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第111議会第1会期での主要法案に対する下院議員投票行動分析

December 24, 2009

東京財団「現代アメリカ研究」
リーダー:久保文明(東京財団上席研究員、東京大学教授)
メンバー:足立正彦(住友商事総合研究所シニアアナリスト)
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大統領選挙での勝利により有権者の信託を受けたフランクリン・ローズベルト、リンドン・ジョンソン、ロナルド・レーガンをはじめとする歴代大統領は、大統領就任1年目にその後それらの政権を象徴する大胆な立法措置を講じている。来年1月20日でオバマ政権は発足してからちょうど一年が経過する。そこで、第111議会第1会期(2009年1月3日~現在)において、米議会下院本会議で成立した主要法案に対する穏健派・保守派民主党下院議員ならびに穏健派共和党議員の投票行動について分析を行った( 別紙資料参照 )。


2008年米国大統領選挙と同時に実施された米議会下院議員選挙で、ジョン・マケイン共和党大統領候補の得票がバラク・オバマ民主党大統領候補を上回った選挙区から選出された民主党下院議員、とりわけ、民主党内の穏健派・保守派下院議員で構成される”Blue Dog Coalition”のメンバーがナンシー・ペロシ下院議長をはじめとする米議会下院民主党指導部やオバマ政権が推進した主要法案に、どのような態度を示したかを詳細に分析した。そうすることが主要法案成立に向けた民主党内の求心力の強弱を把握する点で有益であると考えたからである。

また、オバマ大統領は2008年大統領選挙キャンペーン期間中から党派政治からの決別を表明し、超党派アプローチの必要性を強く有権者に訴えていた。そこで、実際、共和党下院議員からの支持を獲得できているかを把握するために、2008年米国大統領選挙と同時に実施された米議会下院議員選挙で、オバマ民主党大統領候補の得票がマケイン共和党大統領候補を上回った選挙区から選出された共和党下院議員32名の主要法案に対する投票行動についても分析を行った。

米国経済システムが危機に直面する中、今年1月26日に下院本会議で成立した「2009年米国再生・再投資法(H.R.1)」には民主党下院議員255名のうち、反対票を投じた議員は11名であった。だが、6月26日に下院本会議で成立した「2009年米国クリーン・エネルギー・安全保障法案(H.R.2454)」(通称、ワックスマン・マーキー法案)には民主党下院議員全体の約17%に相当する44名が反対票を投じ、11月7日に下院本会議で成立した「医療保険改革制度法案(H.R.3962)」には民主党下院議員39名が反対した。景気後退局面にある中、有権者の間にはコスト負担の増大や行政の肥大化に対する強い懸念があり、オバマ政権が志向する改革に対する民主党内の支持が盤石ではないことが理解できる。

また、共和党下院議員の投票行動については、「2009年米国再生・再投資法(H.R.1)」には共和党下院議員178名のうち、誰一人として支持を表明することはなく、二酸化炭素排出権取引制度の導入を規定した条項を盛り込んだ「ワックスマン・マーキー法案」には7名、「医療保険改革制度法案」には1名がそれぞれ賛成票を投じたのみであり、下院共和党がオバマ政権や議会民主党に強く抵抗している現実を垣間見ることができる。

来春には民主党、共和党内でそれぞれ下院議員の予備選挙が開始され、2010年11月に投票が行われる中間選挙に向けた動きが活発化する。その観点からも第111議会第1会期で審議された主要法案に対する投票行動の分析は重要であり、今回の分析作業が米国の最新政治状況を理解するうえでの一助となれば幸いである。

以 上

  • 研究分野・主な関心領域
    • アメリカ政治
    • アメリカ政治外交史
    • 現代アメリカの政党政治
    • 政策形成過程
    • 内政と外交の連関
    • 住友商事総合研究所シニアアナリスト
    • 足立 正彦
    • 足立 正彦

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