タイプ
論考
プロジェクト
日付
2014/10/30

2014年アメリカ中間選挙 update 3:再選で苦戦する州知事たち(池原麻里子)

共和党が連邦議会下院では2桁で議席を伸ばすことが確実視され、上院も多数党になるかどうかが注目されているが、今年の州知事選挙では例年になく多くの現職が、再選を目指して悪戦苦闘している。オープンシートを含む36州での選挙のうち、すでにニール・アバクロンビー(民・ハワイ)が予備選挙で敗北し、トム・コーベット(共・ペンシルバニア)の敗北が確実視されているほか、10あまりの州*1 でトスアップ状態となっているのだ。通常、中間選挙では州知事選挙でも議会同様、野党からの当選者が増えることが多く、1994年には共和党州知事が11人、2006年には民主党州知事が6人、2010年には共和党州知事が6人増えたのだが、今年は特に共和党候補が苦戦していることが興味深い。その状況は2010年と2014年を比較した次のグラフを見ると一目瞭然である。


図表1 Close races and party changes



(出所:The New Republic 2014 Midterms “The Data Favors Democrats”*2


全体的に共和党、民主党両党の州知事が悪戦苦闘しているのは、レッド・ステート、ブルー・ステート両方で有権者の不満が募っているせいだ。景気が回復してきたといっても、過去4年失業率は高い状態が続き、賃金も上昇していない。多くの州知事たちは財政赤字を引き継いだため、共和党州知事は主に予算カット、減税で対応したが、教育予算カットなどは有権者に支持されない。民主党州知事は大幅な予算カットはせず、増税による財政均衡を試みた。

共和党州知事については、2010年にミシガン、オハイオ、ペンシルバニア、ウィスコンシンといった中西部で、民主党から職を勝ち取ったがその後、統治に苦労しており、オハイオのジョン・ケイシック以外は再選が危うい。そして、共和党のドグマを施行した知事は再選に苦労している。8人の再選が危うい知事は、ミシガン州知事を除く全員が医療保険制度実施に反対、または抵抗した。これはニューメキシコ、オハイオ、ネバダの医療保険制度を受け入れた知事が楽勝しそうなのと対照的だ。


図表2 州知事選の全体の状況は次の通り。(カッコ内は任期制限等によるオープンシート)




(Cook Political Reportを参考に作成)



トスアップ州の状況

共和党州知事が現職の州

フロリダ
リック・スコット州知事に対し、チャーリー・クリスト元州知事0.6パーセンテージ・ポイント*3 で優勢。スコットはビジネスマンで、政治家の資質に欠けており、第一期は問題が多かった。元共和党州知事として成功したクリストは、2010年上院選で無所属となり、2012年に民主党に参加。

ジョージア
ネイサン・ディールが挑戦者ジェイソン・カーター州上院議員(カーター元大統領の孫)に若干リードしている。どちらも50%を超えそうにないため、決選投票となる可能性がある。

カンザス
サム・ブラウンバック州知事は、挑戦者ポール・デイヴィス下院議員に3.6パーセンテージ・ポイントも劣勢。2010年には圧勝したが、中絶禁止法や芸術支援予算カット、大幅減税などの超保守的政策が問題視されている。デイヴィスは人気がある穏健派の下院議員で、ブラウンバックに不満を抱くカンザス州の共和党政治家100名以上からの支持を得ている。

メイン
ポール・ルパージュは2010年、候補3人中、38%の票を獲得して当選したが、保守アジェンダで有権者の支持を失った。マーク・ミショー下院議員が優位ではあるが、今回も無所属エリオット・カトラーの存在があるため、当選確実とはいえない。

ミシガン
リック・スナイダー州知事が、マーク・ショイヤー元下院議員に多少、優位にある。スナイダーはビジネスマンとしての経験を活かし、イデオロギー政治は行わなかった。経済は改善し、失業率も下がった。しかし、年金生活者に増税し、企業税をカットしたことなどが批判されている。

ペンシルバニア州
トム・コーベットは教育予算カットやペン州立大学スキャンダルが問題視され、落選がほぼ確実視されている。ビジネスマンのトム・ウルフが圧倒的(11パーセンテージ・ポイント)優勢である。

ウィスコンシン
スコット・ウォーカー州知事に対して、企業家メアリー・バークは劣勢(1.8パーセンテージ・ポイント)。ウォーカーは保守政策を推進し、中道、穏健派共和党有権者の支持を失った。特に、州職員の労組交渉権限を奪ったことから、米歴史上、初めてリコール選挙を生き延びた州知事として名を残した。また2016年に大統領選に出馬する野心を抱えている。しかし、バークはウォーカーの弱点を自分に有利に使うような選挙活動を展開できていない。


民主党州知事が現職の州

コロラド
ジョン・ヒッケンルーパー州知事に対し、挑戦者ボブ・ボープレズ元下院議員が0.5パーセンテージ・ポイント優勢。コロラド州は昨年、マリワナが合法化されたことで注目を浴びた。そもそも州知事は合法化に反対だったが、最終的に施行したため、共和党と社会穏健派に批判されている。

コネチカット
ダネル・マロイ州知事に対し、トム・フォーリー元駐アイルランド大使が優勢(2.3パーセンテージ・ポイント)。そもそも2010年にも両候補が対決したのだが、マロイは6,500票以下の僅差で当選。伝統的に民主党優勢なコネチカットで、元ビジネスマンのフォーリーは裕福な民主党有権者の支持を集めることに成功している。

イリノイ
パット・クイン州知事は、挑戦者ブルース・ラウナーに対して1.5パーセンテージ・ポイントのリード。クインは2010年に僅差で当選したが、財政問題に対応できず、民主党よりのイリノイで苦戦している。ラウナーはプライベート・エクイティー経営者で、経済状況と教育制度を改善するというメッセージが有権者の支持を集めている。

ハワイ
現職ニール・アバクロンビーは、民主党予備選挙でデイヴィッド・イゲ州上院議員に敗北。そもそも民主党が圧倒的に強い州で、イゲはデューク・アイオナ(共)より優位(3.6パーセンテージ・ポイント)。無所属のムフィ・ハネマンの支持率が下がった分、イゲの支持が伸びてきた。

マサチューセッツ
オープンシートの州で、マーサ・コークリー州司法長官(民)が、ヘルスケア会社役員のチャーリー・ベーカー(共)に0.5パーセンテージ・ポイント、優位。マサチューセッツはデュヴァル・パトリックやマイケル・デュカキスのようなリベラル民主党員、およびミット・ロムニーのような穏健共和党員を州知事に選出してきた。今回は、銃規制など幾つかの有権者を二分する問題が勝敗を決めることになると思われる。

次の表で明らかなように、現職が再選する確率は近年の傾向として高くなっている。一般的に、州知事選挙で有権者は、職、交通、教育といった地元で最優先となっているイシューに基づき、判断し、外交政策などは問題とならない。リーダーシップや管理能力が重視される。


図表3 現職州知事再選結果(1960年~)




(Crystal Ball Researchのデータを参考に作成)


しかし、今年は国民の3分の2が「国が間違った方向に進んでいる」と感じていることから、大統領や州知事に責任を求めているようである。また、過去最高1960年の28人という数字を超える36人の現職が再選を目指しており、50州の79.1%の国民がその民意を表明するチャンスとなっている。

2016年大統領選挙出馬に野心を抱く共和党州知事は、まず再選されなければならない。また国民79.1%の投票行動は、接戦になることが確実視される2016年大統領選挙の行方の指標にもなることから、州知事選も目が離せない。

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*1: Real Clear Politicsは2014年10月20日時点で、14州をトスアップとしている。

*2: http://www.newrepublic.com/article/119926/2014-midterm-elections-republican-wave-wont-include-governorships?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_term=TNR%20Daily%20Group%20B&utm_campaign=TNR%20Daily%20Zephyr%20with%20LiveIntent%20-%20Oct%2022%201%20pm

*3:以下、Real Clear Politics平均

■池原麻理子 在米ジャーナリスト