タイプ
論考
プロジェクト
日付
2008/3/7

アメリカNOW19号 オハイオ・テキサス決戦を終えて~出口調査アップデート~ (2008年3月10日 安井明彦)

各党候補者選出の大きな山場である3月4日の予備選挙が終わった。共和党はマケイン候補が指名獲得を確実にしたが、民主党はクリントン候補がオハイオ、テキサス(投票分)で勝利を納め、予備選挙はさらに長期化する様相である。当地では、4日をもって両党共に予備選挙は終了するという雰囲気が濃厚だったが、クリントン候補は三度目の復活(アイオワ後のニューハンプシャー、サウスカロライナ後のスーパーチューズデー、連敗後の今回)を果たした格好だ。

もっとも、既に報道されているように、代議員獲得数からみてクリントン候補の逆転は簡単ではない。クリントン候補は、特別代議員の動向やフロリダ・ミシガンの代議員の処理に頼らざるを得なくなりそうだ。いずれにしても、選挙戦の長期化は、共和党のマケイン候補に漁夫の利を与える展開にもなりかねず、民主党関係者は頭の痛いところである。民主党関係者にはクリントン候補の自発的な撤退を望む向きが少なくないといわれる。また、両候補を正副大統領で処遇するという発想も、一つの落とし所として出てきているのかもしれない。

予備選挙の長期化を民主党が嫌う理由の一つは、党内分裂への懸念である。党内分裂については、2月14日付の本ページで予備選挙における出口調査の分析を紹介したが、この機会に3月4日の出口調査の結果を比較してみたい。



図表に明らかなように、今回の予備選挙では、スーパーチューズデー後の予備選挙に顕著だったオバマ候補のクリントン支持層への浸透が姿を消し、両候補の支持層の乖離が再び鮮明化している。例えば、クリントン候補は、女性、高齢層、低所得層、低学歴層などの支持を取り返している。ヒスパニックの数字は基本的にテキサスだけの結果だが、ここでもクリントン支持が大きく回復した。厳密に言えば、予備選挙が実施されている地域の人口構成が違うため、こうした現象に時間軸を組み合わせて語るのは難しいが、少なくとも民主党支持者が一様にオバマ支持に向かっているわけではなさそうだ。また特筆されるのは、「司令官として誰がふさわしいか」という問いに対して、クリントン候補を上げる割合がオバマ候補を上げる割合を再び上回った点である。有権者はオバマ候補の大統領としての資質をまだ判断しきれていないのかもしれない。

注目されるのは通商に関する質問項目である。通商が雇用に与える影響について、テキサスでは58%、オハイオでは80%が「州から雇用を奪っている」と回答している。テキサスとオハイオでは経済の状況は全く異なる。オハイオが製造業の低迷に苦しむ一方で、輸出が好調なテキサスは相対的に経済状況は悪くない。また、メキシコと国境を接するテキサスは、NAFTAの恩恵がわかりやすい地域でもある。そのテキサスですら、6割近くが通商に対して懐疑的な評価を行っていることになる。

今回の予備選挙では、オバマ・クリントン両候補が北米自由貿易協定(NAFTA)批判を競い合った。オバマ候補のアドバイザーがカナダ政府関係者に語ったといわれるように、こうした言動は政治的なポーズに過ぎないという見方は可能である。しかし、就任後の政策運営を取り巻く環境を考えれば、予備選挙を通じての候補者の言動が、世論を保護主義の方向へ動かす可能性は軽視すべきではない。

ちなみに、共和党については、ハッカビー候補の劣勢が明らかであったにもかかわらず、「とても保守」であると回答した層では、ハッカビー支持がマケイン支持を1ポイント上回っている。マケイン候補も党内をまとめるまでにはまだ課題がありそうだ。

■安井明彦 :東京財団現代アメリカ研究プロジェクトメンバー、みずほ総合研究所ニューヨーク事務所長