である。ただひとつ党内を結束させる方針があるとすれば、それは民主党がジョージ・ブッシュの政党ではないという点である。党内では「ブッシュ現政権からの変化」が主な議論となっているが、具体的に何へと変化するのかはまだ明確になっていない。なお、これまで過去の大統領選挙では、民主党は「不満を抱えた人々の政党」と見られる傾向にあった。つまり経済的弱者、雇用を求めるブルーカラー労働者、年金受給者、そして同性愛者や黒人・ヒスパニックなど公民権保護を求める団体などの集まりだと認識されてきたのである。

米国の大統領選挙における争点は、大別すると、国家安全保障または経済の二つに分けられてきた。1944年から1984年までは国家安全保障、1992年、1996年、2000年の大統領選挙は経済が主要争点であった。1988年はちょうど移行期にあたるが、この時は日本との経済摩擦が問題とされ、それから20年経った2008年には中国との経済関係が争点として浮上してきている。ちなみに、2002年、2004年の選挙では9.11後のテロとの戦い、また2006年にはイラク政策の失敗が問題とされ、国家安全保障が争点であった。

2008年大統領選挙においては、グローバル化が進む中で米国経済の受ける影響が争点となりうる。中国との経済関係についていえば、民主党、共和党どちらにも所属しないインディペンデント、また女性の有権者らにとって、安全性に問題のある中国製品および食品は重要な関心事項である。また産業労働者らは、中国国内の人件費が安価なために競争が起こると考えている。米国のナショナリストにとっては、中国の台頭は脅威と映る。

一方、日本は米国の寡黙なパートナーであり21世紀最高の同盟国である。我々の間には議論を戦わせる必要も無いほど合意が取れている。2009年に新政権が発足した後の日米の協力関係には、次の四つの機会がある。すなわち、中東の石油に縛られない代替エネルギーの共同開発、ミサイル迎撃システムの開発、法の執行を中心とした国土安全保障、そして中東の安定化である。

質疑応答

Q: イラクに対する兵力増派に関する民主党大統領候補らの立場について
A: 民主党活動家はほぼ反戦派である。ただし、米軍のイラク撤退について、米国のイラクにおける政治的勝利と軍事的勝利は別次元であることに留意せねばならない。持続的関与が必要である一方、人道的困難およびジレンマが存在する。

Q: 民主党候補者らのイラン政策について
A: 米軍がイラクに拘束され、ヘズボラの活動が激化する可能性がある以上、イランとの軍事的衝突は誰の希望するところでもない。外交努力と秘密工作による努力が必要であろうが、今のところ民主党の大統領選挙キャンペーンで主な争点とはなっていない。

Q: 日本との協力関係については?
A: 日米関係の安定は当然のこととしてとらえられており、大統領選挙キャンペーンでは問題となっていない。火急の政策争点はイラクであり、イラクでの混乱の拡大を防ぐためには世俗教育が必要である。米国の日本との協力についても、世俗教育に力点を置くべきである。

Q: 2007年前半の安倍政権に対して、米国議会は慰安婦問題決議など日本のナショナリズムに警鐘を鳴らした。現在は?
A: 過激ナショナリズムに対しては何も浮上していない。選挙区有権者に対する議員のサービス、という面が大きい。

Q: 北朝鮮を「テロリスト支持国家」リストから外すことについて、これは日本を見捨てることか?
A: これは米国に頼るべきではない問題である。

Q: 大統領選挙について、民主党、共和党のどちらにも傾く可能性のあるオハイオ州、ペンシルバニア州、ニューヨーク州、カリフォルニア州、フロリダ州などでは、共和党が勝利する可能性は?
A: 民主党は南部の州で勝つ必要がないと言われている。実際問題として、ヒラリー・クリントンが南部の州で勝利するのは困難であり、一方オバマはヴァージニア州北部の黒人有権者層の支持は得られるだろう。米国では、経済政策で民主党を支持する有権者、とくに貧しい白人にとって、黒人大統領候補を支持するほど人種的寛容は進んでいない。その例として、1992年に私(ベイツ氏)が、ヴァージニア州知事選挙に立候補したダグ・ワイルダーの選挙キャンペーンを手伝った時のことが挙げられる。ワイルダー候補は初のアフリカ系アメリカ人知事で、朝鮮戦争でブロンズスター勲章を授章した経歴を持っていた。最初に、1991年の不況時に均衡財政を促進し、増税に反対した唯一の州知事であるワイルダー候補をどう評価するか、と有権者に尋ねると評価するとの反応を得た。しかし続けてワイルダー候補のビデオ映像を見せたところ、ある男性は「なんということだ、黒人ではないか」という叫び声を挙げて首を横に振った。このように、人種に関して我々は昔より啓蒙されていると言えるものの、全く肌の色が影響しないわけではないのである。

Q: 2月5日のスーパー・チューズデー時点での民主党候補者らの勝利予測は?
A: クリントンはニューヨーク州、カリフォルニア州などの人口の多い州での勝利、オバマはサウスカロライナ州での勝利が予測される。オバマ支持にまわっているのは年収10万ドル超の富裕者層、クリントン候補は年収6万ドル以下の貧困層であり、民主党の支持者層も二分化している。

Q: 民主党多数の議会へ移行して、イラク政策から国内政策へ重点が移行したにもかかわらず、なぜ連邦議会への国民の支持率は低迷しているのか?
A: アメリカ人の習性として、自分が選んだ議員は好ましく感じるが、連邦議会という組織を嫌うという傾向がある。これは、連邦議会について国民の理解が不足しているせいでもあるが、消費者信頼感指数の低下にともなって議会支持率も下がる傾向にある。

Q: 大統領選挙で勝利した政党が、議会選挙においても票を伸ばす(コートテイル効果)可能性は?
A: どの候補者にとっても、コートテイル効果は小さいものと考えられる。まずオバマの影響は持続性が無い。ヒラリー・クリントンは、コートテイル効果は見込めない。というのも、南部州および西部州選出の民主党議員らにとっては、クリントン候補は人々を分極化する人物として映るために、選挙キャンペーンで彼女に同行してほしいと考えていないからである。共和党候補者の間ではコートテイル効果は皆無であろう。

Q: ワシントンDCに対する国民の不信感は、なぜ起きているのか?
A: イラク政策の失敗が続いていることや、ハリケーン・カトリーナ災害、経済の先行き不安などにより、連邦政治が金と利益団体によって左右されるようになったと国民が感じていることに起因している。

Q: 日米間の合意を形成するのは容易ではないが、米国政権や政策立案者らの間で日本社会の感情に考慮する動きはあるのか?
A: ない。ワシントンDCでのもっぱらの関心は中国におかれている。

Q: 民主党のテロ対策の骨子は?
A: 目標対象を戦略的に選択すること、国土安全保障、そして潜在的テロリストの浮上を防止することに重点を置くべきである。特に最後の点に関しては、マーシャルプラン規模の援助が必要であると思われる。中東からインドネシアまでのイスラム圏の中産階級に対して、世俗教育を行うべきである。また軍事面では、諜報活動の強化、グリーンベレーなど特別部隊の訓練強化をすべきである。

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