タイプ
論考
プロジェクト
日付
2014/10/7

2014年アメリカ中間選挙 update 2:中間選挙への相乗りで始動する2016年大統領選挙(渡辺将人)

「2014年本選挙の終了はある意味で大統領選の予備選挙の始まりだ。しかし、インフォーマルな非公式の予備選過程は既に始まっている」*1 。これはニューハンプシャー州共和党戦略家リック・キリオンの発言であるが、アイオワ州でも政党関係者から同様の意見を多く耳にした。実際、現地調査中に最も目にしたテレビ広告は、ランド・ポールの広告(人工妊娠中絶反対CM)だった。今回の中間選挙が2016年大統領選に与える影響については諸説あるが、共和党が上下両院で多数派になると、2016年大統領選の共和党勝利には微妙にマイナスになる可能性も議論されている。

第1に、共和党全国委員長のプリーバスが指摘する「中間選挙で勝てる政党」と「大統領選でなかなか勝てない政党」の<2つの政党>に共和党が陥っている問題だ。大統領選でヒスパニック票を獲得するには議会共和党の移民政策はあまりに保守的だが、中間選挙勝利で議会共和党が選挙民からの信任に自信を持つと、無党派層に支持を広げる柔軟性が益々共和党内から奪われる懸念がある*2 。第2に、レイムダックの民主党大統領と共和党多数派上下両院の対立構図が生まれれば、民主党次期大統領への期待感が高まり、(立候補すれば)クリントンの勝算を高めるという予測だ*3 。ただ、共和党が60議席を上回る大勝でなければ、共和党の上院多数派奪還は、大統領選に立候補する共和党上院議員には、足枷要因になるとの見方もある。僅差で上院多数派になると議員は法案をめぐる投票でワシントンに常時縛り付けられるので遊説に出にくくなり、相対的に自由度が高い知事候補が予備選で有利になる。上院で民主党が多数派を維持すれば、議会停滞の責任を上院民主党に負わせるレトリックが成立し、共和党上院議員の現状批判にも説得力が出る。大統領選に野心のある共和党上院議員にとっては、上院では少数派維持が都合がよいとの観測もあり、2016年をめぐる損得勘定は複雑だ。

さて、9月12日に早くもアイオワ州民を対象にしたCNN/ORC Internationalの世論調査が発表された*4 。共和党登録済み有権者を対象とした「本日党員集会が開かれたと仮定して支持する候補者」の選択肢は、ブッシュ(元フロリダ州知事)、クリスティ(ニュージャージー州知事)、クルーズ(連邦上院議員)、ハッカビー(元アーカンソー州知事)、ジンダル(ルイジアナ州知事)、ポール(連邦上院議員)、ペンス(インディアナ州知事)、ペリー(テキサス州知事)、ルビオ(連邦上院議員)、ライアン(連邦下院議員)、サントラム(元連邦上院議員)、ウォーカー(ウィスコンシン州知事)の12人。結果は上位からハッカビー21%、ライアン12%、ポール7%と続き、6%がブッシュとクリスティ、5%がペリー、ルビオ、ウォーカー、3%がクルーズ、ジンダル、サントラムだった。選択肢以外の回答が3%、支持無しが3%、無回答が15%だった。

他方、民主党登録済み有権者を対象とした選択肢は、バイデン(副大統領)、クリントン(元国務長官)、クオモ(ニューヨーク州知事)、オーマリー(メリーランド州知事)、パトリック(マサチューセッツ州知事)、サンダース(連邦上院議員)、ウォーレン(連邦上院議員)。クリントンが53%で過半数、バイデン15%、続いてウォーレン7%、サンダース5%、クオモ3%、オーマレイ2%、パトリック1%で、選択肢以外の回答が1%、支持無しが3%、無回答が12%だった。共和党側が複数の人物に支持が分散しているのに対して、民主党は支持がクリントンに1本化されている。また、アイオワの宗教保守層が、サントラムではなく、ハッカビー支持に相当傾いていることも興味深い。

中間選挙に便乗して予備選挙過程の緒戦アイオワ州を訪問することは、大統領選立候補予定者にとって、手応えを探り立候補を決断する上で重要だ。他方、彼らの選挙区訪問は、メディア報道、活動家の掘り起こし、資金集めの活性化の諸面で、中間選挙にも間接的に影響を与える。今回の中間選挙では、2016年立候補予定者が乱立状態の共和党側に大きな効果をもたらしている。立候補が噂される政治家が続々とアイオワやニューハンプシャー入りをし、共和党地方組織を盛り上げ、全国メディアの報道を共和党に振り向けている。ランド・ポールは8月初旬に3日間のアイオワ縦断ツアーを敢行し、連邦下院選の献金パーティで絶大な集客力を見せつけた。ポールが中間選挙応援を利用して進めている戦略は「支持層拡大」である。リバタリアン以外に支持を広げるため、中間選挙に向けてオバマ批判演説を増やし、「リバタリアンのポール」ではなく「共和党のポール」のブランド確立に忙しい。アイオワでは地元ビジネス界、福音派牧師など各層との会食日程をこなした。また、ポールのツアーに続き8月9日には、アイオワ州エイムズで開催された社会保守派の祭典「ファミリー・リーダーシップ・サミット」で多数の福音派有権者を前に、クルーズ、ペリー、ジンダル、サントラム、ハッカビーが演説した。ルビオは連邦上院選の応援で、クリスティは同州知事選の応援でアイオワ入りした。文字通り2016年候補予定者による応援の大安売りであり、同州下院2区選挙戦にはポール、ペリー、ジンダルが相次いで参加している。

無論、中間選挙便乗の大統領選挙運動にはリスクもある。中間選挙終了までは、たとえアイオワやニューハンプシャーの有権者といえども大統領選に関心の焦点が絞られていない。減点法による野次馬的品評になりがちで、ネガティブな評価が拡散しかねない。実際、ポールのツアー後も父ロンの影響への疑念は完全には払拭されず、不満が漏れ聞こえてきた。ある共和党アイオワ州委員幹部は「ランド・ポールにはやはり問題がある。孤立主義の大統領を世界は求めないだろう」と感想を語ったが、熱心に現地入りしたジンダルについても、「政策通だが演説にカリスマ性がなく閣僚向き」と冷淡な声を複数聞いた。ジェブ・ブッシュについては、移民政策の寛容さや教育政策でのコモン・コア(各州共通基礎スタンダード)支持が、保守派に激しく不評だ。中西部共和党の候補者辛口採点の背景には、2012年にバックマンに幻滅させられた後遺症もある。「バックマンを大統領の器だと信じたのが間違いだった。魅力的と思ったが騙された」と振り返る、ティーパーティ運動にも共感を寄せるアイオワ州共和党元郡委員長は、「クルーズは大統領の器ではない」と冷静だ。

他方、民主党は2016年大統領選との相乗り効果を共和党のように期待できない状況にある。クリントン人気が突出する中、他の候補検討者がクリントンに配慮をして動き出せない。「バイデンもウォーレンもヒラリーがもし不出馬宣言をすれば、すぐにでもアイオワに入るはず」(アイオワ州民主党委員)と予測されている。民主党全国委員長のシュルツがアイオワ入りしたのも、大統領選絡みのビッグネームの現地入りは困難だったからだ。しかし、9月14日、満を持してクリントン夫妻が、アイオワ州インディアノーラで開かれたハーキン上院議員の資金集めピクニックに参加した。ヒラリーがアイオワに入るのは実に2008年の党員集会以来である。立候補宣言こそなかったが、かつて1992年のビルの選挙スタッフを務めたアイオワ州民主党の郡幹部は、「重要な第1歩」と満足げである。ニューハンプシャーに強いクリントン夫妻はアイオワには独自の草の根組織を有していないが、2008年のオバマに匹敵する手強い対抗馬が党内で出現しない限り、本格的な草の根組織無しのままでもアイオワ党員集会での勝利は容易だ。今回の現地入りは全米世論も意識した象徴的なものだ。民主党側でも2016年に向けた動きが事実上の「解禁」に傾いている。

尚、CNN世論調査の選択肢以外にも、共和党側ではケイシック(オハイオ州知事)、民主党側ではファインゴールド(元連邦上院議員)、ケイン(連邦上院議員)などへの期待感が、地方政党組織や活動家の間では存在する。とりわけ副大統領候補については、世論調査の選択肢圏外から浮上する可能性が今後も大いにある。

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*1: Steve Peoples and Ken Thomas, 2016ers Jockey Even Before Congressional Elections, Associated Press, September 1, 2014.

*2: Nicholas Riccardi and Charles Babington, GOP’s Midterm Strength Could Be Problem in 2016, Associated Press, June 15, 2014.

*3: Howard Koplowit, Midterm Elections 2014: How A Republican Senate Victory Could Help Hillary Clinton, International Business Times, September 17, 2014.

*4: http://i2.cdn.turner.com/cnn/2014/images/09/12/topia1.pdf

■渡辺将人 北海道大学准教授