通年議会と地方議会改革

昨年11月14日、 中尾修

研究員(前北海道栗山町議会事務局長、第30次地方制度調査会臨時委員)は千葉・ 流山市議会 議員研修会に招かれ、議員、職員、市民らを前に通年議会と議会改革について講義しました。以下は、「通年議会」に関する講義と会場との質疑応答の一部をまとめたものです。(文責:編集部)


「今、変わる! 流山市議会」と印字している議会の封筒を見て感心した。これまで多くの議会をまわったが、改革を自ら宣言するキャッチコピーを印刷した議会独自の封筒を作っているところはそれほど多くない。さすがは日本経済新聞社の議会改革度ランキングで810市区議会中、全国1位と評価された議会だ。そのトップランナーが検討し始めた「通年議会」は、議会基本条例とともに議会改革に欠かせないツールである。

地方自治法の第101条に、「議会は長がこれを招集する」とある。さらに「議長は長に対し、臨時会の招集を請求することができる」と定められている。それが今年9月5日に公布された地方自治法改正で、「議長等による臨時会の招集請求に対して長が召集しないときは、議長が臨時会を招集することができる」となった。

議会側に召集権がないということが問題として大きく取り上げられるようになったのは、鹿児島県の阿久根市で前市長が議会を招集せずに副市長の選任などを専決処分してからの話だ。市長の不信任案を出す議会の開催をその当事者の市長にお願いするのはおかしいということになり、私が参画している第30次地方制度調査会でこの問題が取り上げられ、臨時会の召集および会期、議会と長の関係、直接請求制度などについて必要な改正が行われることとなった。

それと関連して、2008年6月に北海道の白老町が初めて取り入れた通年議会についても、地方制度調査会で検討され、今回の地方自治法の改正で「普通地方公共団体の議会は、前例の規定にかかわらず、条例で定めるところにより、定例会及び臨時会とせず、毎年、条例で定める日から翌年の当該日の前日までを会期とすることができる」(第102条の2)というのが盛り込まれた。

通年の会期制の狙いは、議会は常に生きているということであって、その機動力の向上と機能の拡充にある。議長に召集権がないという制度的な欠陥を運用によって是正することで、効率的に議会のチェック機能の強化を図ることができる。また、会期が通年化することで、議案を提案する機会が増え、政策形成の機能充実につながる。実質的に議案の審議時間が増えるので、議員間討論が活発化し、参考人招致が増えて公聴会が開催しやすくなる。さらに副次的な効果として、幅広い住民層が議員として議会に参加する機会が増えると考えられる。通年議会への移行は今まで足りなかったものを補うというふうにご理解いただきたい。

これまでは、市長と議会がそれぞれの都合で会議日程を決めているはずである。今後、通年制を取り入れる際は、主権者である市民を交えた三者で日程を決めるという発想を持つこと。市民自治を推進することを目的として、ここ流山市でも制定した「市民参加条例」と同じように、市民を巻き込むことでより健全な議会運営が行えるに違いない。

地方自治法改正による「通年の会期制」は会議の日程をあらかじめ決めておくという点において、これまで運用上の工夫として実施されてきた通年議会とは異なる。 この改正の趣旨を十分理解しておくことが必要である。

質疑応答

そもそも、なぜ通年制の導入が必要なのか。

議員にとって議会が開催されないことには、合議体としての責任が生じない。会議が開かれないかぎり、議員の活動はあっても議会の活動はない。議員を召集して議会が開催されたところから議会活動が始まる。会議が開かれていない場合は、あくまでも個々の議員活動であって、議会活動ではない。

会期制度そのものの見直しの議論が始まったのは、それが議会活動を阻害しているとの考えからだ。二元代表制のもとで議会が合議制の機関として執行側の政策をチェックし、最終決定するという使命を果たすためには、議会がその主導性を十分に発揮しなければならない。そのためには、必要な時にいつでも会議を開き、活動できるような議会の運用を検討すべきであろう。それと、議会という機関が多様な民意をつかんでいないという疑問符が打たれたのが、大きな理由ではないだろうか。

通年制を取り入れた場合、議員の報酬はどうなるのか。 また、委員会の開催日数の増加等によって執行機関側の事務的負担が増えるのでは?

通年制を取り入れたために議員報酬を上げたという自治体は、今のところ見当たらない。会期日数の増加は、議会事務局の負担増にもつながることは十分予想される。しかし、事務局や行政側職員を鍛えるのも議員の仕事であって、多少忙しくなろうが、しっかりと対応してもらえるようにしていかなければならない。

中尾 修

  • 元東京財団研究員(元北海道栗山町議会事務局長)