タイプ
論考
プロジェクト
日付
2014/1/7

新しいビジネスアライアンスの可能性 ~日台企業の新潮流(1)~ page2

3.中台経済の一体化

3.1 中台関係の改善に伴う経済交流と人的交流の拡大


 1990年代以降、台湾政府が台湾企業による対中投資活動に関し段階的に規制緩和を実施したことを契機として、多くの台湾企業が中国に進出した。今日に至っては、台湾企業による中国への累計投資額は1,000~1,500 億米ドル、投資件数は8万件と言われている。2011年に中国海関総署傘下の『中国海関』誌が発表した「2010年の中国の輸出企業トップ200社」によると、上位20社のうち13社は台湾企業が占めている。台湾企業は、中国において産業集積や台湾企業間のネットワークを活用した事業展開を行っており、中国市場における台湾企業のプレゼンス拡大と共に、中国の経済発展に大きく寄与し中国にとって非常に重要な存在となっている。

 2008年5月に誕生した台湾の馬英九政権は対中融和策を講じ、台湾のハイテク産業の対中投資を大幅に緩和した結果、2010年の台湾企業の対外投資のうち、中国大陸は全体の8割強を占めるようになった。台湾経済部投審会の統計によると、2012年は台湾企業の投資の多様化により対中投資が全体の6割強に下がったものの、依然として投資先の第1位となっている(図6)。


(図6:台湾の主要投資先別シェア、2012年)


 一方、人的交流においては、台湾は2010 年に中国全土の住民を対象に台湾への団体旅行を開放したが、その結果、2010 年の訪台中国人観光客数は163 万人に達し、日本人(108 万人)を抜いて、初めて訪台観光客の送り出し国・地域別のトップとなった。更に、2011年6月から2013年8月にかけて中国本土の計26都市の住民を対象にした個人旅行客の受け入れ開始を決定したところ、訪台中国人観光客数は2011年に178万人、2012年には259万人に増加した。一方、中国に進出した台湾企業が現地で雇用する中国人従業員数は1,200万人を超え、中国大陸で居住する台湾人は100万人(家族を含むと300万人)に上るなど、中台関係の改善に伴い、経済や人的交流が活発となっている。

3.2 ECFAの締結と中台経済の一体化


 2010年6月、中台間でFTA(自由貿易協定)に相当する「中台経済協力枠組協議:ECFA= Economic Cooperation Framework Agreement)」が締結され、同年9月に発効した。  

 ECFAの主な内容は、中台双方間の「貿易と投資の自由化」「経済協力」「アーリーハーベスト(早期関税撤廃)」、「その他(紛争処理等)」の4分野から構成されており、以下で述べる特定品目の関税撤廃は2011年1月から段階的に開始している。

 中国側は、557品目の物品の関税引き下げと11業種のサービス業の投資開放を実施し、台湾側は267品目の物品の関税引き下げと9業種のサービス業の投資開放を行うものである。中国側から見た場合、関税引き下げ対象品目は、2009年の台湾からの輸入総額の16.1%(約138億米ドル)に相当する。一方、台湾側から見た場合は、関税引き下げ対象品目は、2009年の中国からの輸入総額の10.5%(約29億米ドル)に相当し、中台双方の関税引き下げ対象品目は2013年1月1日よりすべてゼロ関税となった。

 台湾は、中国ASEAN間のFTAが2010年に発効し、アジア太平洋地域の経済連携が進んでいることを受けて、中国と経済面で連携することで台湾経済の孤立化を回避し、さらにはECFAをきっかけとして日本や米国、シンガポール等の主要貿易相手国とのFTA実現に繋げたい意向であり、アジア地域におけるプレゼンス向上と競争力強化に期待をかけている。

 2012年8月、台湾の対中国交流窓口機関、海峡交流基金会(江丙坤理事長)と中国側の海峡両岸関係協会(陳雲林会長)の第8回トップ会談が台北市内で行われ、中台投資保護・促進協定と中台税関協力協定が締結された。

 2009年6月30日、中国資本の対台湾投資が緩和されて以来、2012年末までの中国企業の累計投資額は5億ドルに達した。2012年は中国交通銀行と中国銀行による台湾現地法人の設立などが進められたこともあり、中国企業の対台湾投資件数は前年比35.3%増の138件、投資額は同650.1%増の3.28億ドルと急増している。また、2013年6月末には中台間で「サービス貿易協定」も調印され、中台間の経済連携は拡大する一方である。

 更に、台湾は、2013年8月上旬に創設した経済特区「自由経済モデル区」において、中国企業の投資や技術者の就労を、他の外資系企業と同じ条件で扱う方針を決めた。台湾は、従来は安全保障などの観点から台湾のIT産業への中国資本の過半出資を認めなかったが、新たに創設した経済特区ではこうした規制を緩和し、中国企業が半導体や液晶パネルなど台湾の基幹産業との合弁事業で過半出資して主導権を握ることを初めて可能にした。

 こうした決定の背景には、経済特区において貿易と投資の自由化を促進し、他国との自由貿易協定(FTA)交渉を円滑にしようとする台湾の馬英九政権の狙いがあると見られている。

 2013年7月上旬、台湾はニュージランドとの間で事実上の自由貿易協定(FTA)に相当する経済協力協定を締結した。台湾が国交のない国と経済協力に関する協定を結ぶのは初めてであり、台湾はこれを契機とし、シンガポールを始め、日本とのFTA締結にも関心を示しているほか、環太平洋経済連携協定(TPP)と日中韓など16カ国が参加する包括的経済連携協定(RCEP)といった地域的経済協力の枠組みへの参加を目標として掲げている。今回のニュージランドとの経済協定締結に関し、中国政府(外務省)は「我々は外国と台湾の民間、経済、文化面の交流に異議を差し挟まない」としており、2008年の馬英九政権の誕生後の中台関係の改善に伴い、中国政府は台湾のFTA推進に理解を示すようになったといえよう。

 今後、台湾企業の中国大陸への投資活動が後押しされ、中台経済の一体化は更に進むことが考えられる。中台経済の一体化は、今後における日台ビジネスアライアンスの多様化の可能性につながるものである。その意味で日本企業にとって重要であり、大いに注目される。
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