タイプ
政策提言・報告書
プロジェクト
日付
2014/3/13

国土の不明化・死蔵化の危機~失われる国土III

アベノミクスが掲げる成長戦略を受け、都心の不動産市場の国際展開戦略が進んでいます。しかしその一方で、地方の農林地では土地の所有者不明化や、管理放棄・権利放置が進み、土地利用の隘路となっていることをご存じでしょうか。

東京財団では、これまで6年にわたり、日本の土地制度の特殊性(情報基盤、利用ルール、所有権の課題)を明らかにし、(1)「重要国土」(防衛施設周辺、国境離島、水源地等)の売買・利用における法整備の強化と、(2)「所有者不明化」の拡大防止に向けた制度改正の必要性を提言してきました。「重要国土」については現在、与野党において安全保障と土地法制に関する検討が進んでいます。

一方、「所有者不明化」問題については、必要性や緊急性を実感する機会が相続時や土地売買・被災時等に限られることから、共通理解が得られにくく、政策課題としての認識は一部の関係者に留まっています。

東京財団「国土資源保全」プロジェクトでは、こうした現状を踏まえ、平素は目に見えにくい「所有者不明化」問題について、管理放棄・権利放置される土地の推計、現行制度の課題の分析、そして必要な制度改革のあり方について検討を行いました。
   
政策提言「国土の不明化・死蔵化の危機~失われる国土III」(PDF:2.18MB)はこちら


【報告書の骨子】


1.土地の管理放棄、権利調整(登記)放棄の増加


相続財産管理人選任事件の発生率は過去10年増加傾向にあり、特に地方圏で上昇が著しい。相続諸経費は20万円~50万円であり、相続を機に登記放棄される可能性のある山林は個人所有山林全体の25%に上る。耕作放棄地、入会林野などを含め、管理放棄、権利放置される土地は、今後、約300万ヘクタールに上るおそれがある。これは静岡県の面積の約4倍に匹敵する。

2.土地情報基盤の未整備


我が国には、土地の所有・利用実態を把握するための確立された情報基盤(土地台帳等)が存在しない。登記放棄の増加や土地所有のグローバル化によって、土地所有の実態把握は今後さらに困難になる可能性がある。国に先行して14道県が水源地の土地売買の事前届出を義務化したが(2014年3月11日現在)、国においても土地の特性に応じた法整備が急務である。

3.負の効果が未検証


土地問題は関連する省庁が多数にわたり、所管の整理も十分には行われていない。現行の土地制度に起因する社会的損失(管理コスト増、資産価値減)や、検証や対策を講じないことによる負の効果、政策の後工程(バックエンド)の影響については、ほとんど検証が行われていない。

4.今後の課題


グローバル化の一方で、人口減が不可避の時代に土地制度が現行のままでは、国土の所有者不明化、無価値化、デッドストック化(死蔵化)はより深刻になっていくと推測される。
現在進んでいる安全保障関連の法整備の動きをさらに加速させるとともに、今後の課題として(1)国土基盤情報の整備(2)所有者不明関連法等の整備(3)新たな土地保全システムの構築についても検討を進め、早急に制度整備を実現することが必要である。




※「国土資源保全」プロジェクトのこれまでの成果はこちら