【生命倫理サロン】第11回「心は脳にあるか? ~精神の脳科学の現在と課題」 | 研究プログラム | 東京財団政策研究所

東京財団政策研究所

詳細検索

東京財団政策研究所

【生命倫理サロン】第11回「心は脳にあるか? ~精神の脳科学の現在と課題」

May 31, 2012

⇒ 第11回テーマ
: 「心は脳にあるか? ~精神の脳科学の現在と課題」

⇒ 開催日時
: 2012年5月29日(火)18:00-20:00

⇒ 開催場所
: 東京財団会議室

⇒ 概要説明(ねらい)
:脳科学がブームだといわれるようになって、はや数年になります。
この間、人の脳の中の活動の様子を色付きで表示した画像を、テレビや新聞などで一般の人でも普通に見られるようになりました。
脳科学がほかの生命科学の分野と異なるのは、人間にしかない(とされる)精神や心の機能が、どのように実現されるのかを解き明かそうとするところにあります。

脳はいかに心を生み出すのか? 本当に心は脳にあるのか? 脳は人体のほかの部分と比べて、どれだけ特別な存在なのか?
心の病は脳の病なのか? 脳という臓器に働きかければ精神疾患は治せるのか?
人の精神のありかを探る研究は、どのような倫理的・社会的な問題をもたらすのか?

今回は、精神科医で脳科学研究者の加藤忠史氏をお迎えし、また、うつ病・認知症コンソーシアム(CDD)の協力のもと、人の心に分け入る脳科学について最新の動向と今後の課題を伺い、いま私たちが何を考えなければいけないか、じっくり話し合ってみたいと思います。
どうぞふるってご参加ください。

⇒ ゲストスピーカー
: 加藤忠史氏(理化学研究所脳科学総合研究センター精神疾患動態研究チームリーダー)

1988年、東京大学医学部医学科卒業。同附属病院にて臨床研修。89年滋賀医科大学附属病院精神科助手、94年同大学にて博士(医学)取得。95年に文部省在外研究員としてアイオワ大学精神科にて研究、その後、97年に東京大学医学部精神神経科助手、99年同講師を経て、2001年1月より現職。08年同センター疾患メカニズムコア コア長を兼任。専門は、精神医学、神経科学。双極性障害の神経生物学的研究を行っている。

⇒ 聞き手 : ぬで島次郎(東京財団研究員)

⇒ モデレーター :薮本雅子(フリーアナウンサー)

⇒ 協力 うつ病・認知症コンソーシアム(CDD)


⇒ 議論の展開

1)「精神の脳科学」は、何をどう研究するか
人の心の働き・成り立ちを、脳という物質において探求する
*どうやって? 生体試料/細胞/画像/薬理/遺伝子・・・
主体、自我 / 感情、気分 は 物質を研究して解明できるか
知覚、運動や記憶・学習などの認知の研究と、どう異なるか
*精神疾患の原因は、どこまで脳にあるといえるのか

2)心や精神は人にしかないか/精神疾患は人にしかないか
*精神の脳科学の研究は、動物実験でどこまで分かるか?
*「モデル動物」は本当に精神疾患になっているのか?

3)死後脳から何が分かるか
*「ブレインバンク」はなぜ必要か、日本の現状はどうなっているか
*倫理的、社会的課題は何か

4)人にとって脳とは何か
*脳の研究と臨床の倫理:何をどこまでやってよいか
~脳がどれだけ特別な存在と考えるかで、答えは違ってくる
ゲノムが「生命の設計図」なら、脳は何?
*脳の研究と臨床は、ほかの分野と比べ、特別な管理や規制が必要か?
*脳科学研究でいま何が一番問題か、どうすればよいか

⇒ スピーカー・加藤忠史氏からのコメント
生命倫理サロン、ということで、研究倫理についての専門家であるぬで島さんと、突っ込んだ議論をするようなイメージで望んだ。事前の相談の際には、ついつい、心の探究には言語による探求も重要、というような、やや日和った意見を述べてしまったので、物質の研究で精神を探究したい、というスタンスを死守しよう、と決心して当日に臨んだ。

当日のぬで島さんの問いかけは、倫理についてというよりもむしろ、精神の脳科学研究のあり方そのものについての内容が多かったように思う。そのため、5年前の脳科学総合研究センター10周年イベントで行われた、「シリーズトーク」という、異分野交流脳科学トークに近いものになったように思う。

物質としての脳を研究することで、「精神」に迫ることが、今や可能になっており、そのためにも、精神疾患の研究は重要な位置を占めている、ということが、参加された方々に伝わっただろうか。
少なくとも自分にとっては、しゃべっているうちに、脳という物質の探求による精神の解明を、行けるところまで行ってみたい、という思いを新たにすることができたことは、収穫だったかも知れない。

⇒ モデレーター・薮本雅子氏からのコメント
お二方の対談、提案してみて心から良かった!と思いました。心はどこにあるんだ、精神が病むというのはどういうことかと、長年疑問に思って参りましたが、ようやく、その答えの鍵が見つかったような高揚感を覚えました。

精神科医で科学者の加藤さんの本音を容赦なく引き出していくぬで島さんの切り込み方はさすがで、あっという間の2時間。「脳のないところに魂はない」これだけ聞くと、反論もあるかと思いますが、なぜこの言葉がでてくるのか、それを知ると納得できます。積み残したテーマはまだありますので、第二弾も、是非、お願いします!!

⇒ 参加者からのコメント
・人間だけで考えてしまいがちな病気について、動物をふまえた話を聞くことができて、分かりやすかった。違う視点で話を聞くことができた(40代男性)

・「精神疾患の原因が仮にすべて科学的に解明されると精神疾患はなくなる」という加藤さんの話が面白かった。全体的にわかりやすかった。同じ精神医学者でも哲学的な観点の医学者もいるとの話なので、そのような学者と加藤氏が議論しても面白いと思う。個人的にはすべて科学的に解明されても、解決できない心の悩みが残るように感じた(40代女性)

・精神の脳科学の現状が良く整理されていて理解が進んだ。うつと認知症の研究の重要性が分かったので、関心を持ち続けたい。ブレインバンクの重要性はよく理解できたので、社会にもっとアピールすべきだと思う。どのように役立つのか具体的に分かれば、提供者が増えるのではないか(60代男性)

・興味深い内容でしたが、「脳」や「心」に関することでしたので、それを扱う思想というか、ジレンマとか、そういうことをスピーカーの方にお伺いしてみたかったです(40代女性)

    • 元東京財団研究員
    • 橳島 次郎
    • 橳島 次郎

注目コンテンツ

BY THIS AUTHOR

この研究員のコンテンツ

0%

INQUIRIES

お問合せ

取材のお申込みやお問合せは
こちらのフォームより送信してください。

お問合せフォーム