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法律は望む死を与えられるのか ~「尊厳死」法案を考える

August 22, 2014

⇒ テーマ

: 「法律は望む死を与えられるのか ~『尊厳死』法案を考える」

⇒ 開催日時

:2014年7月31日(木)18:00-20:00

⇒ 開催場所

: 東京財団A会議室

⇒ 概要説明(ねらい)

尊厳ある死とは何か?これまでも生命倫理サロンでは2回にわたり、尊厳死をとりあげてきました。患者の自己決定のみならず、そこに到るまでの患者と医師の関係や家族の関わり方、オランダにおける「積極的安楽死」が持つ意味など、多くの議論を重ねてきましたが、そもそも「尊厳ある死」とは何か、という大きな問題が横たわっていることが浮き彫りになりました。

今年の通常国会では、終末期における延命措置の不開始または中止を条件付きで認める法案の提出が見込まれましたが、現時点においても法案化に向けての議論が続いており、法案は次の国会以降での提出に持ち越されています。延命治療を行わないことや停止することは、それが本人の意思に基づくものとして、実際には誰がどう責任をもって行われるべきなのでしょうか。そして、それは法律で決められるものなのでしょうか。

今回は、「尊厳死法制化を考える議員の会」会長の増子輝彦・参議院議員をお招きして、法案の背景、意義、疑問点、今後の課題などについて、参加者の皆様とじっくり話し合ってみたいと思います。

なお、生命倫理サロンは、対話重視の場づくりをその旨としています。尊厳死という誰もが直面することについて忌憚ない議論を展開することができるよう、今回のサロンはこれまで参加申し込みを頂いたことがある方に限定してご案内を差し上げました。

⇒ 議論の展開

はじめに 議員連盟法案の現状と見通し

1 なぜ立法が必要か

・厚労省ガイドライン以降、立件例無し / 関連学会の指針策定も進む

・退院させ、施設・在宅に送るのがいまの医療の流れ:過剰医療はまだあるのか?

・まず医療を受ける権利の立法化が優先課題ではないか

・そのうえで各種ガイドラインの周知徹底を図るのでは不十分か?

2 立法のプロセスについて

・国会の内外で、どうやって多様な意見を吸い上げ集約するか?

3 議連法案の内容の検討

・「終末期」

・「延命措置」

・判断する医師

・本人の意思表示

・免責

4 賛否を問う

・ 議論をふまえて、参加者から賛成・反対討論

(サロン終了後に、参加者による法案に対する意見投票を行いました。)

⇒ スピーカー :増子輝彦氏 (参議院議員、尊厳死法制化を考える議員の会会長)

⇒ 聞き手、モデレーター : ぬで島次郎(東京財団研究員)

⇒ 参加者からのコメント

・この法案は、家族と本人の意見が異なった場合、結果的に本人の意見を優先して死を認めるということなのでしょうか。“死”は本人のものだけなのか、いつも疑問に思うところです。(50代 男性)

・「勉強になった」という話題提供だけではなかったが、国民が真剣に考え話し合い法律を(必要なら)つくらないと、テキトーなノリで法律ができてしまう危険があるということを学んだ。ぬで島さんや参加した人たちの質問の着眼点が大変面白かった。患者の意志を尊重というがあくまでもリビングウィルありきで、その時々どう考えているのか、どうくみとっていくのか ていねいさが感じられなかった。こういう法律をつくることで意思をたずねることや環境によって意思がかわる(死にたいのは環境のせいで周りのありようがかわれば生きたくなるといった可能性をつぶしてしまうことはないのか?)(40代 女性)

・社会的には必要性が高まっていますが、誰も手を挙げて論じたくない分野であり、実際に悲惨な状況を経験しないと判らないことをふみ込んでお話頂き、理解がふかまりました。(70代 女性)

・尊厳死は死の選択ができるという意味で医療技術の進歩による功罪だと考えた。技術の進歩はまた医師の役目も変えようとしている。スキルは患者救命のためのものであり、場合によっては患者の死を早めるためのものとなる諸刃の剣である。(女性)

<法案に対する意見投票結果> サロン終了後に行った、参加者による法案への意見投票の結果は以下のとおりです。

・結果概要

参加者:28名

投票者:24名(投票率:85.7%)

賛成: 9名

反対:13名

保留: 2名

・意見概要

<賛成>

○次なる法律として、緩和ケア体制充実法案を作り、医療機関の緩和ケアを支援してほしいと思う。(40代男性)

○免責条項は削除。(60代女性)

○良く考えられていると思います。患者の意思を尊重するという一点において。(50代男性)

○本人が誰かから圧力を受けたりするなど周囲の環境や人々(家族を含む)に左右されることなく、真の意思で延命治療中止を望むときは賛成します。(本人が自分の人生を自分なりに充実して生き、本音として悔いはないと考えるなら)(家族のみの意思では不可です)。(女性)

○生きる権利もあるが死ぬ権利もある。死ぬ権利を実現することによって周囲が迷惑をこうむらなくできる。(60代男性)

○やむを得ず賛成。現状!!がある。但し医療のあり方(在宅ホスピスなど)の促進を行うべき。(70代男性)

○情けない話ですが、現状では必要だと思います。ただ免責状況は不要かなと思います。(50代男性)

○患者の意見をどのように引き出し、そして定着させるか、という点についての具体案が欲しい。

<反対>

○法律をscope、整合性を明確にする必要がある。(60代男性)

○患者と医療従事者との関係を性善説的に捉えており、想定しうる具体的な問題について、もっと詰めるべきと思う。省令による運用面での対応に任せる法案は、実際面で泥縄的に対応して拾い切れないことが多い様に考える。(50代男性)

○法律を作らなくても、医師との信頼関係に基づき本人の意思尊重は可能だから。(50代女性)

○誰がこの法律をつくりたいのか。誰の、何のためにつくりたいのか、全く分からない。法案タイトルも内容を表していない。(40代女性)

○法律の主旨が、医師の免責だけにあるような印象があるため。また法律があるだけで、強制力が生じるのではないか。(50代男性)

○本人が明確に延命の意志を表している。意識が復活する可能性が高いこと。(60代男性)

○患者(この法案では終末期、死に向かう人)の意思を尊重するといいながら、法案が保護対象にしているのは、生き残っている人(患者の周辺には医療者等)のように思えます。そもそも、死を決定づける医療の中止等を法律にすることに疑問を感じます。この法案では、家族が反対しても執行されるのでしょうか。(50代男性)

○延命治療の中止は治療の範囲内という整理でよいと思う。また、終末期における本人意思の尊重もガイドラインに含めるのでよいと思う。(50代男性)

○信頼関係に基づき・・・となっているが、あやふや。誰が自分が終末期であると判定するのか?わからないなんてイヤである。その上、面積。もっと議論をつくしてほしい。現状では反対。(40代女性)

○増子さんは、医師と患者の信頼関係があっての法案と強調されていたが、そのような関係をきずけているケースがどれだけあるのでしょうか?今の医大などの現状は?医学を学ぶ人がラポールの関係をつくれていないと、多くの医大の教授陣も言っていますが。ガイドラインがあり法律となるのは、障害者団体の方などが無言の圧力を感じているということもあるわけで、屋上屋をかさねている気がする。臓器移植法とのバッティングの問題の指摘について答えられないのは、少し問題があると思います。事前にLiving Willを出している人だけ対象となるなら、そんな狭いものを法律化は必要???(40代女性)

○自分の体を排他的に処分する権利があるのか疑問。終末期に臨んで自分が何を望むかかっちり決められると思わない=意思を一つに決められないと思う。(30代男性)

<保留>

○免責が前面に出すぎる。(60代男性)

○ガイドラインで対応できるのではないかと思いました。

    • 参議院議員
    • 増子 輝彦
    • 増子 輝彦
    • 元東京財団研究員
    • 橳島 次郎
    • 橳島 次郎

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